382話 海軍幹部を乗せて。
1927年正月あけ。
帝国海軍の幹部や中佐、大佐クラスの
佐官、それに設計技官達は基準排水量4万トンの蟹江丸Ⅲに乗り込み視察を行っていた。
最近の海軍では補助艦艇を作り置きしておいて、いざという時には小型空母など、必要な艦艇に改造する事で軍縮条約を逃れようと考える人間が増えている。
まぁ、その気持ちもわかる。
軍縮条約を破棄する時代になったとして、その時にある程度の規模の人材、艦艇を育成しておかないと規模の拡大はできないからだ。
だが、それはお金がかかる。
史実の海軍は基準排水量1万トンクラスの水上機母艦を10隻ほど建造しているし、それを改造して小型空母を作っているがコスパが良いとは言えない。
建造費、維持費の事を考えるとかなりの金額が浪費されていると言えなくもない。
なので彼らに見せようと思ったのだ。
蟹江丸の実力を。
この蟹江丸Ⅲは加賀級戦艦の設計思想を盛り込み、更に宇垣昌弘が舷側装甲を増やした加賀級改といっていい船体をベースにしている。
史実の改装後の赤城が36500トンで加賀が38200トンなので赤城ほどの全長260mを持ち、32.5mの加賀の最大幅よりずっと広い40mに近い横幅を持つ正規空母に改装できるだろう。
もちろん格納庫面積は日本最大になるだろう。
今の加賀よりも戦闘機なら軽く10数機は多く搭載できるだろう。
『さて、皆さん、この蟹江丸Ⅲは基準排水量にて4万トンを超える大型船でありながら30ノット以上の高速で航行する事が可能な高速の蟹取り母船です。
オホーツク海は蟹の宝庫ですが荒れている海なのでそれに耐える為に船底は二重底になっており、舷側は荒波に耐える為に日本のどの戦艦の舷側装甲よりも分厚い装甲で作られています。』
と言い宇垣昌弘はニヤリと不敵に笑う。
海軍の幹部達も思わずニヤリと不敵に笑った。
こんな所に改造すれば加賀以上の大型正規空母になりそうな船舶の大型船があるからだ。
『我が宇垣水産としましては日本中の市場に蟹や鯨を届けるべく3交代制〜4交代制にて蟹&鯨漁に励んでいます。
鯨狩丸Ⅲも同一の船体で作られており、極めて頑丈です。』
『現在は6隻体制ですが3隻を4交代の12隻体制にしたいと思っています。』
幹部達から驚きの声があがる。
12隻なら赤城と加賀を合わせて14隻の大型空母の保有が見込めるからだ。
今の複葉機なら軽く100機以上を搭載できる加賀以上なら、搭載機が1400機以上にもなる大機動部隊だ。
海軍は納得して補助艦艇の建造計画を
見直す事にした。
これでロンドン海軍軍縮条約会議は違った展開になるだろう。
古鷹などの新型巡洋艦も四万十も数はそれほど建造してはいない。
日本はワシントン海軍軍縮条約の範囲内でしか建造していない。
表向きはたいして軍備を拡大していないのだ。
実際は宇垣の技術力のおかげで故障が少なくなり、主砲の発射速度や命中精度も向上している。
それに、工作艦『明石』のような役に立つ船は必要なので作る予定である。
多目的型万能工作補給船も建造する予定だ。
『蟹江丸も鯨狩丸も低重心で驚くほど荒れた海での揺れが少ないです。
日本しか気がついてませんが、荒れるオホーツクの海でも素性の良い加賀改級の船体の船なら航行がかなり楽にできます。』
『台風の時もこの船体なら安全でしょう。その意味でも意味なく制限をしようとするワシントン軍縮条約は愚かな条約と言えるでしょうね。』
そして昌弘は船内を海軍の幹部達に視察してもらった。
一目見れば船内の外側部分の隔壁の構造や舷側装甲部分などが海軍の艦艇の様だとわかる。
これなら改装するにしてもし易いだろうとわかって幹部もほっと胸をなでおろすのだった。
それでも蟹江丸と鯨狩丸の買い取り予算と改装予算を準備しなきゃいけないので、いざという時の為の裏金予算を作る為に陸海軍は宇垣ファンドに投資をし始める。
1億円を投資すれば年率10%で増える宇垣ファンドだ。
実は政治家や財界の有力者、軍の幹部は宇垣ファンドで大儲けしている為、
好意的である。
山本さんもギャンブルで儲けたお金を
全額、宇垣ファンドで運用している。
幹部の人達はほぼ全員が退役後の人生設計をきちんと考えているのには驚きである。
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