第2話 理不尽 2

 夕方。


 面接を終えて帰って来たママ。


「受かったで」


 嬉しそうに報告してくれたとこ悪いんやけどな、話さなアカン。


「おばあちゃん、病院に連れて行こ。このままやったら――」


「優」


 いつもは最後まで話を聞いてくれるママが話を遮った。


「前にも言うたけど、私は村の教えをほとんど忘れとる。でもな、『病院に連れて行ってはいけない』っていう教えは覚えとるねん」


「なにそれ」


 出た。


 意味わからん教え。


「なんでなん、なんなん」


 俯いて怒りをこらえる。


 ママに八つ当たりしたってどうにもならん。


「ごめんな、優」


 面接で疲れとるのに娘に詰め寄られて。


 怒ってもええのに。


 ママはいつも通り優しかった。


 謝らせてももうたのが申し訳なくって、私は自室へ逃げた。


 私が大人やったら働いてママを助けられるのに。


 おばあちゃんを村から連れ出せるのに。


 自分の無力さが情けなくって膝を抱えるしかなかった。


 数時間後、


「優!」


 ママの叫びにも似た大きな声に驚いて飛び起きた。


 寝とったみたいや。


「おばあちゃんが」


 ママの言葉が途切れる。


 声がしたのはおばあちゃんの部屋。


 転びそうになりながら慌てて行ったら、誰がどう見ても顔色が悪いおばあちゃん。


「もうアカンかもしれん」


 数年ぶりに会えた、優しいおばあちゃんは虫の息やった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る