452話 憎しみが山東半島を覆う。(1929)

大都市北京への海の出入り口の天津にせよ、魔都上海と並ぶほど腐敗した街

と言われる青島にせよ、日本とも因縁が深い土地です。


チャイナのナショナリズムを燃え上がらせた対華21カ条要求(1915)ですが、日本からお金を手に入れて軍事費にして他の軍閥を倒して中国統一を成し遂げようとする中国の軍閥に対して、現時点の日本の権益を阻害するなよと約束させようとした条約と言えなくもありません。


青島の租界に関しても、その時実際に支配していたのは日本ですし。


1927年の南京での虐殺を見てもわかりますが、外国の領事館すら全然守ろうとしない中国の軍閥に対して、こちらはお金を渡しているスポンサーなんだから、ちゃんと条約や権益を守れと約束させようとするのは当然の事でしょう。

なにせ秘密交渉に出した要求なのですから。

相手は日本からお金を貰っている北洋軍閥であり、軍隊であり、中国政府と言ってはいましたが、各省の軍が合流した軍閥の集合体でした。


日本側が日本人の政治顧問、財政顧問、警察顧問を置くように要求したのも、お目付け役を置いて制御しないと

袁世凱は勝手に政治や外交を行い、

勝手にお金を自分の物にして着服し、

日本人居留民に危険が迫っても警察を動かして守ろうとしないなどが起こりかねないからであると言えます。


中国人はそういう自分勝手な人間ばかりで、まったく信用できないと、

日本は何度も思い知らされます。


まぁ、当時は第一次世界大戦の真っ最中であり、ドイツがチャイナにおいて

保持していた利権はドイツから手に入れた日本が受け継ぐのは当然だと日本が言う気持ちは理解できます。


チャイナが利権を返せと言うのなら、

ドイツに宣戦布告して攻撃してドイツから利権を取り戻せばいいのです。


それができないのに、血を流さずに返せと言うから揉める事になる。


それに辛亥革命(1911〜1912)は起きてはいたものの、中華民国中央政府と日本政府とは正式に外交条約を結んでいませんでした。


過去の清国との間で結ばれた外交条約を中華民国側が受け継ぐのかどうなのかは不鮮明でした。

だから日本側ははっきりしろと迫ったのです。


日本側が、その時に持っていた権益は

持たせてもらう。と言っているだけで、これを寄越せとチャイナ側から奪おうとはしていない。

大連や旅順などの租借の期間は伸ばそうとしていますが。



ともあれ、山東半島や天津は日本にとっても因縁がある土地だった。

まだ、青島や天津租界にゴーレム達は居るが、日本人居留民は居ないので虐殺は起きないだろう。

嬉しい限りだ。ゴーレム達なら反撃できるし転移で即座に帰国できる。


その山東半島だが、匪賊集団が大勢いて外国勢力が支配地域を広げようとすると争いが絶えない統治が困難な土地でした。


その事は集結した多国籍艦隊も周知の事実であり、そこそこの規模の山東半島の港街に対して戦艦の砲撃が行われようとしていました。

山東省の匪賊に対しての示威行為です。


本当なら各国は南京の市街地を戦艦の艦砲で焼きたかったのですが南京まで戦艦は俎上できません。

巡洋艦なら行けるのですが。


イギリス、アメリカ、フランス、イタリアはそれなりの規模の街を焼く映像が欲しかったようです。


もちろん、日本の金剛級達も参加します。


それにしても、イギリスの「ベンボウ」「マールバラ」「アイアン・デューク」「エンペラー・オブ・インディア」はアイアン・デューク級であり、

4隻で34.3cm砲40門。

「タイガー」はアイアン・デューク級の巡洋戦艦バージョンで、34.3cm砲8門であるからイギリス戦艦だけで48門もの34.3cm砲が斉射される事になります。


アメリカの「ユタ」「フロリダ」はフロリダ級戦艦であり30.5cm砲10門搭載しています。

「ワイオミング」はワイオミング級戦艦であり、30.5cm連装砲塔を6基12門搭載しています。

ユタ級より大型化され、当初は35.6cm砲を8門搭載する戦艦になる予定だったのですが、砲の開発が遅れて30.5cm砲を6基搭載する戦艦として完成しました。

砲塔の配置は日本の伊勢型と同じような配置の仕方です。


だが、3番、4番砲塔と5番、6番砲塔の間に後部艦橋は無くスッキリしています。

アメリカ側の3隻は30.5cm砲32門です。


それに日本の金剛級4隻の35.6cm砲32門、

フランスのブルターニュ級3隻の

34cm砲30門、

イタリアのコンテ・デ・カブール級3隻の32cm砲30門も攻撃に参加するのだからオーバーキルですねえ。


イギリスの34.3cm砲48門。


アメリカの30.5cm砲32門。


日本の35.6cm砲32門。


フランスの34cm砲30門。


イタリアの32cm砲30門。


これらの主砲が各国ごとに斉射されるとあっという間に中国の港街は砲撃で吹き飛ばされて、炎に包まれました。


破壊するにしても、やはり中国の小さな街では映像として物足りない。


南京や上海のような大都市ならば、

南京で被害に遭った各国の鬱憤も晴れるのにと、連中は思っています。


こうして反抗的という理由で山東半島の港街が次々に砲撃されて焼かれていきました。


焼かれた理由は海賊の拠点があったからだと言われています。


まぁ、山東半島は匪賊が多い土地なだけに納得もできるか、、、


アメリカはこれでも足りないと南京に巡洋艦の艦隊を集結させて市街地の砲撃を画策します。


白人の被害者が大勢出たとはいえ、

アメリカ軍の復讐心の強さには驚かされますね。


南京を防衛していたアメリカ陸軍の連隊が壊滅したのが、それほど許せなかったのでしょうか。


なんだか、史実のアメリカが日本やドイツにやった爆撃や攻撃の事を思い出してしまいますね。


いや、今まで中国で、義和団の乱や色々な騒乱があって、少なくない白人が殺されていました。


フーヴァー大統領も荒れているチャイナに居た人ですし。


と、ゴーレム達は攻撃計画を主導したアメリカ海軍は大統領からの命令なのかと思っていたのだが、アメリカの陸軍と海軍の一存で作戦は行われていました。


アメリカ、イギリス、欧州各国の新聞は『南京の仇撃ちだ!!』と新聞に書き立てて大喜びしていました。


チャイナの排外運動は何度も続いており、各国は怒っていました。


南京でも宣教師が殺されていますが、

クリスチャンの迫害も酷いものでした。

山東半島では義賊達の力が強いので

教会の建設やキリスト教信者の増加が

全然進みません。


だから焼かれたのかもしれません。

そして、これらの港街を焼けば青島の租界の麻薬利権にとっては追い風です。


そして戦艦の艦砲射撃の映像は映画館で速報ニュースとして流されて観客を沸かせました。

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