第30話 全滅*小鳥*

*小鳥*


「よっしゃー、これで全員?」


 流石に疲れた。


 地面に座り込む。


 あ、服汚したら聖に怒られるな。


 いっか。


「全員ですね」


 隣に座った琴葉も私も血まみれだし。


「女だけ貰うってある意味贅沢じゃない?」


「そうですかね?」


 男どもは全員悪霊にプレゼント。


 手伝ってくれたお礼にな。


「解体も楽だし」


「私にとってはどちらでも変わらないんですけど」


 感覚の問題だね。


 私的には女性の方が、脂肪が多いし食生活に気を配っている人が多いから好きだ。


「お疲れさまでした」


「はい、お疲れ様でーす」


 相変わらず丁寧な女性悪霊。


 他の悪霊たちは村をウロチョロしてる。


 散歩かな?


 久しぶりに自由の身になったんだし。


「ホントありがとうね。聖の望み通りにしてくれて」


「いえいえ、普段お世話になっていますから」


 満面の笑み。


 面白いな。


「それでは、私はそろそろ」


「あっ、そうなの?」


 バイバイしちゃうのか。


「あっ、先にみんなを連れて山へ行くだけです」


「成程」


 仲間を連れて聖のところに行くのね。


「んじゃあ、また後で」


「はい」


 彼女は彷徨っていた悪霊たちに声をかけ、山へと向かった。


 じっと見送っていた琴葉が、


「本家、潰せてよかったですね」


 ボソッと言った。


「それは聖に言ってあげて」


 私の意思じゃないし。


「ですね」


「おうよ」


 分家の人間としか結婚しないし、こんな村を作った本家を聖は許さなかった。


 閉鎖的。


 平気で人に嫌がらせをする最悪な村。


 多分優たちのことがなくたって、そのうち潰しにかかっていたんじゃないかな。


「てかさ、祟り神を信仰するってどういう頭の回路してんのかね」


「うーん。それ、私たちが言えたことじゃないと思いますよ」


「あははっ」


 確かに。


 聖は神様だけど、シンプルに神聖な神様じゃないしな。


 本人は悪霊だとかなんとか言ってるけど。


 私たちにとっては神様なんだよ。


 いつか認めてほしいな。


「よっし、私らも帰ろうか」


「ですね」


 立ち上がり、ズボンについた土を払う。


 血についてはまぁ……池の水で洗ったところで落ちないし。


 大人しく怒られよう。


「よいしょっと」


 聖が村人の家から拝借したリュックを背負った。


 中身?


 心臓と人肉に決まってんじゃん。


 流石に一気に回収はできないから、また明日来よーっと。


「あ、待った」


 私もリュックを背負ったところで、あることを思いついた。


「なんですか」


「こういうときってさ、捨て台詞吐きたくない?」


「……」


 残念。


 共感は得られませんでした。


 でも言うよ。


「信じてすくわれるのは足元なんだよ、バーカ」


**

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