第4話 唯一の救い

 おばあちゃんが亡くなって数日。


 村のみんなは相変わらず冷たいけど、学校のみんなは「辛かったね」って慰めてくれた。


 うちの村だけおかしいんやろか。


 他の村のみんなは優しいし。


 せやけど、自分が受けている仕打ちを打ち明けようとは思わへん。


 なんとなく、言ったら他のみんなもおんなじように冷とうなる気がすんねん。


 村では「母子が戻ってきたから幸子さちこさんは亡くなった」ってさ。


 なんでやねん。


 私らが戻ってくる前からおばあちゃんの体調が悪かったんは、村の人みんな知っとるやろ。


 家事手伝っとったんやから。


 ホンマ意味わからん。


 あと、これまた意味わからん噂を流されとる。


「母子が帰ってきたのは、幸恵が浮気したからだ」


 は?


 ママが浮気?


 ちゃうわ。


 絶対にママはそんなことせん。


 やったとしても、それはお父さんの方。


 知らんけど。


 興味ないし。


 向こうも私のこと興味なかったし。


 ホンマ最悪な親。


 思い出したくもない。


「痛っ」


 やらかし。


 反応せんとこうと思うてたのに、考え事していたせいでしてもうた。


 毎日小石を投げられるのがルーティン。


 合ってる? ルーティンって言葉の使い方。


 最近知ったねん。


 学校の先生が言っとった。


 前後の文脈まったく覚えとらんけど。


 登下校は基本的におんなじ村の子らと帰るんや。


 うちの村は小五男子が二人、小三女子が一人。


 親から「話すな」かなんか言われとるんか知らんけど、話しかけても無視。


 まぁ、村と同じ状況。


 それぐらいなら耐えられる。


 害はないし。


 なんやけど、無言で小石を投げてくるんは……なぁ。


 人としてどうかと思うわ。


 私とおんなじ学年の女子が投げてくるんはまだわかるで。


 頭がまだ幼稚なんやなって。


 私はお父さんと姉二人といろいろあったからさ。


 ちょっと考え方が同学年の子らよりも大人びとるらしい。


 引用元、ママ。


 問題は小五の男子二人。


 もうすぐ中学生やで?


 やったアカンこと、やっていいことの区別くらいもうつくやろ。


 んで、年下の女子に小石をバンバン投げるのはやっていいことか。


 そりゃやったアカンことやろ。


 アホでもわかるわ。


 あーあ。


 学校のみんなが優しくなかったら、とっくに不登校になっとるわ。


 いや、家におったらおったで嫌がらせうけるからなあ。


 逃げ場ないやん。


 どこにも。

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