379話 宇垣昌弘の雑談(1927年照和)
美味しい食事をした昼食後、今日は偶然にも皇族の皆様方が集まっていたので昌弘は話したかった事を話そうと決意しました。
『実はアメリカの戦艦なのですが、舷側装甲が分厚いのではという恐れが出てきました。』
『ニューヨーク級ですら、254〜356mmも舷側装甲があります。
ネバダ級は203mm水面下〜343mm。
ペンシルベニアも同様。
ニューメキシコも同様。
コロラド級も同様です。
ですが、もっと防御力が高い恐れもあります。
軍縮条約では舷側装甲の変更不可になっているのが如何にも怪しいと私は思っています。
1番手っ取り早いのはアメリカも使っていると言われている重量増加砲弾を使う事なのですが、それを知られると相手にも対策をされてアメリカやイギリスが装甲を強化しかねないと思っています。』
『我々の調べたところでは、アメリカでは635Kgの14インチ砲弾を680Kgに増加させようとしている様ですが、もっと重量を増やして15インチ砲に匹敵する威力をという声もあるようです。
635Kgの砲弾でも距離14630mで舷側装甲226mmを貫通でき、18290mでは170mmの舷側装甲を貫通できると言われているようですが、アメリカの場合は改善に改善を重ねてきますから油断ができません。
こちらの舷側装甲の厚さは知られており、対策は練られていると思われます。
635Kg砲弾を30%増量され、800Kg以上にされたとしたら15インチ砲には並ぶ威力を持つでしょう。』
『コロラド級の40.6cm砲弾の威力は更に桁違いです。957.1kgの砲弾は18290mでも292mmの装甲を貫通でき、14630mなら376mmの舷側装甲を貫通します。しかもニッケルをふんだんに使っているので砲弾は強固です。
イギリスのネルソン級の砲弾は929Kgで、コロラド級の方が威力で上を行っているとの情報を掴みました。』
『現在、宇垣が開発中の41cm重量増加砲弾は1016Kgあり、15360mの距離なら457mmの舷側装甲を貫通可能な威力があり、22400mでも356mmの舷側装甲を貫通可能と見込まれています。
この41cm重量増加砲弾なら優勢に攻撃できると思います。』
『一方でイギリスのクイーン・エリザベス級戦艦ですが、38.1cm砲を搭載しています。
この戦艦の舷側の最厚部の防御力は13.5インチ対応防御と言われていますが、それでも舷側装甲の最厚部は330mmあります。
イギリスのネルソン級ですが、18000m代ならば310mmを容易に貫くという話が伝わってきました。
16インチ、40.6cm砲に対応する防御力を考える場合でも宇垣は1000Kg超えの重量増加砲弾の防御ができるような防御を考えています。
もちろん垂直の舷側装甲だけでなく、
水平の甲板装甲も大幅に増やしたいと考えています。』
『なんせ、イギリスのネルソン級すら、厚さ356〜330mmの装甲を18度傾斜させて舷側装甲にしています。
その分薄い装甲の部分も多く、イギリス製の14インチに対応できていない箇所があるとの事。
特に後方は薄くて弱点が多いと言われています。』
『本来なら4万2000トン以上で建造するべき戦艦を3万5000トンで作るから、こうなってしまったと言われています。』
「ふむ。宇垣さんが次の戦艦の舷側装甲には500mm装甲が必要だと力説するのは、だからなのか。」
『はい。40.6cm砲弾はほんの少し重くすれば1インチ上の17インチ砲弾と変わらない威力を出せると報告が来ています。
アメリカが相手なら17インチに対応する防御力と17インチ並の攻撃力が最低でも必要になると思っています。
そして、溶接できる装甲を多く使用して、艦内の隔壁の強度も増して浸水の被害を軽減したいと思っています。
もちろん、魚雷対策のバルジも取り付けます。』
(戦艦といえども箇所によってはそれなりの鋼材で作っているところもあります。宇垣は艦内隔壁の強度を上げようと思っています。)
『その他にも考えている対策はいくつかあります。航空機の投下する800Kg魚雷や500Kg爆弾に対する対策もです。』
『本当なら四万十のように艦橋を低くして艦橋全体を装甲艦橋にしたいのですがね。
それは難しいでしょう。
残念です。
でも、艦橋の下側は装甲艦橋にして、
そこで副長はダメージ対応の指示を出すシステムにしたいと思っています。
その部分を1階と呼ぶのなら4階くらいまでは装甲艦橋にしたいですね。』
『四万十では艦橋の防弾ガラスの部分が弱点ですが、装甲部分を増やしていますので、窓ガラスの少し下に命中してくれれば128mmクラスの砲弾を簡単に跳ね返す作りにしました。
もちろん、その下は更に強固な装甲です。』
『四万十も1万2000トンはほしかったですね。富士級戦艦以上の装甲にしたかったですよ。
装甲はそのままに、装甲の範囲を広げたかったです。』
「確かに四万十の防御力は凄かったですな。命中した時の衝撃があまりにも少なかったので、皆が驚いていた。
前弩級戦艦の30.5㎝砲の砲弾を防ぐ
舷側装甲に128cm砲弾が命中すると
ああなるのですね。」
『ええ。私も意外と思ったほど、衝撃が少なかったですね。
やはり、日本の巡洋艦の舷側装甲は四万十級くらいにしたいと思いました。
四万十をベースにして改善したいと思っています。
ですが、他国には知られたくないので
なるべく秘匿したいですね。
改装はギリギリにしたいです。』
軍人は保守的なものなので、今から四万十を見慣れさせて、巡洋艦でも戦艦クラスの横幅があるのは普通だと思わせる目的があります。
四万十を見慣れれば駆逐艦や他の艦艇の横幅が増えても、こんなものかと思うでしょう。
特に米英は日本の大型駆逐艦を恐れている様子があります。
巡洋艦は1万トンの条約の制限以内と
枷を嵌めたがるのは、日本が戦艦で長門を作り、拡大長門級の赤城型や加賀型を作ろうとしたのを見て、巡洋艦でそれをやられたら米英のすべての巡洋艦が時代遅れになるかもと恐れたのでしょう。
現に大型駆逐艦も作っていますしね。
ちなみに四万十は『多用途支援艦艇』
なんて言って誤魔化しています。
機銃こそ多いものの、魚雷の発射管を持っていませんし、単装高角砲のような砲塔を6基持っているだけの四万十は
支援艦艇の1つか。と他国に思われている様子です。
まぁ、海軍の他の艦艇に食糧や甘い物や燃料を補給したりもしていますしね。
単装高角砲6基と機銃しか搭載していない船と見ると巡洋艦ではなく支援艦艇に見えてくるから不思議です。
四万十と玉川ですが、カッターや動力付きの艦載艇を多めに搭載してクレーンの数も増やして偽装するようにします。
それだけで支援艦艇らしく見えてくるから不思議ですねえ。
1万トン以内の支援艦艇は軍縮条約で規制されていないので宇垣は四万十の同型艦を作り始めます。
もし何かあったら駆逐戦隊の旗艦をして敵の攻撃を一手に引き受けて盾になるのは四万十の役目ですしね。
5500トン級の軽巡の大幅パワーアップであり、実質は軍拡です。
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