第11話 コア

「一般的に巣というものは外から見たものより中のほうがデカいが、この巣は縦の大きさは変わっていない。だが、やはり魔物は下に行くほど強くなっているな。」


俺が呟くとギルもうなずいた。


普通に出てくる魔物がB級。これはキツそうだ


「先にコアまで穴を開ける、よってきた魔物は倒してくれ。」


「大技……分かった。」


以前弟に向かって放った物を強化した技を地下にブチ込む。

大気中に散らばっている魔力の元となるもの(魔素)が俺の身体に吸い込まれてきた。

それに伴い魔物も寄せ付けられてきている。


いくらシーフとはいえA級を踏んでいる者。B級では相手にならずに滅ぼされた。


「行くぞ。」


俺の掛け声に合わせてギルが離脱した。それを確認したあと技を放つ。



氷焔凶狼覇フェンリル


相反する2つの属性を持った狼の咆哮が幽霊船を襲う。


それは真下だけでなく爆風を持って周りの部屋にも襲いかかった。

ところどころ焼け爛れたり、氷漬けになっている船を降りながらコアがある部屋の隣に着いた。


「何なんだこの威力。S級と遜色ないじゃないか」


呆然とギルが呟いている。だが、待ってほしい。この領地にいるS級と比べてもらっても困る。あいつらは余裕で辺り一体の環境を変えてくる化け物だ。


父やあの領主たちも同じレベルだというが……。


「魔力の消耗が激しい。さっさと壊すぞ。」


「ああ」


「ちょっとまってくれないかしら。」


突如、隣の部屋が壊れてコリンナとガウルが入ってきた。


「馬鹿だよ。よりにもよって最高火力で壊しやがった。」


ガウルが呆れたように話す。


確かに奥を見ると燃えているように見えるな。


気を取り直してもう一回壊そうとしたときだった、今度は別の方向の壁が崩れ落ちた。


「強いですね。」


「当たり前だ」


まぁ、レオンとイシェルだ。


「なんで対抗しようとしたんですか……。」


呆れたようにイシェルがため息を吐いた。


どうやら、レオンが俺たちの技に気がついて対抗しようと大技を放ったらしい。

破壊痕以外が見えないので純粋な物理攻撃だろうか?


その後は邪魔されることなく部屋を破壊することに成功した。

瓦礫が崩れるとそこに見えたのは真っ赤に輝くコアとそれを守る鮫に乗った3メートルほどの骸骨だった。


「サメの方は【虚霊鮫騎手ゴーストシャーク】A級だ。上に乗っている骸骨の種類がわからん」


「【骸の海王むくろのかいおう】S級。明確な弱点はないわ。骸骨の弱点である炎を完全に無力化するはずよ。」


レオンの問いかけにコリンナが答えた。


「S級試験だな。」


「全くだ。良くてA級の魔物だと思っていたがだいぶ成長していたのか。」


「スタンピードが起きる前に攻略できそうで良かったな。行くぞ。」


「「「おぅ」」」


示し合わせたわけでもないが、綺麗に全員が散った。


爆裂魔法ブレイズ


開戦の合図となるコリンナの魔法が飛び出すとともに一斉に全員が襲いかかった。

同時に海王が腕を振るう。


すると、その背後から巨大な波が発生した。


海碧之骸うみのむくろ


「っ防御を固めろ。」


巨壁きょへき


ガウルが叫ぶと、目の前に壁が展開された。

しかし、それだけでは抑えきれずに壁が弾け跳ぶ。

慌てて前傾姿勢を取りながら突破した。


その余波だけでギシギシと周りの柱が軋む。

すでに、壁は完全に破壊されている。


海鮫鱗シャークスケイル


今度は、サメの鱗が大量に飛んできた。

恐らく、鮫本体が使った魔法であり海王の方は魔力を使ってないはずだ。


優れた騎獣を操っており、恐らく合体した強さはS級の中でも上位の強さを誇るだろう。


血套ブラッドコート


葉布リーフ


鱗の荒らしを潜り抜け、レオンとギルが向かった。

他の面々も魔法で身を守りながらその後に続く。


腐食波アッシド•ウェーブ


二人を倒そうとさらなる波が向かったその時、一斉に攻撃が降り掛かった。


爆裂弾クラッシュ

刀鳴狼穿じんめいろうが

分壊流断スラッシュ

碧巖へきがん


表面が爆発し、空間の刃が貫く。


生じた穴に細胞をも死滅させる毒薬が流し込まれ、上から巨岩が降り注いだ。


波防壁はぼうへき


4人が予想したとおり海王には傷一つ負わせることができない。


だが、鮫の方は違った。


ところどころ焼き爛れ、真ん中には大きな穴が空いていた。

その穴は今にも大きくなっている。



海王はすぐに鮫から降りるとまた鮫を召喚した。


【召喚:虚霊鮫】


「はぁ?」

「っ巫山戯んな」

「……まじかよ。」

その光景に思わず声が漏れる。

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