第9話 「つながってくれてありがとう♡」

「誤解してすみませんでした……」


 正座してしょんぼり項垂れる涼子は消沈気味に謝罪した。


 早合点の涼子、言葉足らずの空李さん、そして記憶のない俺……。


 全く噛み合わない会話でカオスだったが、その後筋道立てて全てを話し、どうにか誤解を解いた。

 涼子は混乱し切って半信半疑だったが、空李さんが追認してくれたおかげでどうにか信じてもらえた。


「まったく、ひどい誤解だ。俺をふしだらなバンドマン扱いしやがって」


「うぅ……面目ないわ……」


 自分の早合点でとんでもない汚名を着せたと反省する涼子。


「金吾、そんな言い方しちゃダメだよ。涼子さんは金吾を心配して来てくれて、そこに私がいたからびっくりしちゃったんだよ」


 そんな涼子に空李さんは味方した。眉をハの字にし、涼子を不憫に思っているようだ。


「いや、しかしだなぁ……」


「そもそも、深酒した金吾もよくないよ。辛いことがあったのは分かるけど、お酒に頼るのは良くないってお母さん言ってたもん。そもそも金吾は未成年だよね?」


「うぐ……。何も言い返せません……」


 はい、私はヤケ酒して友達に心配かけ、ファンに迷惑をかけた未成年は私です。

 全ての元凶は私にあります。


「空李ちゃん……あなた良い子ね! 自己紹介が遅れたけど、私は神田涼子。金吾とは高校生からの仲で、同じ大学に通ってるの」


「校倉空李です。リコネスのファンで、推しは金吾です。リコネスのファンを続けるかは未定ですけど、金吾のファンは続けます!」


 力強い鼻息で息巻いて空李さんはそんな宣言をした。


「空李さん、ライブハウスに行ってたの?」


「はい、リコネスのライブは全部行きました!」


「へぇ、それは熱心ね。私もライブ見てたから、もしかすると顔合わせたことあったかもね」


 涼子も時々ライブハウスに足を運んでくれていた。交流はなくとも顔を合わせたことはあるのかもしれない。

 そこにシンパシーを感じたのか空李さんと涼子はすぐに仲良くなった。


「空李ちゃん、受験生よね? それなのに貴重な一日を使わせてしまって私からもお詫びと感謝を伝えるわ。彼のためにありがとう」


「いえ、とんでもないです! 私がお節介焼いただけなので」


「お節介だなんてことないわ。酔っ払いが車道に寝転んで車に轢かれることもあるんだし。そういえば金吾、あなた彼女にお礼した?」


「んー、お茶をご馳走した」


「やっすいお礼。もっときちんと感謝なさいよ」


「いえ、お礼なんていりません! 見返り欲しさにしたわけじゃありませんから。本当に彼が心配だっただけなので」


 空李さんは目を白黒させて遠慮した。


「遠慮することないわ。あなたはそれだけのことをしたんですもの。むしろファンサービス要求しても良いくらいよ。命の恩人なんだからもっと欲張って良いのに」


 涼子め、俺の意見を全く汲み取らず話を進めおって。

 でも考えてることは俺と全く同じだ。空李さんが家まで連れて来てくれなければ俺はトラックにねられて異世界転生してたかもしれない。

 つまり空李さんは命の恩人と言えなくもない。やはりきちんとお礼すべきだ。


「ま、朝早いし、ごたついてるからすぐにとはいかないわよね。とりあえず連絡先交換しておけば? お礼は後日改めてで。金吾、それで良いわよね?」


「異論なし」


 涼子の言うことは筋が通っている。俺はこの子にまともにお礼ができてない。やはり改めて何かしらお礼をすべきだろう。


「れ、連絡先……!?」


 と、ここで空李さんの顔色が変わる。さっきまで遠慮がちで戸惑っていたのが喜色に染まったのだ。


「でも、金吾はそれで良いの? さっきはバンドから離れたいから、ファンとは連絡先も交換したくないって言ってたよね?」


「わぁ、生意気。恩人にスカしちゃって」


「う、うるさいなぁ」


 恥ずかしいからやめて!

 恩知らずなことしたと反省もしてますよーだ!


「涼子じゃないけど、空李さんにはきちんとお礼をしたいです。さっきはお断りしてしまいましたが、改めて連絡先を教えてもらえますか?」


 改めて空李さんに向き直り、今度はこちらから連絡先交換をお願いする。

 すると空李さんは顔を真っ赤にしてワタワタした。


「金吾無理しなくて良いんだよでも金吾がどうしてもお礼したいなら交換しようねこれ私のQRコード!」


 めっちゃ早口!

 今まで聞いたどんな早口言葉よりも早い。句読点をすっ飛ばして話してるみたいだ。


 一度は断られた推しとの連絡先交換。それが思わぬ形で実現したから僥倖に思ってくれたのだろう。

 俺としては嬉しいような恥ずかしいような。ともかく、俺はQRコードを読み込んで空李さんを友達登録する。


 友達リストに新たなアカウントが表示される。彼女のアイコンはリコネスのロゴマーク――黒い曼珠沙華――だった。


 アマチュアバンドのロゴをSNSのアイコンに設定してくれるだなんて……。


 改めて俺達のことを好きなのだと感慨深くなる。


「えへへ、推しと繋がっちゃった! はぁ……もうこれで十分かも。あ、でもあんまし連絡しないようにするね。今は落ち着きたいだろうし……」


「まぁ、受験生なんだからSNSはほどほどにね」


「はーい!」


 満面の笑みを浮かべる空李さん。

 その顔には推しと繋がれて嬉しいという気持ちがはっきりと浮かんでいる。


 そんなこんなで俺はファンの女の子と繋がることになったのだった。


†――――――――――――――†

 そんなこんなで女友達と仲直り!

 なんやかんやでファンの連絡先をゲットした金吾でした!


 さて、一人目と二人目のヒロインが繋がりましたね。

 あとは三人目のヒロインの登場を待つばかりです。

 三人目は明後日くらいに登場予定です!


 乞うご期待!

 面白いと思った方は⭐️⭐️⭐️+と❤️で応援お願いします!

†――――――――――――――†

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