第8幕 別れ

第31話 もう大丈夫

 お母さんがおーちゃんたちの家にやってきて。


 抱きしめられて。


 家の周りには悪霊がおるけど、おーちゃんが


「あの人たちはここを守ってくれてるから。大丈夫だよ」


 って。


 やっと安心できて大号泣。


 なにが起きとるんかはわからへん。


 でも、ママが優しく抱きしめてくれとる。


 ママは生きとる。


 それだけで十分や。


「……う……ゆ……優」


「んんん」


 目を開けたらママの柔らかい笑顔。


 いつの間にかママの脚を枕に寝とったみたいや。


「神様たちが帰って来たで」


「え!」


 勢いよくカラダを起こしたせいで、危うくママの顔面に激突しそうになった。


 ごめんな。


「ゆっくり寝られたようね」


「聖さん……」


 祠のときはなんや怖い雰囲気があったけど、今は普段の聖さんや。


「あれ、小鳥さんたちは?」


 おーちゃんもおらん。


「着替えているわ」


「ふーん、なんで?」


 素直に疑問を口にすれば、聖さんは苦笑した。


「凄く汚れていたからよ」


 ありゃ。


 ちょっと怒っとる。


 確かにおーちゃんの服汚れとったもんなあ。


 土下座したとき、思いっきし汚しとった。


「やっぴー」


 あ、三人とも戻ってきた。


 小鳥さんが言うた「やっぴー」の意味はわからん。


「優ちゃんお待たせ」


「ゆーちゃん起きたんだね」


 おーちゃんは元気そう。


 小鳥さんと琴葉さんは、なんや疲れてそう。


 どないしたんやろ。


「みなさん」


 突然ママが立ち上がった。


 なにごと?


「本当にありがとうございました」


 お礼を言うた。


 え、なんで。


 私は祠で起こったことしか知らんけど、他にもなにかあったんか?


「いいのよ。私たちは私たちで利益があったから」


 聖さんニッコリ。


 知っとるで。


 あぁいう顔を、余所行きの顔って言うんやろ。


「それでも、本当にありがとうございました。みなさんがいなかったら……」


 頭を下げたママ。


 ホンマになにがあったんや。


 気になる。


 気になることは、聞かなアカン。


「なぁ、おーちゃん」


「なぁに?」


「なにがあったん」


「……」


 シーン。


 無言。


 え、なんで?


 変な質問したんか?


「そうねぇ」


 聖さんは苦笑しながら、


「貴女は知らなくていいことよ」


 これ以上質問を許さない。


 そんな雰囲気を出してはる。


 子どもでもな、わかんねんで。


 ママが離婚する前はずーっと家族の顔色伺って生きてきたからな。


「幸恵さん、お座りになって」


 ママは元の通り私の隣に。


 おーちゃんはその逆側。


 聖さんと小鳥さん、琴葉さんは向かい側のソファに座った。


 ん?


 なんでおーちゃんがこっち側なんや。


 その疑問は、聖さんの言葉ですぐに解決した。


「音葉、さっきも言ったけれど……貴女は優ちゃんと一緒にここを出なさい」



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