第11話 神様ですか?

「どうやってここへ?」


「えーっと」


 急に説明を求められた。


 襲ってくるでもなく、脅かしてくるでもない。


 変な存在やな。


「おーちゃんと遊んどったらはぐれてもうて」


 素直に答えてから気づいた。


 おーちゃん、って言うても通じひんな。


「あっ、おーちゃんっていうのは――」


「あぁ、そういうこと。音葉とはぐれたのね」


 言葉をぶった切られた。


「え、おーちゃんの知り合いなんですか」


「知り合いもなにも……まぁ、そうね。知り合いね」


 誤魔化されたけど、別にええ。


 わかったから。


 癒しみたいなんは、あれや。


 神聖さや。


 禍々しい感じと神聖さが一緒くたになってんねや。


 はースッキリ……するかいっ。


「迷ったからここに辿り着けたのかもしれないわね」


 神様みたいな人? はボソッと言った。


 ちゃんと耳に届いてまっせ。


「どういうことですか?」


「ここ、普通の人間には辿り着けないようにしているのよ」


「へぇ。え?」


 なんやそれ。


「特別な場所なのよ」


 女性は苦笑した。


 美人さんってどんな表情しても綺麗なんやな。


 初めて知ったわ。


 悪い存在やなさそうやし、聞いてみよ。


「あの、質問いいですか」


「律儀ね。いいわよ」


「お姉さんは神様なんですか」


 好奇心には勝てん。


 知りたいんやもん。


 悪い癖やと自覚してます。


「どうしてそう思うの」


 じっと目を見つめられて言われた。


 えーっと。


「音葉と同じことを言うのね」


「ほう」


 おーちゃんもおんなじこと思ってるんか。


 嬉しいな。


「違うわ、多分」


「多分」


 どういうことや。


 確かに禍々しい感じがするし、シンプルにいい神様じゃないやろっていうのは思ってんねんけど。


「いろいろと事情があるのよ」


 本を閉じ、神様みたいな人は立ち上がった。


 ゆっくりと近づいてくる。


「そういえば、最初の質問に答えていなかったわね」


 距離があと数十センチのところで冷たい風が吹き、立ち止まった。


「最初の質問?」


 なに言うたっけ。


「私が誰なのか」


「あぁ」


 そういえば聞いたわ。


 すっかり忘れとった。


「それはさっき――」


「そうね」


 この人――人ちゃうけど、話遮るん好きやなぁ。


「名前を教えてあげる。これから関わることになるかもしれないし」


「これから?」


 さっきから疑問形ばっかですんません。


 しゃーないやん。


 初対面なんやもん。


 今まで会ったことない存在なんやもん。


「『せい』。耳に口、下が王。わかる?」


 私の問いはスルーしとるやん。


 まぁええか。


「なんとなく」


 あれやろ、『神聖』の『聖』やろ。


「貴女は『ゆーちゃん』でしょ?」


「あっ、え、はい」


 なんで名前を、って聞きかけたけど、聞くまでもないわ。


 おーちゃんの知り合いなんやもん。


 あの子から私のこと聞いとるやろな。

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