第3話 わたくしのお父さま

「ソフィア~? ソフィア~? 何処にいる~?」、


「何処にいるのだ~? 父の目の前に出てきなさい~?」


 お母さまが若くして他界をされてから。


 残されたわたくし達家族……。


 まあ、残された家族と言っても、幼少期のわたくしとお父さまの二人なのですが。


 他界したお母さまの代わりにお父さまが、男の子のように活発な、わたくしのことを心配して探しにきてくれる。


 そう、お父さまが、母親の役割もしてくれるようになった。


 だからお父さまは、国の政務の方が一段落すればこの通りで。


 お母さまの面影を残すわたくしのことが愛おしくて仕方がなかったから。


 遊び盛りなわたくしことを探索する日々……。


 そう、わたくしは大変に活発な子供だったから。


 お城の周りに植えてある木々に攀じ登り。


 悪戯心で、己の身を隠しては。


 お父さまが、わたくしが、身を隠す木々の下を通れば。


「ばぁ~!」と言葉を漏らしつつ、太い木の枝に。


 自身の両足をかけ、ブラブラと垂れ下がりながら。


 お父さまのことを揶揄し、驚かせては。


 お父さまの口から。


「うわぁあああっ!」


 と、絶叫が吐かれ。


 自身の腰を抜かしそうな勢いで尻餅をつく。


 その様子を、あの頃のわたくしは今とは違い、大変に活発な悪戯娘でしたから。


 驚愕するお父さまの様子を嬉しそうに凝視しながら。


「えっ、へへへっ。お父さま~。ソフィアはここですよ」


 あの頃のわたくしのことをお父さまは、本当に愛してくれました。


 そしてわたくしが何をしてもお父さまは、本当に怒らない人でしたから。


 そう、お母さまが他界をしたからと言ってお父さまの、わたくしの愛情が薄れる訳でもなく。


 お母さまの忘れ形見と言うことで。


 以前よりも親子の愛情は深まったような気がしていた。


 だからわたくしはお母さまが他界をしたからと言って、長く悲しむこともなく。


 毎日を楽しく、幸せに生き、暮らしていたの。


 幼い頃のわたくしはね。


 でも、お母さまがこの世を去って一年もすれば徐々にだが。


 わたくしの身に不幸が訪れてくる。



 ◇◇◇


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る