391話 おかえりなさい。(1927照和)

南京の日本領事館に立て篭もり、100名の外国人避難民を保護して日本領事館を守り通して避難民を守った150名の英雄達が帰国しました。


いずれも屈強な体格で180cmくらいの大男で美男子ばかりと言う事で、日本中で大人気になってしまいました。

その中でも隊長格の『森可成』は日本中を講演する事になり泣きそうな表情でした。

なんせ公演は苦手なので。


名前でわかるように昌弘が気に入っている武将の名前を貰った人型ゴーレムは昌弘の側近です。

その分仕事も割り振られ易いという困り事もあるということです。


ともあれ、その森可成(もりよしなり)も今日は休みでマスターの昌弘から褒められる日なので誇らしそうです。


彼がしみじみとした口調で話始めました。

『我々は立て篭もるべく準備をしていました。人は1人も居らず仲間だけなので建物や塀などへの強化魔法なども使い易かったです。』


『そうして立て篭もる準備が整って窓にも鉄板を溶接し、不要なドアも溶接したり固定した上で内側からも塞いでいると、欧州人の避難民達や領事館の人がやって来ました。


まだこんなに居たのかと驚きましたが、避難民達は助けを求めて、ようやく南京にたどり着いた人々も居て、その人達は服は汚れて疲れ果ててました。』


『籠城に備えて食糧を用意しておいて良かったと思いました。

缶詰めのシチューとピザ釜で焼いたパンを避難民には食べて貰いました。』


『避難民を奥に避難させると、すぐに中国の軍人らしき人間が現れて「中に入れろ」と言ってきたので、

『日本領事館内は日本国の領土であり、入れるか入れないかは我々が判断する。』と言い、門が開かないように内側に積んだ土嚢が動かされないように威嚇しました。

門は開けられないように何重にもロックしました。』


「見事な籠城準備だな!よくやった。」


『ありがとうございます。』


『その軍人らしき男達は「入れろ」と怒鳴ってましたが男達の後ろには暴徒の集団が居ましたし、到底門を開けられる状態ではありません。

『お前1人だけなら入れてやる。梯子を出してやるから塀の上に登ってこい。』と言うと塀の上に上がろうとしません。

「門を開けろ」と言うばかりで、何故入ってきたいのか理由も言いません。

その軍服の男達は銃剣を付けた38式騎兵銃を突きつけると去って行きました。

その後ろの群衆は『日英帝国主義打倒』とか怒鳴っていたようでした。』


『入って来ようとしたら撃つ』

と言い威嚇射撃をすると群衆も怯んだ様子でしたが興奮していました。

我々は領事館の中に入って、銃眼の中から外を監視しつつ、守りを堅めました。』


『思ったのですが、皆、コルトガバメント(1911)拳銃を持っていて良かったと思いました。

38式騎兵銃はボルトアクションですから連射ができません。

多人数を相手にする時は連射できる短機関銃が必要だと思いました。威力は近距離なら拳銃弾の45口径で充分ですし。』

『それか、連射できるショットガンが必要だと思いました。』

『本音を言えば重機関銃を8丁とか、自動小銃が欲しかったです。』


『南京城内は銃声もするし怒鳴り声もするし、混乱していました。』

『少しすると興奮した群衆が現れて、

「殺せ!殺せ!皆殺しだ!」と叫んでいました。』


『門を開けようとする群衆がいたので威嚇射撃をすると、もっと興奮して門を壊そうとし始めたので男に向けて射撃しました。』

『それからは大混乱でした。

塀を乗り越えようとする群衆を撃ち、

群衆の頭上で爆発するように調節して手榴弾を投げているのですが、大勢が死んだり負傷してるはずなのに、何度も押し寄せてくるのです。』


「報告は聞いているよ。

その群衆の中には武器や爆発物や手榴弾を隠し持っていた便衣兵が混ざって居たらしいな。」


『普通の群衆では無いと思っていました。

