第9話 初めてできた友人

 土曜日の晩御飯はカレー。


 我が家の決まりやねん。


 離婚しても、これだけは変えんといてってお願いした。


 「んでな、その子がな」


 ママがパートから帰ってきて、今度は工場で夜勤をするまでのたった数時間の休憩時間。


 疲れているはずやのに、毎日きっちりご飯を作ってくれる。


 ありがとう。


「めっちゃおもろい子でな」


 静かにご飯を食べたいかもしれへん。


 ゆっくりカラダを休めたいかもしれへん。


 でも、ママは「今日あった出来事をお話しして」って話を聞いてくれるねん。


 今みたいに。


「その音葉……ちゃん? 元気な子なんやね」


「せやねん。見とるこっちも元気になりそうなぐらい」


「ふふっ」


 ん?


「どないしたん」


「優のそんな楽しそうな顔、久しぶりに見たなぁって」


「そう?」


「うん」


 言うとるママも笑うとる。


 音……おーちゃんって魔法使いみたいやな。


 ママも私も笑顔にしてくれて。


 それから毎日、私たちは遊んだ。


 平日は放課後。


 お休みの日は朝から夕方まで。


 遊びのレパートリーは鬼ごっことかかくれんぼとか。


 二人でやってもおもんない、って思われそうやけどそんなことない。


 ずっと遊び相手がおらんくて寂しかったからさ。


 なんでも楽しいねん。


 毎回道を間違える私の手を、いつの間にかおーちゃんは握って山を登るようになって。


 自転車を上手いこと隠す場所を教えてくれて。


 ホンマに毎日幸せでいっぱいや。


 神様なんかおらん、って思っとったけど。


 神様ありがとう。


 おーちゃんに出逢わせてくれて。


 因みにな。


 おーちゃんと合流できずに迷子になっとったら、白猫のシロがどこからともなく表れて案内してくれんねん……中身人間と違うよな?

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