457話 暴落はまだ序盤だった。
セイバーも宇垣昌弘も未来知識は持っていました。
ですが、今回、アメリカの株価は史上最高値に近いところから大暴落したとはいえ、ダウ平均株価は17%ほどの下落でした。
いや、リーマンショックとかと同じくらいの大暴落ではあるので、かなりの大暴落なのですが。
ですが、USスチールなどの業績が好調なアメリカを代表する大企業の株すらも、多数の売り圧力の前になすすべなく大暴落したのはアメリカの経済界にショックを与えました。
なんせ、上場している大企業の株が全面的に売られているのですから。
それにしても最高値の時の30%、
7割引価格で金額を指定して買い注文を
やってみたのですが取り引きが成立した事に驚きました。
それも多くの資産を持っている超優良企業のフォード自動車やゼネラル・モータースの株が最高値の半分でも買われる事なく売られています。
『『『"(;゚д゚)!?!?" デュランドさんは知ってんのか? ありえないだろ!』』』
実は、デュランドさんもフォードさんも持っている莫大な資金を生かして、株価防衛戦争を繰り広げていました。
ですが、その防衛ラインは最高値時代のおおよそ45%の半額のちょい下ライン。
矢がつき、剣や槍が折れて、
「もう、どうしようもない。諦めよう。」と彼らは絶望していました。
ですが、その犠牲は無駄ではありませんでした。
フォードとGMの株の下げ圧力は少なくなっていき、31%ほどの値段になったところでセイバー達の持つ巨額の資産が投入されて買われていったのです。
なるべく下がった状態で買いたかったのですが、5000万ドル程度のお金で下落が止まりました。
セイバー達の目利きは的中しました。
「「「どん底の底まで落ちたぞ!!!」」」
ここ、4年は好景気でここまでの下落はありませんでしたが、アメリカにも底まで下がったら優良な株を買うチャンスだと投資家が待ち構えて狙っていました。
どん底に下がった時こそ、美味い肉がたっぷりと食える買いのチャンス。
安値で優良株が買えるチャンスです。
セイバー達だけでなく、チャンスを待っていたアメリカ人の投資家やバイヤーが一斉に買い始めました。
急激に上昇し始めるフォードとGMの自動車関連企業の株でしたが、『『『よし!行ける!!!』』』とセイバー達はより多くの優良なアメリカ企業の株に200億ドルを全面投資するとピタっと下げ圧力が止まり、多くのアメリカ株が上昇し始めます。
『『『間違いないな。 こうして株式が乱高下しているが、まだチャンスはある!』』』
とセイバー達は納得していますが、超優良企業でも手持ち資金での買い支えに失敗して巨額の損失を出している企業があるからか、予知能力は『売って利益を確定しろ。』と囁いてきます。
セイバーは予知能力の囁きに素直にしたがって利益を確定させていったのですが、『大規模保険会社、大規模銀行、他の証券会社の株は早く利益を確定しろ。』と予知能力が教えてくれるのです。
中にはどん底の時でも『あまり買うな』と予知能力が囁いてくる株もありました。
これって、この企業は損失が多く、企業価値が少ないという事なのでしょうか?
