486話 ジョージ・グレン日本へ。
USスティールで戦艦の装甲板を製造し、戦艦への装甲板の取り付けや溶接にも関わっていたグレンですがライバルとの確執が生まれたのには訳がありました。
戦艦の装甲板は重いので、それ自体が艦を歪ませてしまうのです。
歪みが大きな場所によっては修繕する必要があるとジョージは気がついていました。
可能ならば試験航海の後と数年後、10年後に船体の歪みを再チェックさせてもらいたいと思っていました。
人間の身体だって定期的に整体院に通って、ほぐしてもらうと身体が楽になったりします。
外洋を航海しているのですから定期的な歪みのチェックは必要ではあります。
でも、かなりの大工事になりますし、海軍側に責め立てられたらどうするんだと言われてしまい、歪みのオーバーホールは中々試す方ができませんでした。
(なんせ欠陥と言えなくもありません。)
ジョージは息子達に話ましたが、息子達も斜めにする舷側装甲は艦体に対する悪影響が大きいと気がつきました。
時が経過すると歪みは大きくなりますから、歪みが少なくなるように装甲の接合箇所の入念なチェックがオーバーホール時に必要だとレポートを上げました。
全速で180度旋回すると行き脚が止まって速度が極度に遅くなり、止まってしまう扶桑なんかは論外ですが、なんで、こんな船ができたのか、まったくわかりません。
おそらくなんらかの艦体の歪みも原因の1つなのでしょう。
昭和世界の戦艦達は実戦形式の訓練のせいもあり、損傷すると錬金工場内でフルオーバーホールしていた事で艦体が歪んでいる船はありません。
舷側装甲と舷側を一体化している艦の方が歪みは少ない様子です。
やはり斜めに装甲を傾けるのは問題がありそうです。
それと、今の艦船はリベット止めの船体ですのでリベット止めに関する技術知識は蓄積されていますが溶接に関してはまだまだ知識が蓄積されてはいません。
溶接できる高張力装甲板の開発に際してジョージ親子は大活躍する事になります。
それだけでなく、戦艦の組み上げの現場でも彼のようなベテランがいると彼の作った部分の出来が良くなる事が判明しました。
彼ら親子は溶接の技術力も高く、戦車や装甲車の量産工場の技術指導も行い、宇垣の戦車は出来が良いと言われる要因の1つになります。
後に日本が世界に先駆けて建造した10万トンタンカーの名前が『ジョージ・グレン号』なのは彼の功績の大きさに宇垣が敬意を表したからです。
ジョージが驚いたのは溶接に関して名人レベルの人間が宇垣造船には大勢居た事です。
(まぁ、昭和世界でガンガン作ってましたし。)
他の日本の造船所に行ったら宇垣ほどではなかった為、ジョージは安堵しました。
(各地の造船所はかなりレベルが高く
その点は驚きだったのですが。
特に10万トンクラスの大型プレス機が多くあるのには驚かさせられました。)
USスティールでも、もっとも溶接が上手かった自分と同レベルの名人が大勢居たら、そりゃあ驚くでしょう。
技術が優れている昭和世界で溶接スキルを身につけたゴーレム達が他の日本の造船所に教えに行って技術レベルの底上げをやり続けてきた結果です。
(そして、ダンジョン内の宇垣の工場を見たらもっと驚いたでしょう。
軽機や重機の銃身をはじめとして、色々な物が次々に大量生産されているのですから。
銃弾も大量生産されて溜め込まれています。)
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