第16話 東部貴族

店を出ると急いで念の為持ってきた武器を持って指定された場所に向かった。


公爵家にもあるのかもしれないが、今は抜け出してきた身。戻ったら騒がれるだけだろう。

すべての素材が眠っている森の中に入っていく。


大剣は使うことができないので簡易的な弓矢と短剣を装備する。


「左の木の上のやつ、多分そう。」

「了解。」


「音出します。」

「じゃあ回り込む。」


「クロス組むぞ。」


狙っている獲物はすばしっこいのでこういった掛け声で連携を取らないとなかなか倒せない。

そして、こうして声を出すことで残りの獲物、熊と蝙蝠をおびき寄せる役割もある。


血槍けっそう


寄せられて魔物は片っ端からレオンが殺していく。

使う分を取り終えたらすぐに帰還だ。

本来ならあるはずの検問所をすっ飛ばして侵入しながら路地に入る。

親方の店についたとき時刻は4時を過ぎていた。


「おう、間に合ったか。さっきのやつは作っておいた、ローブもサイズを合わせておいたから持って行きな。」

「ありがとうございます。どれくらい待てばいいでしょうか?」


「1週間待ってくれ、最高の出来のものを作ってやる。」

「ありがとうございます。」


礼を言って店から出ると、3人はまた全力で屋敷に戻った。

実は今日、6時頃から正式に当主となったお披露目パーティーがあるのだ。


クリフォト家派閥はもちろん周辺の貴族も呼ばれている。


中には中立派閥の公爵もいるため絶対に失敗できない会だ。

急いでドレス服に着替える。


会場のセッティングの確認を終わると同時に最初の客が入った。


ゆったりと馬車から出てきたのは先程の話に出てきたアレックス公爵とその娘だ。


「クリフォト公爵殿、此度はご就任おめでとうございます。」

「こちらこそ、遠くからはるばるお越しいただきありがとうございます。」


社令事項を簡単に済ませ、会場内に案内する。

それからは次々にやってくる場所に対応に追われ、式が始まったのは7時頃であった。


「此度、クリフォト家当主となったクリフォト・ハイムです。若輩者ですがよろしくお願いいたします。……以上をもちましてパーティーを始めたいと思います。」


俺の祝辞が終わり、正式にパーティーが始まると一気に張り詰めていた緊張感が溶けた、

まず最初に俺の元へやってくるのは一番位が高いアレックス公爵だ。


「いい演説だったね。あの少年がここまで成長するとは驚いたよ。」

「父の死にいつまでもクヨクヨしていてはいけませんから。」


「本当に立ち直ってくれてよかったよ。それと、南部貴族がきな臭いことを始めようとしている可能性がある。君のところで探っておいてくれないか?」

「わかりました。まったく、これ以上西部との対立をなくしてほしいのですがねえ。」


「まったくだ。仮にも同じ王国の貴族だというのになぁ。」

「そういえばアレックス公爵殿は担ぎ上げる王子は決まったのですか?」


「第3王子かな。今度紹介するね。面白い子だよ。」

「あなたがそこまで言うとは。」


「まぁ、会ってからのお楽しみということで……。君と喋りたい人もたくさんいるだろうしこの辺にしとくよ。また今度。」

「ありがとうございました。」


公爵が去っていくとどんどん人が集まってきた。


ここらへん一帯の貴族のことを東部貴族というのだが、クリフォト家はアレックス家と並んで位が一番高い。

その分だけ支援をしたりしてもいるので他の貴族は頭がクリフォト家に上がることはないだろう。

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