482話 アメリカの失業者が500万人超えへ。
今は1930年の5月。
まだ6月になっていません。
全米各地で調査している宇垣のメンバーは路上生活者の人数や教会や政府の炊き出しにならぶ人達の人数を数えて
全米の失業者のおおまかな人数を割り出しましたが、軽く500万人を超えている事が判明しました。
この中の20万人はフォードとGMがクビにした労働者達です。
ネルソン・ロックフェラーの元に届いている失業者の数字もほぼ同じくらいなので、この数字は正しいのでしょう。
この数字は都市部の労働者の失業者だけの数字です。
利子を支払うだけで精一杯の破産予備軍の農家は1人も入っていません。
1番最初に出てきた失業者の数字は150万人前後というもので労働人口全体からすると3%から3.2%の間くらいの数字でした。
ですが炊き出しを行ったり、公共工事を行なっていると州予算があっという間に減っていきます。
高い場所から見ているとわかるのですが、コンサートを見にやって来た観客の様な感じから10万人コンサートにやって来たような感じに増え、
「「「いやいや、こんな人数の炊き出しなんて無理無理〜〜」」」
と言いたくなるほどの数に増えていきました。
この街だけではありません。
周辺の3つの街の同じ時間帯にも大勢のホームレスが炊き出しに並んでいるのですから。
ゾッと寒気がしてきます。
もし、暴徒になったらニューヨーク州はどうなるのか、、、
冬のニューヨークの寒さに耐えられるのでしょうか。
小規模な街にも失業者が増えて押し寄せていました。
その失業者の総数が更に増えて434万人ともなると対策予算が無くなった各州から悲鳴のような声がホワイトハウスに届いてきます。
『更に10%失業者が増えた。』となると500万人に近くなります。
434万人の時点で失業率は8.7%
今なら9%を超えるでしょう。
さて、前の大統領の政治信条は、
『好景気だからと言って、政府が必要も無く多額の税金を国民から取るのは
許されない事だ。政府は小さくあるべきだ。』でしたね。
その政治信条は立派なのですが、
大勢の路上生活者が溢れて飢えて死にそうな姿を見ると、『えっ?どこかに予算は無いの? あんなに好景気だったじゃないか?』と言いたくなります。
434万人だった失業者があっという間に
500万人に増えているのを見ると恐ろしくなってきます。
50億ドルしか流通していない紙幣ですが金に交換されて、どんどん欧州に流出しています。
今、アメリカの大恐慌のフェイズがデフレフェイズに上がりました。
より酷くなりました。
気をつけないとデフォルト(国家破産)すらありえます。
フォードもGMも稼働している工場は少ないです。
最新の工場に比べたら生産効率が悪い、初期の頃に作られた工場は売却できるのなら売却する事すら考えられている様子です。
現在動いている生産ラインは最盛期の10%以下です。
GMやゼネラル・エレクトリックも同様です。
日本には石油と交換で多額のドルが流れ込んできます。
日本は低く見積もっても4〜5%くらいは成長しそうです。
アメリカは萎みそうです。
無理もありません。
バブルバブルと言ってきましたが、
アメリカの場合、普通なら破裂しそうなところから、5倍くらい膨らんで大破裂して大量のお金が燃えたのですから。
その上でセイバー達はドルを隠匿しているのですから。
デフレに誘導してるのですから。
半年で150万人、1年後には300万人増えて失業者は800万人近くに増えそうです。
失業者向けの宿泊施設や、炊き出しも本格的に始まりましたが、なにしろ、この人数です。
4〜500万人を食べさせるというのは
アメリカ政府にとっても途轍もなく大きな負担でした。
更に仮設住宅も必要になって来ます。
アメリカの財政は急激に悪化していきました。
銀行の倒産件数も急激に増えています。
フーヴァー大統領は5億ドルを用意して
銀行の救済に乗り出しましたが、ウォール街の人々は中小の銀行どころか、
大きなビッグバンクが傾いた時の為に取っておくべきと進言してきます。
彼らも知っているのです。
保険会社も銀行も証券会社も、すべての会社が危険な状態だと。
5億ドル程度のお金だと焼石に水です。
大財閥すら、買い支えの為に億ドル単位のお金を失っています。
財閥当主が一存で動かせる手持ちの流動資金の多くを失ってしまったのは誤算でした。
1907年の経済恐慌の時は優良企業の株を買って買い支えをした事で株の暴落を止める事ができましたし、ニューヨーク市の財政破綻も資金の投入で破綻させずに済ませる事ができました。
ですが、今はもっと大規模に何度も買い支えを行なっているのに、一向に株の暴落が止まりません。
ウォール街の住人ですら理解できない事態が起きています。
それにしても、、、今のホワイトハウスはゴーレム化しており、大統領達の
言葉がこちらに筒抜けなのですが、大統領が
『なんで予算が無いんだ〜』と叫んでいるし、ニューヨーク州のような豊かな州の州知事のルーズベルトが予算集めに四苦八苦してあぶら汗を流して苦悩しているし、、、
つい最近まで好景気だったアメリカはどうなっているのでしょうか、、、
そういえば、アメリカで中規模な財閥が、この世界大恐慌の時に没落しています。
テキサスやオクラホマの石油成金達は
ほとんどが没落して消えていますし。
フーヴァー大統領も各州知事も炊き出しに力を注いでいるので失業者の餓死や凍死は事実より少なくなっているかもしれません。
でも、戦争で大儲けしたお金は何処にいったの?と言いたくなるほどに、
合衆国の政府や州が困窮しています。
現物の株は豊富に持ってはいますが、
ネルソン・ロックフェラーが株価の低下で大きな損失を出して苦悩しています。
この時代のアメリカは本当に危険な状態だったようですね。
『ガレージに2台の車、鍋には鳥の丸焼き』(フーヴァー大統領の選挙スローガン)車どころか、昨日に何も食べていない飢えた失業者が10万人。
ですからね。
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