第2話「ペンダント」
その次の日も、そのまた次の日も、私は猫になり街を歩いた。下から見る景色はいつもと違い、なんとなく輝いて見えるようだった。
ある日塀をとことこ歩いていると、草むらを見つけた。少し低いところにあった。
太陽の光こそあまり当たっていなかったが、惹き込まれるものがあった。その直感を信じて、私は草むらへ飛び込んだ。
思ったより低くて、体勢がひっくり返りそうになった。
(やばい、死ぬかも!)
そう思った途端、ぽてっと体が地についた。
体はどこも痛くないし、むしろぽかぽかして運動したくなる気分。
(よし、探検するぞ!)
そうして、私の運命を大きく変える一歩を踏み出したのだった。
少し歩くと、坂道と階段を見つけた。登ったら迷子になっちゃいそうだ、とわかっていたけど登りたかった。欲望か、安全をとるか…。迷っていると、何やら猫の鳴き声が聞こえてきた。耳を澄ますと、坂道の上にいそう。
(行くしかないよね…)
そう決心し、私は坂道を慣れない体制でとてとて登って行った。
登って行く時に見えた、何か黒い物体は、気にしないことにした。
声を頼りに道と言えるのかわからない道を進んでいった。道中ネズミや虫がいて目が会う度に「びえええええええっ‼︎」という悲鳴や叫び声をあげ、ぴょんぴょん飛び退きながら歩いて行った。進んだ先に、何かがいた。真っ白なもふもふが居るのだ。
(え〜っと、寝てるのかな?)
そう思い近づくと、もふもふが動き出した。モゾモゾしているので「どうしたの?」と声をかける。すると
「お母さん…お母さん!」
といい泣きついてきた。私が困惑していると、そのもふもふの子は首元に目をやり
「お母さんじゃない…?オモイビト…?」
「オ、オモイビト?」
私がこれまた困惑していると、もふもふの子が急に叫んだ。
「オモイビトなんて大っ嫌い!信用できない!」
そう吐き捨てて、どこかへ走り去っていった。
そして私の首元を見ると、何やらペンダントが付いていた。
(何これ…?)
エメラルドのペンダント。角度を変えると玉虫色にも見えるし、ルビーのようにも見える。
(オモイビト…って言ってたよね。)
私は疑問を抱えながら、来た道を戻った。楽しさに満ちていた行き道は、怖さと不安で真っ黒に満ちていた。
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