第15話 新調
翌日、残っていた執務をすぐに終わらせるとS級冒険者として一人、街に出た。
いや、出ようとしたが正解だな。
案の定、レオンとイシェルが待ち構えていた。
「ナハト様?」
「すまんすまん。」
「いいですが、一言言ってからでかけてください。」
「そうしよう。」
「で、今回はどのようなご用事で?」
「武器を新調したい。お前たちの装備も必要だろう。」
「そうですね。だいぶボロボロになってしまってます。」
「そうだろ、行くぞ。」
3人が向かったのは職人街、表に立っている一番大きな店に入っていった。
「いらっしゃいませ〜。なにをご要望で?」
中にそこまで客はおらず入ったらすぐに肌が焼けたお兄さんが出てきた。
「大剣と装備を新調したい。見せてもらえるか?」
言いながら一緒に冒険者カードを見せて身分証明をする。
「S級冒険者様ですか、まだ若いのに凄いですね。案内します」
案内されたのは二階、明らかにVIPルームだ。
展示されている品も一級品である。
流石はこの街一番の店か。
「こちらが大剣になります。」
店員が大剣を何本か裏から運んでくる。
「左から銘を【飛竜大剣】【竜殺し】【忍耐】【命刈】となっております。触っても大丈夫ですので、感触をお確かめください。」
「【忍耐】だと?」
「えぇ、ある遺跡から発掘されたものでございます。決して壊れることがない魔法が掛けられています」
「なるほど……【忍耐】を買わさせてもらおう。」
「ありがとうございます。」
あの攻撃に耐えれるだけの武器があればいいと思っていたが面白そうなものを見つけることができたな。
「それと装備に関してですが、あいにくお客様の望まれる効果を有している物がございません。職人を紹介いたしますのでオーダーメイドはいかがでしょうか。」
「そうするとしよう。大剣の代金はこれでいいか?」
「ありがとうございます。職人ですが少々気難しい方ですので気をつけてください。」
その職人の工房の場所が記された地図を頼りに路地に入っていく。
貧民街の闇市とは違ってちゃんと整備されている路地だ。
あたりから工房特有の喧騒が響いている。
「ここでいいよな。」
「あっているはずです。」
ドアをノックするといかにも親方といった風の男が出てきた。
「なんだ?」
「装備のオーダーメイドをしてもらいたいんですけど今いいですかね?」
「オーダーメイドだぁ?……まぁ、いい中に入れ。受けるかどうかはそれで決める。」
「わかりました。」
中に入ると熱気が俺たちを襲った。
「冒険者ランクは?」
「S級です。」
「なるほど。扱う資格はあると。」
渡したカードを見ながら親方は工房に向かっていく。
作りたい装備の説明をしながらイシェルが聞いた。
「なにか必要な素材はありますかね?」
「ないな。…いや、最高品質で行くか。S級だしな。」
そう言うと、おじさんは地図を持ってきた。
「ここにいる【宝栗鼠】の皮が欲しい。それと【星穹熊】と【吸血コウモリ】だな、扱いが難しいからそのまま連れてきたほうがいいぞ。」
「理解した。すぐに行ってくる。」
「いや、先に採寸をさせろ。下地を作っておきたい。」
「わかりました。」
レオンが飛び出そうとしたのを親方が止めた。
一人ずつ採寸されるので待つ間にそこら編に放置されている彼の作品を見ることにした。
【宝塔猫】を素材としたスカーフのような物がたくさんある。
「すごい職人ですね。素材も良いですが何よりも質がとてもいいです。」
「そうだな。鞘も扱っているのか……。」
「頼みますか?」
「そうだな。この内側に入れるやつを頼もう。」
「わかりました。私はこの魔法ローブがほしいですね。」
イシェルが持ち出したのは【影幽山猫】と呼ばれるとてもめずらしい魔物の皮を使っているローブだ。
隠密性に優れ、魔法の行使をわからなくする効果があるのか……。
「買うか。」
「ありがとうございます。」
全員の採寸を終えると、俺は親方にいくつか置いてあるものを買いたいという話をした。
「鞘の内側に入れる皮か。面白そうだな。」
親方はにやりと笑い、こころよく決算をしてくれた。
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