第10話 巣
「しかしスタンピードか。本来なら起こるまで領主様は不干渉だったがどういうことだ?」
馬車に揺られながらガウルが聞いてきた。
「恐らく何かあったのだろうな。新しく領主変わったのだから不安要素はなくしておこうという考えなのか、それとも、戦争か……。」
答えたのは馬車に同行しているA級昇格間近のB級冒険者だった。
「戦争?」
「いや、可能性の話だ。自領の弱点を先になくしておくと考えから読み取るとそうではないかと思っただけだ。」
当たっているな。
「なるほど。領主が変わった際になにかが起こったらしいからそれがあるのかもな。」
当たってるねぇ。
特に戦争についての批判はなかったので安心しつつ俺たちは【
「デカいな。」
「でかすぎる。」
150mはあるだろうか、とてつもない威圧感を放つ幽霊船がそこにはあった。
中に圧縮された形で巣が形成されているので実際はもっと大きいはずだ。
「まずはデッキの敵を片付けキャンプ地を作る。行くぞ。」
「おう」
一斉に冒険者が看板に飛び立った。
はるか30メートルはあるだろう高さを一瞬で駆け上がっていくのは流石だな。
甲板にも勿論敵はいる。しかし、C級ほどの力しかなく特に問題なく片付いた。
特に入り口らしきものがないため持ってきた火薬で壊して侵入する。
これを複数箇所で行い効率的に進めていく手はずになっている。
「さて、どう組む?」
「相性的にガウルとコリンナで一組、俺とハイムさんで一組、イシェルさんとレオンさんで一組でどうだ?」
「まぁ、妥当なところか。ちょうどよくバランスが取れている。」
「そうですね。B級の人たちもだいたい3グループに分かれてください。」
イシェルがB級のグループ分けをしている間に爆破が完了した。
中を見ると爆破音につられてきた魔物たちがうようよいる。
その大半が幽霊(レイス)であり、Cランクの魔物だ。
「ハイムさん。やはりコアは真ん中の一番下にあるみたいです。」
「この真下に進めばいいのか。壊せたら壊す、無理そうだったら即撤退だな。」
「そうですね。それと、ここからは敬語はなしで」
「了解。」
【
牽制と安全のために技を入れながら中に入った。
やはり幽霊船、だいぶボロボロになっている。下の階に行くには爆破するのが一番だがそう多く火薬もあるわけではない。なるべく早く階段を見つけたいところだ。
が、そこは流石はシーフというべきか。まるでどこに何があるか分かるようにスイスイと下の階へ降りる階段を見つけていった。
実はこうした巣(突発的ダンジョン)では豊富に資源が取れる。
今回の場合はぼろぼろになっている幽霊船の中に少量のまともな物が紛れており、それが資源だ。また、他にも資源と呼ばれるものがある。
お宝だ。
ギルに案内されてやってきた場所は厨房。
指差す方向を見ると金銀財宝とそれを守る骸骨船員が見えた。幽鮫だろうか?これまでとは違った種類の魔物もいる。
「どうする。」
「取る以外の選択肢がない、行くぞ。」
「正面突破ですか?」
「ああ。たかだかBランクだろ、A級が二人いれば何人いようが問題ないはずだ。」
「それもそうですね。」
【凶鎧破骨《クレイジーボンテット】
先手必勝とばかりに魔法を叩き込む。
アンデット系、特に骸骨によく効く魔法であり骨を砕けおる性能がある。また、自分が魔力を通した骨は操ることができ、それだけで生物を構成する事ができる。
その間にギルは鮫の方を潰していた。
その両手には銀色に輝くナイフがある。
「それは?」
「ミスリルのナイフだ。今回のためにギルドが無料で貸してくれた」
ミスリルはクリフォト領では取れない為、貴重な鉱石だ。ギルド側も今回の巣は重要だと考えているのだろう。
「しかし、ナハトは火力が高いな。A級の自信を失いそうだ。」
いや、多分あなたたちのパーティー、他領へ行ったらSランクにいけますよ。とは言えなかった。
無難に愛想笑いで返そうとしたが大事なことを思い出す。
「それよりギル、お宝は?」
「あ、そうだった。」
罠ではないか確認してから財宝の山に飛び込む。
この階層に金銀財宝があるならだいぶ良い巣だな、後で領主として解体依頼を出しておくか。
一通り漁ったあとまた、下層を目指して進んでいく。
「財宝の中でいいものはあったか?」
ギルに問いかけると嬉しそうに先程から付けていた腕輪を見せてきた。
「解毒の腕輪だ。これは貴族に高く売れる。」
まぁ、確かに高く売れるな。
「良かったじゃないか。」
「ああ。そういうハイムはどうだったんだ。」
「恐らく火炎耐性付きの指輪だ。ちょうど持っていなかったから助かるな。」
「海賊ということは水つながりで火に強いのかな。」
「ありそうだが……。」
お互いホックホクで更に降りていく。
が、15階層ほど降りたところで敵が強くなった。
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