503話 苦悩するクライスラー

1924年にウォルター・クライスラーは6気筒エンジンを搭載したクライスラー・シックスを発表しました。

翌年の1925年6月6日にマックスウェル社とチャーマーズ社を統合しウォルター・クライスラーはクライスラー社を設立します。


1929年にはダッジ・ブラザーズ社を買収してラインナップを増やしているクライスラーだが、他社のものでも優れているのならどんどん取り入れるという革新的な自動車メーカーだった。


クライスラーシックスも超高級車のデューセンバーグ(1921)以外には搭載されていないロッキード式の4輪油圧ブレーキシステムを大量生産車としては初めて採用している。


こうして史実の方では技術には定評のあったクライスラーだが、超高級車部門では宇垣マーク1やマーク1リムジンに。

大衆車部門ではミゼットシリーズに押されて経営的に苦しめられる事になる。


クライスラー・シックスが発表されてマスコミからも注目され、多くの人の目が引き寄せられて、それなりに話題になっていたその時に太平洋の向こう側から宇垣マーク1、マーク1リムジン、ミゼットシリーズ、バイクの125がやってきた。


ウォルター・クライスラーにとって、

このタイミングで、デザインが圧倒的に優れた自動車が登場したのは最悪の悪夢だったと言っていい。

話題を全部攫われてしまったからだ。


クライスラーにとってのライバルは宇垣ミゼットだったのだが、車体の大きさの割に小回りが効く事や、メッキや塗装が美しい事が多くの人の目を惹きつけた。


そして、どうやっているのかはわからないが、宇垣自動車の製品の塗装の美しさは長く続く。

土埃や泥汚れで汚れても水で汚れを洗うだけで新品のような美しさを取り戻すのでオーナーは洗車の苦労から解放された。


更に驚くほど、ミゼットやマーク1は故障しない。

タイヤの空気入れも、他のメーカーの車のタイヤは頻繁にチェックして入れなければいけないのに、ミゼットやマーク1の宇垣タイヤは減り方が少なく空気の抜け方が少ないと大評判になっていった。

バッテリーも普通なら長持ちはしないのに、宇垣バッテリーは長持ちして、

悩まされる事が全然無い。


クライスラーシックスの発売の時には

宇垣自動車のミゼットシリーズやマーク1シリーズは大人気の入荷待ちになっており、シックスの売れ行きはよくなかった。


宇垣の自動車は油圧ブレーキを全面的に採用しており、サスペンションも優れていたのでクライスラーの売りが無くなってしまったのだ。


ウォルター達が頼んだ記者達は話題にしてはくれていたが、効き目はなかった、、、


何よりも大変だったのはクライスラーへの投資に積極的だったスポンサーの投資家達が消極的になった事だった。


後ろから追う立場のクライスラーは

フォード自動車のような高い生産体制を作り上げて量産化する事で車の値段を下げなければならなかった。


だが、新車のシックスが発売されたばかりなのに新車の売れ行きの鈍さを見て投資家達がクライスラーへの投資を躊躇し始めた。


更にクライスラー・シックスは先進的な技術を導入していた為、値段が高めなのに利益率は低かった。


昭和天皇陛下の御料車を見ればわかるがマーク1やリムジンは非常に塗装が美しい。


宇垣昌弘はボディのメタリック塗装には力を入れて塗料の開発を行なっており、メタリック塗装の美しさとメッキ部分のプラチナメッキの美しさは令和時代の自動車博覧会に飾っても観客を魅了させるような輝く美しさを持っていた。

その塗装の美しさは練金工場で更に美しくしているからなのだが。


そして防汚魔法&劣化防止魔法&保存魔法のおかげで、その塗装の美しさは長持ちする。


そりゃあ、クライスラー・シックスではたちうちはできないだろう。

ゼネラルモータースのエルメアやフォードのモデルTは安さで対抗できたが、それでもエルメアやモデルTの売り上げに影響が出たのだから、、、


ちなみに宇垣自動車は1925年の時点では、大金持ちやセレブ達に向けて売っており、あまり一般にはミゼットを売ってはいない。

ミゼットやマーク1を欲しいと思った人間が買い控えした結果、クライスラーの売れ行きに影響が出たのだ。


宇垣自動車は利益率の高いマーク1とリムジンに力を入れていたので、普通ならそんなに影響は出ないのだが、

塗装の美しさの違いはクライスラー・シックスを色褪せさせてしまったのだろう。


フォードにもカラーのバリエーションは増えないのか?と問い合わせが殺到したのだから。


ちなみにマックスウェル社とチャーマーズ社は苦難の日々を思い出していた。

フォードはマイクロゲージを使って、

部品の互換性を成し遂げたが、部品の互換性を成し遂げるのに苦労をし続けて疲れ果てていた自動車メーカーは多い。


いや、部品の互換性だが、努力し続けて、場所によってはベテランを動員しないと部品の互換性は維持できない。


フォード・モデルAの大量生産には

それにも苦労話があったりするのだが

ヘンリー・フォードは黙秘して話さない。


自分達はとうていフォードには追いつけないと思わせておいた方がフォードにとって利益になるからだ。


フォードに比べたら遥かに遅れてのスタートなのに追いついて品質的には追い越しているトヨタは本当に凄い。

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