この時点で株価防衛に失敗して多額の資金を失った企業は多く、ネルソン・ロックフェラーですら把握ができていませんし、多くの証券会社でも右往左往しているばかりでした。
当事者の企業の幹部は自分の企業の損失はなんとか把握できていますが、
把握できていない損失もあるので、
現時点のアメリカの損失の総額を知る者は誰もいないでしょう。
ロックフェラー家を盗聴できているのなら、安心だと思っていたんですがねえ。
無論、大統領も商務長官も誰も現時点ではアメリカの損失の多さを知りません。
この世界で現時点のアメリカの経済をもっとも知っているのはセイバーでしょう。
ですが、予知能力が多くのアメリカの銀行に投資をするなと言っているという事は、この時点でかなりの損失を出して危ないという事です。
日本の銀行に投資しようとすると、
それほど危機感は予知能力は感じていません。
『『『まさかとは思うが、この時点でアメリカの銀行の内部事情は火の車だって事か!!』』』
もっと値上がりすると思って、とんでもない金額を株に投資していたアメリカ企業。
ですが、未来知識持ちのセイバー達は
投資の神様のウォーレン・バフェットの投資法を参考にして投資していましたし、予知能力のおかげで損失もありません。
アメリカ企業はこの大暴落で巨額の損失を出し、あれほど業績が好調だったのに金銭的体力を失っています。
前に『ロックフェラー家は大財閥なので妬まれており、大勢のアメリカ国民が株の大暴落で損失を出しているのだから、お付き合いとして形だけでもそれなりの金額を使って株を買い支えてアメリカを助けていると示さなければならない。』と書きましたが、
それはフォードやGMも、USスチールなどのアメリカを代表する様な大企業も同じなのです。
『株主が大暴落で大損しているのに自社の株を買い支えようとしないとは!』と、株主達から憎悪されるのは避けなければいけません。
デュラントさんもフォードさんも財界の大物なだけに、形だけでも買い支えなければいけなかったのです。
無論、株価が上がれば儲けられるとも思ってもいましたし、そろそろ底が近いと思っていました。
ですが、セイバーのように紛れもない底値でズバッと買えて、絶妙なタイミングで売り抜けて儲ける事ができたのは極少数でした。
多くのアメリカ企業が損失を出したと思われます。
その損失は300億ドル前後だとも言われています。
そして世界大恐慌の本番はこれからです。
これは第1の下落の波に過ぎません。
利益を確定して100億ドルほど、更に儲けたセイバー達ですが疲労していました。
銀行、証券、保険会社の株を売って利益を確定した時は売るタイミングの見極めに神経を使いました。
この株価も小康状態を保っているだけです。
作者注、イケイケドンドンで巨大な企業に成長したフォード自動車ですが、
ゼネラルモータースとの競争に勝つ為に1台あたりの値段を常に下げているので、1台あたりの販売の利益率は少ないです。
常に多額の設備投資もしています。
大暴落前は財務内容も良く、素晴らしい企業でしたが、ここで多額の現金資産を失っているので今は危険な状態になっています。
急激に財務内容が悪くなっています。
特に株に詳しい専門家のゼネラル・モータースのデュランドさんは、
『部下が何と言ってこようと無視して底値に下がるまで買い支えようとせずに、底値で買って利益を確定して更に現金を持っておくべきだった。』と
悔しがっていました。
ここで巨額の金銭を失った事はゼネラル・モータースにおいてこれから厳しくなるかもしれません。
ゼネラルモータースの場合、自動車関連の優良企業の買収に銀行からお金を借りて買収し過ぎていたので、株の資産は豊富に持っていましたが、手持ちの現金資産は少なめだったので、フォードよりも更に厳しい状態です。
両社とも今の自動車の売り上げがそのまま続くと思って事業計画を練っていました。
超優良企業に見えるフォードやゼネラルモータースすら、こうなってしまっているのです。
株式とか工場とか手持ちの資産はありますけどね。
本来ならパパケネディさん達などの人達が儲けたはずの暴落時の利益ですが、またもセイバー達が利益を奪ってしまいました。
この株の大暴落は確かに序盤に過ぎないのですが、その被害は少なくありませんでした。
ちなみに宇垣昌弘なら準備が遅れたと
言いつつ底値で株を買って儲けて現金を手に入れたでしょう。
買い支えなんて愚かだと思っています。
ここが序盤の底値になり、上がったり下がったりの乱高下が始まります。
ですが、株はもっと上がると思って、持っている株を担保にしてお金を借りて株を買っていた人間にとっては地獄の始まりです。
担保の株の価値が100万ドルから30万ドルに下がったから、70万ドルの株か債権を追加してくださいと言われても
そんな物はありません。
大勢のアメリカの個人投資家もお金を失いました。
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