第13話 S級

今度は波によってできた斬撃が飛んできた。

間一髪で避ける。


「全く。どうしたものか。ギルもそう思うだろ」

「………」

「ん?どうしたギル………!?」


先程まで隣にいたはずのギルがいなくなっていた。

もしや殺られたのかと思って下を見渡すが、見当たらない。


「グァシャァガシャシャ」


突如けたたましい声が響き渡る。

海王の絶叫だ。


そちらを見ると背後にギルが立ち、何かを突き立てている。

いつの間に移動したのかわからなかった。


「今だやれぇぇぇぇぇぇえ」


ギルの叫び声にコリンナが反応した。


極小獄烈弾コアフレイム


目に見えぬ極小の圧縮弾が海王の近くで急激に増加する。


あたりの水が蒸発し消し飛ぶ。

もう一人も動いた。


血壊葬槍ブレインヒル


爆発とともにダメージを受けながら正面から入ってきたレオンが海王を貫く。

ここまでお膳立てされて攻撃できるのだ。ヘマはできない。


記憶の中に存在している最高の技を創り出す。


星風之咆哮ハストゥール


先程の三又鉾を遥かに超えるエネルギーの塊が落ちた。


かつて父が一度だけ見せた最高の技。


血筋はあるだろうが、その一回だけで模倣できるのだからこの体、クリフォト・ナハトは天才なのだろう。


その咆哮はすべてを破り、敵対している者のみを喰らう。


避けることもできずに直撃を食らった海王はコアもろとも消し飛んだ。


同時に支えていた柱がなくなり、ウォータースライダーのように空いた穴に全員が流れた。

B級のサポーターやヒーラーが降りてきてこちらを癒してくれた。


最後の気力を振り絞り、巣の一番上の休憩所まで行くと、ベッドがイシェルの手によって作り出された。


傷は魔法でなくなるが体力は回復しないので休むことが重要だ。

寝そべりながらジュースを飲み、反省会を始めた。


「しかし、まぁ強かったな。」

「最後のあの骸骨の技は何なの?聞いたことないんだけど……、」

「あそこが海じゃなくてよかったぜ。」

「今回のMVPは?」

「ギルじゃないか?あそこで活路を切り開いてくれなかったら。何もできずに終わってただろうし……。」


「確かにな。しかし、宝はどうなるんだろうな。」

「B級は領主から報酬が出るから宝は取ってはいけないことになってるがA級は報酬とは別に魔法具なら良いらしいぞ。」

「おぉ。相変わらず良心的だね。冒険者のことをよく分かってる。」

「魔法具は大事だ。」


武器の新調もしたい。大剣が壊れた。


仮のものとはいえ、丈夫に作らせたのだが耐えきれなかったようだ。

適度に休憩したら解体が進んでいる巣をめがけて全員が飛び出した。

しばらくたって6人の前にはたくさんの魔道具が置かれていた。


そんなにとっても意味がないんで一定数はB級にあげる。

A級は魔道具を好きにしていいらしいからな。。反感を買わないいい方法だ。


「じゃあ俺からだな。」


そう言ってガイルが取り出したのは鎧だった。


「【軽鎧】と呼ばれる鎧だ。珍しくない魔道具ではあるんだが、他にここまでのエンチャントが付与されているのが珍しくてな。」


「なるほどぉ〜」


「俺はナイフだ。特に効果はないがさっきの戦いで愛用のナイフが壊れたから仮として持っておく。ついでに【状態異常】を察知できる短い棒も見つけた。」


「貴族にも高い値段で売れますね。」

「売るつもりはないが確かにそうだな。」

「あたしはローブよ。今まで気に入ったデザインがなかったのだけれども、今回爆発耐性付きのローブが見つかったわ。」


コリンナはとても嬉しそうだ。まぁ、真っ赤なローブは確かに似合っているが……。


「俺は手袋と大剣だな。手袋は【状態異常無効】の効果+耐熱も持っているからだいぶ優秀だ。大剣はエンチャントは特にないから繋にしかならないが。」


「だいぶ有能な手袋だな」

「ああ。それよりレオンはどうだったんだ?」


レオンを見ると、見るからに凄そうな槍を手にしていた。


「俺の魔力を吸って強くなっていく武器だ。今までの槍はどうもしっくり来なかったんでこれからはこれを育てていくよ。」


俺が簡易的な槍を支給していたのだが槍が耐えきれなかったらしい。あのあと粉々になっていた。


「最後は私ですね。」


めったに見せないような嬉しそうな顔で見せてきたそれは


「【異空間鞄】です。だいぶ容量があるようですね。」

「「は!?」」


思わず全員から声が漏れた。


【異空間鞄】というのは制限はあるがあの4次元ポケットのような機能を持っている鞄だ。

容量にもよるが下手をすれば国宝になるほど重要なもので下手をすれば国家予算が動く可能性がある。


「あーまじかぁ〜」


悔しそうにギルが天を仰ぎながら言った。


売るとか言う考え以前に自分のパーティーで使いたかったのだろう。

こちらとしてもこれは外せないのでご愁傷さまとしか言えないのだが。


巣の中の魔物がいなくなったとの報告が入り、B級の人たちと一緒に帰る。

報酬は多めに設定されており、道中出てきた魔物の素材もたくさん手に入るのでB級冒険者はほくほく顔だ。


中にはA級に昇格することが確定した冒険者もいる。

あの弓矢でギルを助けてくれた冒険者だ。威力がA級にふさわしい能力だと称されたのだった。


お祝いに俺の方からも今回見つけた魔道具の中にあった【道標の鏃】という矢を渡す。


「これは?」

「敵が残した痕跡を探ることができる矢だ。矢は戻って来るようになっているから使ってくれ。」

「有り難い。」

「いや、こっちこそ助かった。その御礼だ」

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