第6話 Let's 探検 2

 前に手当してあげたヤツやと思う。


 他にこんな綺麗な毛並みの猫、ここらにおらんし。


「ニャーニャー」


「え、なに?」


 農道を数歩進んではこちらを振り返り、進んでは振り返り、の繰り返し。


「ついて来いってことなん?」


「ニャー」


 返事したよな。


 今確実に返事したよな!?


「ニャー」


「あっ、ちょっ、待ってや」


 置いて行かれそうになり、慌てて自転車を押して追いかける。


「なぁ、どこ行くん」


 猫に聞いたところで……。


「ニャー」


 白猫は立ち止まり、笑った気がした。


「えっ、ん!?」


 わからん。


 もう私が理解できるレベルとちゃう。


 絶対にこの白猫は人間の言葉を理解しとる。


 誰か通訳してぇや。


 話し相手になってほしいわ。


 毎日寂しいねん。


「ニャー」


「おわっ」


 あれ、いつの間に。


「んんん?」


 森に入った記憶ないんやけどな。


 気づいたら急に草木がなくなって、峠道登場。


「あれー?」


 おかしいな。


 記憶飛んでるんか?


 根本的に、私が方向音痴っていうのはあるけど、それ今関係ないよな。


「って、ガードレール壊れてるやん」


 無茶苦茶な壊れ方しとる。


 車を擦ったとかちゃう。


 確実に突き破っとる。


「えー事故現場やん。なんちゅうとこに連れて……おらんのかいっ」


 白猫さん消えてもうた。


 神出鬼没やな。


 これ、この間先生が言っとった言葉。


 アニメか特撮か語っとったわ。


 授業そっちのけで。


「まぁええか。白猫さん、この間のお礼してくれたんかな」


 先生のことは今どうでもええねん。


 大事なんは、自転車を押して登れる秘密の抜け道を見つけたってこと。


 どうやって来たんか覚えてないのが大問題なんやけどな!


「取り敢えず」


 振り返ったら若干他の場所より歩きやすそうな道があった。


「ここ通って行ったら帰れるやろ」


 多分。


 もうわかってんねん。


 自分が方向音痴やって。


 それでも自力で帰るしかない。


 白猫おらんし。


 ため息をついて方向転換をしたところで、


「疲れたぁ!」


「ん!?」


 割と近くで女の子のバカデカボイスが聞こえた。

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