第6話 暗殺

帰りは来た道ではなく、離れの東屋から外に出た。


理由は特にないが、ふと庭に行きたいと思ったのだ。


レオンはイシェルに持ってきてもらった護衛の服装に着替えて俺のあとにイシェルと一緒についてきている。


クリフォト家の庭だが、他の家に負けないほどの量の花が咲き誇っている。


その中でも特徴的なのが、睡蓮などを代表とする、水生植物を集めた水上庭園である。


王族をもってしても素晴らしいと言わしめたのである。その中の半分が毒植物で湿られていてもな。


夕焼けが見える。転生してたった一日しかたっていないが中々に充実した一日であった。

今日の出来事を回想しながら庭を通り屋敷に帰ろうとすると、庭にメイドがいた。


庭師ではなくメイドがいることに違和感を覚えながらもその横を通りかかったそのとき、メイドの手中に短刀があることに気がつく。

だが、時すでに遅し。


イシェルが反応するよりも先に脇腹にナイフが食い込む。


痛みに悶絶しながらも、解毒のために魔力を全力で自分の体に流し込んだ。毒の解除は、掛けられた本人が抵抗しなければ危篤状態になる。


魔法があるこの世界では短刀に猛毒を塗り込むことは当たり前の常識なのだ。

ナハトの意識が薄れ倒れると同時にメイドも絶命した。


【血槍】


レオンが魔力によって出した槍が瞬時にメイドを貫いたのだった。


「……悪い、自決しやがった。」

「ならば、紛うことなき暗殺者ですね。 黒子たちは急いで屋敷を閉ざしなさい。誰も入れてはいけないし、逃してもなりません。」


黒子、つまり配下の部隊に屋敷の閉鎖をさせて、イシェルはガーランドに連絡をつなぐ。


(ガーランド。ナハト様が刺客によって倒れました。急いで屋敷を封鎖してください。力ずくで突破されないように。)


(了解した。)


魔力によって傷口から血が出ないようにしながら慎重に屋敷まで走った。レオンはメイドを抱えながらそれに追従する。


屋敷に入ると大きく裂けた傷口を見た使用人が手を止めて顔を青ざめさせた。


医療室に連れ込むと、事情を理解した魔導医師が治療をすぐに開始した。

幸いにして毒が中まで侵食していなかったためすぐに傷口はすぐに再生した。


魔導医者から、「もう大丈夫だ」と言われ、イシェルは座り込んだ。その後に、レオンがメイドの死体の保存を頼むとイシェルを連れ出した。


「ありがとうございます。あなたが居て助かりました。」

「俺は元公爵だ。その誇りに懸けて契約は守る。」

「安心しました……。」


突如、ガーランドから連絡が入ってきた。


(表から屋敷に侵入しようとしていたものを捕縛した。安心しろ、殺してはない。裏のものも何人か捉えたようだ。)

(そうですか。ではそいつらを黒子に引き渡しておいてください。此度はありがとうございました。)


(気にするな、と言いたいところだがどうもキナ臭い。他国が仕掛けてきている可能性もあるから気をつけてくれ。)

(分かりました。)


その後、レオンは新たに与えられた部屋で休み、イシェルも部下の報告を聞いたあとに寝た。


翌日の昼過ぎ、ナハトが目を覚ました。


「お兄様、大丈夫でしたか?」


ナハトが目を覚ますと弟が駆け寄ってきた。


嬉しそうにナハトが受け止めようとするが、顔をしかめると、突如弟を蹴り上げた。


「お兄様?」


不思議そうに弟が呟くがナハトは険しい顔で弟を見るばかりであった。

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