第6話 まじで最高にいいな

 アホみたいなタイトルですみません。でも本当に、「まじで最高にいいな!!」としか思えず、こんなことになった。

 今日(もう四日くらい経ってしまったが、これを書き始めた日)はほとんど家族みたいな間柄の友人Iと会い、たった二、三時間ではあったがとても充実した一日だった。

 まず言っておきたいのが、Iは「ロールキャベツ富女子(ふじょし)」である。頭の先から足の先まで、どこをどう切り取ってもオタク、ひいては富女子には到底見えない。しかしながらキャベツの中身は、「地雷ナシ、なんでもこい富女子」なのだ。

 Iが地雷ナシだというのは、恥ずかしながら本日知った。遠方に住んでいるので年に一回、多くても三回程度しか会えないので、会えばまず先に互いの最新BL事情を語る。小雨降る寒空の下、ベンチに座り小声でBLトークに勤しむ中、Iが地雷ナシであることを唐突に打ち明けてきたのだ。

「ねぇ、地雷ってある?」

 どきりとした。数秒前まで年下攻めは間違いないだのなんだのと立て板に水のごとく一人盛り上がっていたからだ。知らずのうちに大切な友人の地雷を踏んでしまっていたのか……? 年上攻めがお好みだったのか……!?

 私はキッチンカーで買ったホットチョコレートを一口飲んで喉を潤わせた。ちょっとスパイスが効き過ぎていて噎せる。

「グォ、ゴホッ……」

「私、ないんだよね。結局なんでも読めちゃう。少女漫画で苦手だなって思ってた体格差も、BLで克服した」

 Iはブラックコーヒーをこくりと飲む。心なしか横顔がぐっと大人びている。

「なんだよ、びっくりしたよ。あるのかと思ったよ」

「ごめんごめん。で、ヲ臀は?」

「あるにはあるけど、まぁ私も大体克服したかも。わりとどんな系統の富女子とも語れる」

「わかるわかる」

 そんな話で盛り上がっているうちに、気づくと雨は上がっていた。自分たちの上だけは晴れていて、数メートル先ではまだ雨が降っているというなかなかお目にかかれない現象に立ち会えた。わぁすごい、なんて少女のように喜ぶ二人。

「ところで、弟(イケメン)の調子はどうだい」

 私はIに会うと必ずと言っていいほど弟の近況を聞く。本当にイケメンなのだ。私は彼が高校生の頃から、決して近寄らず適切な距離を保ちながら推している。本当にイケメンで、目が合うと石化してしまうのだ。

「奴は忙しく働いているよ。カレンダーにシフトが書いてあったけど、結局何時から何時まで働いて、その日は帰ってくるのか来ないのかもわかんなかった」

「大変な職業だもんね。妄想で一回は恋に落ちる職業だわ」

「それは初めて聞いた」

 ケタケタと笑い合う。私の妄想を面白おかしく聞いてくれるので本当に好きだ。

「前の人と別れて結構経つけど、そのあたりはどうなの?」

「まだ居ないみたい。あんなに可愛いのにねぇ」

 憂う姉。頬杖をつき、遠くの山を見つめる。

「だからさぁ、思うのよ……」

「うん……?」

 Iの真面目か真面目じゃないかわからないトーンに、同じく遠くの山を見つめていた視線をIへ移した。

「ほら、あいつって、どこででも誰にでも可愛がれるタイプでしょう? 最初はツンとしてるけど、少し撫でてやるとすーぐ腹撫でてくれーっていう」

「あぁ、だねぇ……」

「だから、職場の上司とか、いいと思うの」

「……それは……」

「アラフォーでちょっとくたびれてるけど、結婚するタイミングなく歳とっちゃったイケオジ、とかさ」

「……んんん!!!(歓喜)」

「絶対合うと思うの、可愛がってほしい人と、可愛がりたい人で。で、弟は包容力もあるから、上司の寂しさもしっかり受け止めて……」

「んんんんんん!!!(いいね!!!)」

 緩んだ口元はその後もひたすらに緩み続けた。

 地雷ナシ、実弟(イケメン)に見合う受け(年上上司)を選定するI、まじで最高にいいな!!!って話。

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