436話 そして始まった大恐慌本番。

モルガンやロックフェラーは度々株式の暴落に介入し買い支えようとの姿勢は見せていた。


だが、恐ろしい事に、まったく株価は

上がろうとせずに、僅かに上がって急降下していき奈落の底に向けて下げて行った。


世界大恐慌のきっかけになったアメリカの株価の大暴落のチャートをそのままなぞっているかのような暴落の仕方だった。

シカゴやニューヨークのバッファローの証券取引所は閉鎖されており、開く気配を見せていなかった。


セイバーや新しい成功者のゴーレム達はすでに株式を売り抜けていたのだが、急速に悪化していくアメリカ経済の状況に身体の震えが止まらなかった。


不安材料はあれども、株購入が加熱していたバブル景気だったアメリカのダウ平均が急降下している。


未来知識の保持者のゴーレム達は日本のバブル崩壊の時のように、ニューヨークのダウ平均株価も最高金額を記録した後に調整局面を迎えるのでは?と

思っていた。


現時点のアメリカの連邦準備制度の公定歩合は高めだったが、もう少し上がってから暴落開始だと思っていたのだが、、、


彼らは『事前準備が必要にしても1年以上前から手仕舞いの準備をするなんて、ほんと俺たちは心配症だよな。』と苦笑していたのだ。


だが宇垣の存在は大きな変化をもたらしている。

これほどのエネルギー不足が経済に悪影響を与えないわけがない。

産油国だったアメリカのガソリンの価格は産油国価格で安かったが、今や産油国価格というより輸入国価格になろうとしている。

(ちなみに湾岸戦争時のイラクのガソリン価格は5〜10円。ガソリン販売価格というより保管手数料のようなものだ。水の方が高い。)


モルガン家やロックフェラー家には全米の詳しい情報が入っているのだが、超巨大ゴーレムがゴーレムコアをモルガンとロックフェラーの屋敷に取り付けて、御屋敷がゴーレム化している為、すべての情報は超巨大ゴーレムネットワークに筒抜けになっていた。


モルガン・スタンレーなどの名門投資銀行もゴーレム化している。


宇垣昌弘もその情報を聞き絶句していたのだが、アメリカの保険、銀行、証券会社が大金を投じてマネーゲームに興じていた為、株価の下落によって恐ろしい勢いで損失が膨らんでいた。


ロックフェラー家やモルガン家の上の方では、『いい加減、株価は加熱し過ぎている。上がり過ぎているから、下がってもおかしくない。』と調整局面に入る事を懸念していたのだが、そのロックフェラーやモルガンの一族にも株に大金をかけていて大損をして真っ青になっている人間が大勢出て来ていて、危険だろうと思って株を止めていた人達を驚かせていた。


彼らはロックフェラー家やモルガン家なら大暴落しそうな時がわかるだろうから、ギリギリまで株で儲けて、いざとなったら空売りして更に儲けようと

思っていたらしい。

それが、何らかの予兆無き大暴落である。まさかロックフェラー家でも暴落の予兆が掴めないとは思ってもいなかったのだ。


ネルソン・ロックフェラーは言葉が出て来なかった。

幸いな事に、彼が認めている後継者達やその下の後継者候補達に株で大損して顔面蒼白になっている愚か者はいなかったが、まわりにいた一族の人間の中には少なからず、大損している人間が居たからだ。

いや、中枢にいる一族の人間は経済指標の急激な悪化や多くの企業の業績の悪化には真っ青になっていたが、、、


ネルソンも報告を上げてくる大勢の人間が居る場所では本音は話せない。


実際に動いている息子達には『私は全力で買い支えろ』と言うが銀行や証券会社を助けるのには実弾(お金)が必要だ。買い支える動きはパフォーマンスでいい。

とやるべき事を語っていた。


損切りをして早く決断をしておかないと、中枢企業すら守れない。


もちろん、株式が暴落した分の時価総額の財産は減ってはいるが、アメリカの大財閥はまだそれほど大恐慌で現金を減らしていない。


モルガンにせよ、ロックフェラーにせよ、今のところは上手く大恐慌の荒波を乗り越えて居るのだ。


これから多くの会社や銀行や証券会社や保険会社が倒産するだろう。

銀行の取り付け騒ぎも起きるだろう。


恐慌が起きるとしたら、『これからが本番だろうな。』と彼は思っていたのだが、ネルソンの予測を裏切って株価は下がり続けており、彼をも絶句させる事になる。


なんせ未来知識を持つ宇垣昌弘達ですら驚くほどの勢いでの暴落の仕方なのだから無理もない。


特に新聞で株式の大暴落が報道された後の売り圧力の凄さは言葉で説明する事が困難だ。

アメリカのダウ平均株価は1924年から

投機の基金によって4倍に上昇していた。

この上昇分はある意味バブルと言える

投機による株価高騰部分だった。


1200万株を超える売り注文が出たの

だから史実の大恐慌の時と同様の事が

起きている。


超巨大ダムの三峡ダムが崩壊したら

とんでもない大惨事になると言われているが、この株価大暴落による世界恐慌の発生も相当な災いになりそうだなと宇垣昌弘は思っていた。


なんせ世界全体のGDPが大幅に下落するのだから。

史実は15%だが、果たして?

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