484話 アメリカの保険会社
この作品は日清戦争、1894年(明治27年)7月あたりから始まりますが、保険加入者が大勢増えるのはこの
19世紀後半の事です。
産業革命により都市で働く労働者が多くなり、葬儀費用や遺族補償の問題が急増して、労働者向けの生命保険の要望が高くなったからです。
でも、イギリスでも小柄な子どもがやらされていた煙突掃除の仕事などは極めて危険で死亡率も高かった為、
そのような危険な職業の人達は入れたのか疑問がありますが。
1875年にアメリカでプルデンシャル・フレンドリー・ソサエティーが設立され少額の保険料で葬儀費用を支払う保険が作られ、1887年にカナダでは労働者向けの生命保険、現在のマニュライフ生命保険が国策で作られて広まりました。
日本では1879年に海上保険の為に東京海上保険会社が設立されていますし、
1881年には日本最古の生命保険会社の
明治生命が開業しています。
ですが、こうして入ってくる保険金を
いかに運用して増やすかが保険会社の腕の見せ所なのですが、日本もアメリカの保険会社も運用能力の高い会社は
聞いた事がありません。
保険会社は為替、先物取り引き、株や
国債など色々な運用を行いリスクを分散しているように思えますが、詳しい事は発表していません。
業界では保険屋はお公家集団だからとか言われています。
例えば、地震保険などは入らせるだけ入らせておいて、実際に関東大震災クラスの大地震が起きたら25%くらいの
保険金しか支払わない可能性があります。
これは戦争の時の被害もそうでしょう。
船に対する保険金でも万が一沈んだ場合は他の保険会社と損失補償を分担するリスク分散をしています。
ちなみに、ガン保険では生涯にガンになる確率は2人に1人なんて言っていますが、0さいの子どもが70歳までにガンにかかる確率は男性が21%で女性が19%です。
80歳までだとすると男性は41%、女性は29%にすぎません。
若い時にガン保険に入って、ガンが判明して助かる人は凄く少ないのが現実です。
日本人は保険に無頓着で保険を支払い過ぎだと言われています。
特に貯蓄にもなる高額な保険に入るのはやめておくべきでしょう。
貯蓄は別の物で自分でするべきです。
脱線してしまいましたね。
さて、ここで話すのはアメリカの多くの保険会社が倒産したりして一気に再編成が始まるという事です。
この世界大恐慌では多くのアメリカの会社が倒産しました。
アメリカ全土を経済的な大地震が何回も襲ったようなものです。
はっきり言えば、もっとも財務状況が良いはずの保険会社が次々と破綻していくのは保険会社の幹部が無能だからです。
ええ、マネーゲームの世界にどっぷりと浸ってガンガンとお金を投資して土地や株を買っていました。
そして大暴落でかなりの資産を失っていました。
この世界に出現して後発として保険会社を開設し、自社の社員の保険業務のみを受け付け、自社の船や自社の車の保険のみを受け付けている宇垣保険は規模がまだそれほどではなかった為、
外国の保険会社のリスク分散相手に選ばれていませんでした。
ので、世界大恐慌の荒波を受けずに済みました。
もう少し規模が大きかったら三菱とか他の財閥系のリスク分散相手になっていたでしょうから、多少は世界大恐慌の大波を被って濡れていたかもしれません。
いや、保険会社に酷な事を言ってしまったかもしれません。
1930年中にセントルイス、リッチモンド、アトランタなどの諸地方の銀行が
大規模に倒産しましたし、ナッシュビルの『南部最大の投資銀行』のコールドウェル商会が破産したりもしています。
ニューヨークの大規模銀行、合衆国銀行が破産。
フィラデルフィアの大規模銀行のバンカーズトラストが破産しています。
未来人ならメガバンクのような大規模な銀行が暴落から1年ちょいで破産!と驚いたでしょう。
再編成したりして、大きな銀行は潰さない政策をとって信用を積み重ねてきた日本とは違い、大きくて歴史のある銀行でも潰れる時には潰れるのがアメリカです。
これらの銀行の破産で失われた預金の金額は相当な高額でした。
つまり、日本では再編成しているので
なんのかんのと預金が取り戻せれる可能性があるのに比べて、アメリカでは全部の預金を失いかねないのですから。
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