普通の群衆なら撃たれたり、手榴弾を投げられたら逃げるでしょうから。それに人数が多過ぎました。』


『そして我々は錬金工場で、発射する装薬を減らして発射の反動を少なくした重擲弾を発射するグレネードランチャーを作りました。

それを2階から見下ろして群衆に撃ち込みました。

でも、群衆がいなくなって少しすると、また群衆が集まってきます。

何百もの興奮した群衆が何回もやって来ました。』

『連続射撃するので我々の38式騎兵銃の銃身は焼けて危険な状態になったので冷却魔法で冷却したり、予備の銃に交換したりしながら銃を撃ち続けました。』


「なるほどな。中国に建設する日本の領事館は要塞化するべきだな。

弾薬も充分に備蓄しなくては。

領事館だが、小銃を30丁ほど置いていただけだったらしいぞ。

それに警備兵や警察官の人数も少なかったらしい。

それでは保護を求めてやって来た日本人を守れないだろうな。」


何度も波状攻撃してきて武器を隠し持つ便衣兵にはこれからアメリカ、英国、欧州の各国も悩む事になります。


軍服を着ていない人間が攻撃してくるのですから。


その後、米英日軍の艦船による砲撃が行われて、南京城内から暴徒は逃げ出して、米英日軍の陸戦隊が人質になっていた人達を救おうと南京城の中に入って来て、日本軍も避難民を外に出して、イギリスとアメリカの巡洋艦に届ける事ができました。

アメリカかイギリスの艦船に乗れば、

香港か上海経由で帰国できるでしょう。

避難民からは凄く感謝されるのでした。


そして、米英の兵士からは、『日本は海兵隊のような組織を作ったのか?

精鋭部隊に見えるが、、、』

と見られるのでした。


なぜなら巡洋艦であっても、それほど多くの小銃を搭載してはいません。

大型船とはいえ1隻あたり300丁もの小銃と武器弾薬を持っているとは、陸戦も考えている船舶なのか?と不思議に思ったのです。


その後、死んだ群衆は1万人を超えていそうだと推計されました。

各国の領事館を襲えば大金が手に入るぞとの噂が流れていたので貧しい民衆も多数が参加して暴徒になって略奪をしていたとか。


南京の貧民街の人間が何千人も襲って来ては他の領事館はひとたまりも無かったでしょう。


籠城が成功して助かったのは武器弾薬を豊富に持ち精鋭部隊で守りを堅めていた日本領事館だけでした。

他の領事館は全員が虐殺されていました。

こういう混乱した状態だと多くの民衆が泥棒しようと押し寄せてきて、興奮状態になって虐殺や強姦が始まるのが

清朝末期から中華民国時代の普通の光景です。


南京城外でも暴動状態になって混乱していたようです。

なんとか避難民を守って脱出に成功しましたが、米英軍もそれほど多くの兵士を派遣できたわけではなく、南京周辺は混乱状態が続きます。

混乱が回復するのは米英軍の規模が5000名を超えてからでしょう。

その時には南京は荒れ果てていました。


そして蒋介石軍は全然領事館を守ろうとせず、治安を回復しようとせず、暴徒に領事館を襲わせて高みの見物していたのですから、罪は重いと言えるでしょう。

指揮官を選んだのは蒋介石ですから

指揮官の任命責任があります。


なんせ、当時の南京は中国で1番の規模の大都会。

そこを占領する事を任された軍隊の司令官ともなると各国の領事館などへの外交交渉も任される責任ある立場ですから。

その程潜司令官の目の前で列強各国の領事館が襲撃されて中の人間が虐殺されているのに止めないというのはあり得ません。


日本は『虐殺を止めようとした、領事館を守ろうとした国民党の軍人は1人もいなかった。』と言い続けます。


それどころか、『国民党の軍人が執拗に門を開けろと迫ってきて、領事館を襲撃する手助けをしていた。』

と生き残った日本兵がはっきりと証言したので諸外国は激怒します。

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