第4話 お父さまの再婚話(1)

「陛下?」


「……ん? ドン宰相どうした?」


「国王陛下は未だ、御若いのに再婚をされないのですかな?」


「えっ、私が、か?」


「はい、そうですよ。陛下?」


 我が国の宰相であり。


 お父さまの片腕とも言える人物であるドン丞相が。


 お父さまへと再婚をしないのか? と、尋ねたみたい。


 でもお父さまは、他界をされたお母さまのことを愛していたし。


 お母さまの里である隣国の、アラホ王朝の王さまと女王さま……。


 そうわたくしの祖父と祖母になる御方ですが。


 お父さまは、お母さまをアラホ王朝から妻としてもらい受ける時に。


 祖父や祖母とお父さまは確約を交わしているみたいで。


「シモン王国の王よ! 我が娘は大変に病弱な娘なので。自身のお腹に子を身籠り、出産をすれば。我が娘は他界をする可能性があるのと。残された子供が悲運な生涯を送る可能性があるので。シモン王国の王よ。大変に嬉しい申し入れなのだが。我が可愛い娘を嫁に出す訳にはいかないのだ。本当に申し訳ない」と。


 わたくしの祖父がお父さまへと婚姻の御断りと謝罪をお父さまへと告げてきたらしいのですが。


 わたくしのお父さまは、お母さまを一目見た時から見惚れ、夢中、虜になっていたらしいですから。


「では、アラホ王国の王よ! こう致しましょう! 私は貴方の大事な娘を妃として頂けるのならば。生涯側室をもらい受けるような事も致しません。それに姫様の身の上に。アラホ王国の王が言われるような事が生じても、我が子を守る為に私は再婚もいたしません。だからアラホ王国の大事な姫様を私に頂きたい! お願いします!」と。


 お父さまは嘆願……。


 祖父がお父さまへと、病弱なお母さまを嫁に出すことはできぬと告げても。


 お父さまは生涯お母さましか愛さないと誓うから。


 お母さまをどうしても、自身の妃に欲しいのだと。


 祖父に嘆願をする。


 だから祖父は、お父さまの熱意と誠意に心を打たれ。


「シモンの王よ。王である貴方がそこまで我が娘の事を愛おしく思っているのならば。今後の娘の生涯を貴方に託します。本当にありがとうシモンの王……。いや、婿殿……。本当にありがとう」と。


 わたくしの祖父は、沢山の臣下がいる謁見の間で涙を流しつつ、お父さまに何度もお礼を告げたと。


 わたくしは他界したお母さまから幼少期に、何度も聞かされましたよ。


「ソフィア、だからわらわは本当に幸せなのです」とね。


 お父さまからの強い婚姻の申し入れがなければお母さまは、女性の一番の幸せである結婚──。


 そして愛しい殿方の子を身籠り、出産をすると言った幸せを味わうこともなく他界をしていただろうと思うのだと。


 お母さまわたくしへと嬉しそうに告げ。


「ソフィア、貴女にも必ず陛下のような良い人が現れ、幸せにしてくれます」とも。


 じゃじゃ馬、男勝り、勝気だった幼少期のわたくしへとお母さまはよく話してくれました。


 わたくしも年頃になれば、大変におしとやかな姫に。


 そう、幼馴染で従兄……。


 わたくしの許嫁だったレオンのよい妻、妃になれると申してくれていました。


 でも今わたくしが漏らした言葉通りで。


 許嫁のレオンとの婚約話は、わたくしの特殊な病である精霊付きのために一旦保留と言うか?


 わたくしのお父さまとレオンのお父さま……。


 わたくしの叔父上さまとの間で話し合いをされて破断に。


 わたくしはこの病魔のために、お母さまのように女性の幸せを知ることもできずに、この世を去ることになりそうです。


 だからお母さま、本当にごめんなさいと。


 わたくしは病死で他界をされたお母さまへの謝罪が終わったので、話しを元に戻しますが。


 わたくしのお父さまには、祖父と祖母、アラホの伯父上さまとの確約があるので。


 ドン宰相が勧めてきた再婚話の件の方も直ぐに。


「ドン宰相、私は未だ他界した妻の事を愛しているから。忘れることができない。だから再婚話の方は、今は全くと言って良い程考える気が無いのだ」と断る。


「そうですか、それは仕方がない。また陛下が、気が変わるようなことがあれば。いつでも私へと相談をしてください」と


 ドン宰相はお父さまへと、了承しましたと言葉を返せば。


 その日からもう二度と、自身の口からは。


 お父さまへと再婚話を告げることはなかったらしい。



 ◇◇◇



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