第12話 それでは、また

 ガサゴソガサゴソ。


「ん?」


 草木をかき分ける音が遠くの方で聞こえて。


 近づいてくる。


 二人して音のする方を見たら、


「あっ、いた!」


「おーちゃん!」


 感動の再会です。


 抱きしめたいところやけど、


「どこを通ってきたらそうなるのよ」


 葉っぱや泥を服があっちこっちについとる。


 聖さんに同意やわ。


 ため息ついてはるで、おーちゃん。


「てへ」


 ちょけとる場合か。


 そんな態度でええんか。


 頭を抱えとったら、聖さんが隣を通った。


 一緒にヒンヤリとした空気を連れて。


「ゆーちゃんを捜しまわってたんだよぉ。まさか、神――」


「音葉」


 聖さんがピシッと言葉を遮った。


 鋭かったで。


「あっ、ごめんなさい」


 シュンとわかりやすく肩を落とし謝ったおーちゃん。


「貴女もう帰りなさい。合流できたのだから」


 聖さんはため息をつきながらも怒ってはないな。


 そこまで落ち込まんでよさそうやで、おーちゃん。


「はい、そうします。ゆーちゃん帰ろっ」


 彼女はほっと息を吐き、私の手をとった。


「えっ、あ、うん……あの」


 また来てええやろか。


 また会えるやろか。


 言葉にしようとしたその瞬間、


「優ちゃん、また来なさい」


 こりゃまたビックリ。


 私の考えてること伝わってるやん。


 真顔やけど、雰囲気はちょっと柔らかくなったな。


 また来てええ言われたし、嫌われてないってことよな。


 やっぴー。


「音葉、頼んだわよ」


「あいあいさー」


 軽っ。


 さっきまで落ち込んどったくせに。


「じゃあ、また後でね!」


 元気に聖さんに手を振る彼女に合わせて手を振ったら、ちょっぴり微笑んで手を振り返してくれた。


 うわぁお。


 エレガントなお手ふり!


 ファンサやん。


 貴女はもう私の推しです。


 って言うたらため息つかそうやからやめとこ。


 そんな感じでルンルンやったから気づかんかった。


「なにかがまとわりついている……負のオーラかしら。少し調べてみる必要がありそうね」


 聖さんが呟いていたことを。


「なぁなぁ、おーちゃん」


「なぁに?」


 私がはぐれないようにガッチリ手を握られながら山を下りる。


「あの木のやつってなんなん?」


「えっと、なんて説明すればいいかな」


 言葉選びに滅茶苦茶迷っとる。


「とっても大切なものが入ってるんだよ」


 迷った末の言葉がそれかい。


 一ミリも伝わってこんかったわ。


「だからね」


 おーちゃんは立ち止まり、真剣な眼差しで


「絶対に約束して、誰にも話さない。触らないって」


「おん、わかったわ」


 珍しく真剣な様子で言われたら頷くしかないやん。


 そういえば、普通の人は辿り着けないって言ってたけど……なんなんやろなあ。

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