449話 集結する欧州艦隊。(1929照和)

あの南京で暴徒が行った領事館襲撃と虐殺に欧州各国は大激怒していた。

マスコミや世論も怒りが収まらない状態だった。

(各国の世論の怒りが冷めないように

ゴーレム達が煽っていたのだ。)


他国の領事館を守るのは、その国の義務である事を中国国民党政府はまったくわかっていなかった。


日本でも他国でも自国の国内にある大使館や領事館を守るのは当然だと思っている。


まぁ、中華民国が1912年に建国して

清国を倒してはいるが、いまだに統一できていないのだ。

(武漢の近辺は中国共産党や汪兆銘の支配下だし、北京近辺は北洋軍閥の支配下だし。)


だが欧州各国にとっては知ったこっちゃないとも言える。

大都市にある大使館&領事館周辺くらいの治安は守って見せろと言いたくもなるだろう。

そこの警察は何をやっているのかと言いたいのだ。


それに南京といえば中国国内でベスト3に入る大都市。

首都だった事もある。

あの時は近くに蒋介石の軍隊がいたのに、まったく守ろうとしないのだから

怒るのが当然だ。


各国とも中華民国国内の大使館や領事館の警備体制を強化していたが、米英が戦艦を中華民国に派遣して艦砲射撃を行う計画を発表するとフランス、イタリア、オランダ、スペインなどの被害国が参加を表明してきた。

被害者が出ているデンマークやスウェーデンも派遣できる軍艦があればと悔しがっている。

特にスウェーデンは有力な海軍は持っており、海防戦艦も保有はしていたが、さすがに中国に派遣出来るほどの

航海能力は持ってはいない。

自国の防衛の為の軍艦だ。

海防戦艦と言っても基準排水量も8000トン以下だし、、、


アメリカ国内での株価の大暴落は止まってはいない。

欧州各国でも経済は酷い有り様なだけに各国政府は支持率を上げる人気取り政策を必要としていたのである。


これらの国は北京に大使館をまだ維持しており、北京大使館の安全に不安をいだいていた。(日本は閉めていた。)


国民党政府が再度謝罪を行い、暴徒が各国の大使館を取り囲んだりしたら、即座に警官隊を派遣して各国の大使館や領事館は絶対に守ると確約すれば、

主要国以外の国は軍艦の派遣を中止するかもしれなかったが、、、


この時の各国の状況だが、米英フランス、イタリアはやる気満々であり、戦艦を派遣している。


オランダはずっと日本とも交易していたし中国の事はよく知っているので、

巡洋艦くらいは派遣して脅かしておこうと決意したようだった。


スペインも防護巡洋艦を一隻派遣している。

被害各国は中華民国から賠償金は受け取ってはいるが世論の怒りは収まってはいなかったからだ。



1916年に袁世凱が死亡して清王朝が一時的に回復したりで中国国内は混乱の時代が続いていた。

1919年に孫文が中国国民党を設立したものの、孫文は1925年に死亡しており、現在は北洋軍閥の北京政府と蒋介石の国民政府と汪兆銘の武漢国民政府と中国共産党と地方軍閥に分裂している時代だった。

そう。支配面積は蒋介石の国民政府が

1番大きかったかもしれないが、支配地域の確定すらされていない有り様だったのだ。


欧州各国とアメリカは、未開の蛮族には大砲を撃って恐怖させるのが一番効果的だと思っている。


まず、フランスだがトンキン湾周辺を勇躍させながら陸上からのフランス軍の進撃に合わせてチャイナ沿岸を砲撃して脅かすつもりらしい。


他国は海南島近辺から沿岸部を砲撃して脅かして、まずはマカオや香港に停泊する計画のようだ。


中国沿岸の地方政府が各国に頭を下げて謝罪し、各国の要求を大人しく聞くのなら砲撃しないが、従わないのなら容赦せずに砲撃するつもりのようだ。


廈門、福州、温州などの各地の反応を確かめつつ上海周辺を砲撃しつつ青島へ向かうつもりらしい。


青島を脅かしつつ天津や大連の周辺の中国人スラムを吹き飛ばす計画のようだった。

中国人の連中は仕事や治安の良さを求めているので、いくらバラック小屋を壊しても中国人は集まって来てスラムを作り始める。


元は南京市街があったインド租界周辺にもスラムができ始めており、スラム街対策が課題になっている。


だが西洋人達は気がついていない。


不気味に思うのも当然だ。

中国人もただで殺されているわけではない。

強風の吹いている日に至近距離から一斉に放火しないと放火戦法は効果が低いとわかっているから、怒りを隠しながらインド租界や各地の租界の近くに迫り続けているのだ。


中国各地の関帝廟には関羽の後方に毒矢戦法で大勝利した李書文の像が飾られ英雄として尊崇されている。


後方では弓矢の訓練が着々と行われており、中国人達は『インド人は殺せ』『英国人は殺せ』『米国人は殺せ』と唱えるようになりつつあった。


毒が塗られた矢はかすり傷でも死亡率が高く、インド人や米英軍側も中国人に対して激怒しており、殺す事を何とも思わずに憎んで殺すようになっていた。

憎しみの連鎖は続く。



なお、味方の軍艦の砲撃の援護があるにしても、暴徒が大勢いる中国の街の中に入り、襲われている領事館や租界を守るには最低でも巡洋艦2〜3隻、陸戦隊の人数は500名は必要である。


あまり軍事知識のない政府は巡洋艦を派遣すればかなりの戦力になると思っているが、できれば陸戦隊は出したくないと思っている海軍側とは温度差がある。

陸軍1個大隊くらいは輸送船に載せて一緒に派遣してくれと海軍は思っているのだった。


毒矢が使われ始めて以降、チャイナの治安は1ランク下がったと各国では発表され、準戦争国と見なされている。


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