491話 世界大恐慌が始まりかけた頃の欧州。

前話でドイツでもアメリカの投資が失われて失業者が増えたと書きましたが、1930年ともなると欧州各国でもアメリカと同じように不況になり始め、

失業率も高くなり始めていました。


それはイギリスやフランスでも例外ではありませんでした。


行き先を無くしたアメリカの投資マネーが流れたのが公定歩合の高いイギリスやフランスだったのですが、イギリスやフランスに行っても利息の高い国で貯金されているだけでは経済を回してはくれません。


アメリカの好景気は世界経済を牽引している側面もありました。


それが大失速してデフレになり、その上で高関税政策を行い37%の関税を57%に上げたのだから世界経済に与えた悪影響は大きかったのです。


そして欧州各国はアメリカの高関税政策に激怒して、同率の関税をアメリカに対してかけるようになります。


アメリカからの輸出に57%、輸入に報復関税57%で114%の関税というわけです。

この高い関税の掛け合いによって、アメリカと欧州の貿易は大きく減少する事になります。

(日本が報復関税をすると綿花の輸出入とシャツの輸出入で228%になる危険性もあります。

そりゃあ減りますよねえ。)


なんせ高い関税を掛けた品目は2万種類に及んでいました。

アメリカの輸出入は半分以下に落ち込みます。

一部の経済学者と歴史家はこのスムート・ホーリー関税法(1930年関税法)こそ、世界恐慌を引き起こしたとか、より深刻にした原因だと言っています。


アメリカ国内なら370ドルで買えるフォード、モデルTが外国だと800〜1000ドル相当の金額になるのですから、そりゃあ売れなくなりますわな。


メキシコかカナダへ運んで、そこから輸出だと500ドル以下で買える価格かもしれませんし。


そりゃあ密輸入したくなりますわな。

こんなに関税が高いんじゃあ。


アメリカから綿花を買って綿の生地にしてシャツを作ってアメリカに販売していた史実の日本なんか無茶苦茶に大変だったでしょう。


少なくとも宇垣がアメリカから仕入れている綿花は密輸100%ですよ。

関税を払うくらいなら、100%をインド近辺やオーストラリアから買う事にしますよ。


さて、アメリカにやや遅れて失業者が増えた欧州ですが、アメリカと同じように家を失うホームレスが増え、

服もどんどん薄汚れていき、炊き出しに並ぶ人間が増えていきました。


世界各国のレポートを書いているゴーレム達は、なんと表現すればいいのか、苦慮するようになります。


それはアメリカにいるゴーレムたちもそうでした。

ニューヨークの州知事のFDルーズベルトの近隣だけでも何万人もの失業者が、空腹を抱えて職を求めて歩いていました。


ゾッとするような光景です。

イギリスやフランスでさえ失業者が溢れ始めました。


大量に採掘されて価値が暴落した銀は

宇垣が買って買い支えていましたし、

世界経済にはプラスになっていたはずですがねえ。

銀の価値は金を1gと交換するなら銀は15.5gですが、大量に銀がある一方で金本位制なのに金の備蓄が少なくて困っていた国々は銀のインゴッド、25kg分で金1kgとの交換比率で日本と交換し始めました。

銀が余る一方で金は目減りしていましたからね。

この当時の各国では金は価値があり、

銀は厄介者と思っていたくらいでした。宇垣は銀25kgを金25kgに錬金できるので大儲けです。

まぁ、こちらの世界の幕末に奪われた分の10倍を超えて取り戻してやりますよ。といいつつ100倍返しにしてそうですが。


金本位制は自国通貨と金貨を交換できる制度ですからねえ。


資産防衛の為に国民が金貨を欲しがった時は交換せざるを得ないから、金の備蓄が益々減ってしまいます。


金本位制の国が多かったのも世界大恐慌の原因の1つですよねえ。


でも、間近で起きたドイツのハイパーインフレを見たら金本位制は絶対に必要だと思っても不思議じゃありませんが。

欧州各国では失業率が5%上がっています。

ゴーレム達の見た感じでは8%から10%にすぐに上がりそうに見えています。


アメリカでもそうしている場所がありますが、ノミ、シラミ、ダニ対策で、

ホームレスの宿泊施設では衣類の燻蒸が行われています。

ホームレスの衣服は薄汚れていますからね。


宿泊施設も炊き出しも全然足りていません。


宿泊施設では、地元に住んでいた人間は2週間泊まれますが、大量に運び込まれたベッドで雑魚寝の環境ですからね。個室で眠れるわけではありません。



セイバーはネルソン・ロックフェラーさんを通してフーヴァー大統領に『アメリカの農産物を買い上げて炊き出しに全力に取り組んでは?』と進言しましたがどうなりますか、、、

セイバーはFDルーズベルトにも同じ事を進言していますし、新聞やラジオにも広告を出しました。


ですが焼け石に水でしょうね。

今のアメリカの失業者の数は救える数には思えません。


そう見えます。


目の前に万人単位の失業者を見たら

恐怖すら感じます。


いや、暴動を起こさずに空腹を抱えながら炊き出しに並んでいるのですから感心してしまいます。

ゴーレム達はステータスチェックができます。

みんな空腹なのでHPが半分から、それ以下に下がってます。


そんな失業者達が小規模の炊き出し所に何千人も来ているのですから。


中規模な場所にはもっと大勢が押し寄せています。

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