470話 アメリカの大恐慌の理由①

アメリカの大企業は自己資本比率が高く銀行から借りずに自分のお金で買収などを行うようになりつつありました。


一方の銀行は大企業からの需要がない為、中小企業への貸し付けがメインになり、不動産担保貸し付けや証券担保貸し付けを行い始めましたが、

儲かる為不動産投資や証券投資にお金をつぎ込むようになっていきました。


中小企業への貸し付けはともかく、

不動産担保の貸し付けはフロリダでの別荘バブルの原因にもなりましたし、証券担保貸し付けは今回の暴落によって多くが額面割れになり、追加の担保が銀行によって要求される事になりました。


そして投資会社の設立などにも多額の資金を貸し付けていたのですがそちらも燃え上がり始めます。

(日本のバブル期のように中小企業への投資も株や土地へ投資に化けたりしていました。その日の朝より夜の方が

土地の価格が高い為、1日に何回も売り買いされるような凄い状態になっていました。)


日本のバブル期にも行われていましたが、銀行は自分勝手に迷惑行為をしていました。

押し貸しや貸し剥がしです。


銀行は必要がない時、晴れている時に傘を押し付けてきて、雨が降ってきたら傘を取り上げると言われていますが、別に借りたくないのに『儲かるんだからお金を借りて株を買いましょう』といい『株を担保にすれば更に借りれますよ!』と言って担保をちゃんと取りつつ、『株は上がるんだからもっと株を買うべきですよ』と言って押し付けるように貸して来て、株が暴落すると全財産を奪おうとしてきます。


テレビドラマの半沢直樹の中にも銀行に貸し剥がしをされてる工場エピソードがありましたっけ。


マスゴミも一斉に煽って、今は株に投資をするべきだと言っていました。

大国アメリカのフロリダ州といえども、大量に資金が流れ込めばすぐに土地は足りなくなります。


まぁ、『冬は凍えるように寒いニューヨークなどの北部に比べて楽園のように温かいフロリダの別荘を!』なんて煽ってましたけど台風で大災害が出て

フロリダの別荘ブームは大爆死するんですけどね。


前に好景気なのに農業州を中心に5700行もの銀行が倒産している事実をお伝えしましたが、農作物を増産する為に農地と家を担保にして機械をローンで導入したけど、農作物の価格は増産されてしまったので、買い取り価格が下がる一方でローンの支払いに苦しみ、農家の借金は増えるばかりといったマイナスのスパイラルに入ってしまいました。


こうして多くの農家が負債を増やしてしまい、銀行も倒産が増える結果になって行きました。


これなんかも農家の主人が気弱だったり、計算が苦手だったりすると、いかにも機械を導入すれば良いように思わせて1人を口説き落とし、ご近所さんには「○○さんは機械を導入しましたよ。貴方も機械を導入しないと」

と口説いて大勢の農民にお金を高い利息で借りさせる事をしていました。

なんせ、景気が良い時は金利も高いのがあたりまえです。

なので利息を支払うので精一杯な極貧の農家が多くなっていました。



そして、銀行が融資した投資会社の経営も株の暴落と共に上手く行かなくなり、証券担保貸し付けも上手くいかなくなりました。


貸し付け相手に破産されてしまっては

それ以上の取り立てはできません。


更に、この当時のアメリカでは証拠金による株取引が行われていました。

これは25%前後の証拠金を入れると株が買えるという取り引きのやり方です。

25ドルの証拠金で100ドルの。

250ドルの証拠金で1000ドルの株が買えます。

株は値上がりするのを前提にしている

ビジネスモデルの取り引きなので、

このビジネスは大暴落で一気に上手くいかなくなり、焦げつきます。


ええ。この当時のアメリカのビジネスは株価が上がる事を前提にしているビジネスばかり。

上場されている全部の株が大幅に下落すると大火事になり焼け野原になってしまいます。



そして連邦準備銀行は金融引き締めに

舵を取り始めます。


どっちの方角に進もうと氷山に追突する事が確定しているタイタニック号のような状態のアメリカですが、ろくに減速できずにハードに当たって大穴が開いてしまいました。


いや、艦首と右舷と左舷に大穴が3ヶ所も開いたという悲惨さです。


日本などの他の国では世界大戦が終わっての不況はすでに経験して調整も終わっているのに、アメリカではバブルが膨らみに膨らんで一気に大破裂してしまいました。


何らかの形でソフトランディングを目指せば良かったのですが、膨らみに膨らんだ上、空気を入れるポンプはフル稼働してお金を送り込んでいました。


ええ。実態の経済とはかけ離れている

数字に膨らんでの大破裂です。

このまま成長すればと思って、どこの企業も資本を投資していました。


大爆発と同時にお金が燃えて目の前で

大量に燃え尽きて消えていきます。


この時代は『金本位制の時代』であり、アメリカが保有している金の量によって発行していいお金の量が決定されています。


その金額は50億ドル。


発行している現金はたったの50億ドルです。


つい最近、セイバーが儲けた金額の半額でしかありません。



例えばフォードやGMはもっと車が売れると思って大規模な工場の建設をしていましたし、アメリカの全部の製造業が同じように製造設備に投資していま

した。

ですが、これは過剰な設備投資でした。

自動車の数はすでに飽和していました。

フォードさんもデュラントさんも

頭が冷め始めていて、冷静さを取り戻しています。

フォードは大規模ないくつもの工場に13万人もの工員を働かさせて3交代制で大量に自動車を製造させていました。

作れば作っただけ売れると思っていたのですが、自分の愚かさに唖然とするフォードさんなのでした。


こうしている間にもフォードの工場では自動車の在庫が増えています。


売れなければ不良在庫です。


しかもモデルTはフルモデルチェンジされて新型のモデルAが出ているので、

旧型になってしまいました。


末端の行き渡っていないところになら

売れるでしょうが、僅かな顧客の為にサービス体制を整えるのは大きなマイナスです。


世界大恐慌の時の事を悪夢の時代だと

フォード社の幹部は言います。

何もかもが順調で追い風が吹いていたのに、いきなりの逆風です。


しかも、高級車市場には宇垣マーク1やマーク1リムジン。

普通乗用車と小型トラック市場にはミゼットという強敵が出現していました。

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