367話 フィリピン人兵士は辛いよ。(1926)
ここはフィリピン。
大勢のフィリピン人兵士達が小銃を持ち背嚢を背負って行進の訓練をさせられている。
『行進がやっとできるようになった新兵どもをすぐに1人前にしろだって?
上の連中は何を考えてんだ!!』
見込みのあるフィリピン人兵士は抜擢され分隊長を任されている。
だが、彼らが向かわせられるのは土地勘のあるフィリピンではない。
冬になると極寒になる満州だ。
満州の地は特殊で、細かな黄砂が銃に入り込んで故障を起こさせるという。
すでに満州に入った先遣部隊は銃の故障に悩まされ、飲める水を手に入れるのにも苦労している。
彼らが行う予定なのは満州の治安維持任務だ。
小隊長以上はアメリカ人だが、人数的に末端の兵士はほとんどがフィリピン人ばかりだ。
冬でも泳げるフィリピンと凍りつく満州では気候が大違いなのだが大丈夫なのかとマイク軍曹は心配していた。
もっとも、彼もフロリダ出身で冬の寒さが厳しい地域での軍務経験は無い。
彼らはフィリピンを防衛する為の第1師団か、第1連隊になる予定だった兵士達だ。
彼らを充分に訓練したら、彼らを中核にして部隊を増やすはずだったのだが、、、
そして精鋭部隊のアメリカ海兵隊の動きは素早い。
満州とソ連の国境沿いを警戒しつつ地図と見比べて現地を視察している中隊が幾つもある。
現地の治安への心配やソ連への不信感があるからだ。
アメリカ合衆国は要塞の建設も行おうとしていた。
せっかく手に入れた満州なのだ。
絶対に手放すつもりは無かった。
アメリカ各州の州軍から選抜された練度が高い部隊も大隊単位でアメリカ陸軍の部隊として編成され続々と満州入りしようとしていた。
上下両院も積極的だった。満州は石炭や鉄鉱石が豊富だと
思われているのだ。
実はそれほどでもないのに。
イギリスが第1次世界大戦でインド師団を前線に出して戦わせていたが、アメリカも本格的に植民地師団を編成しようとしていた。
そうして満州に派遣されそうなのがフィリピン第1師団の第1連隊というわけだ。
だが、そこそこ時間をかけて訓練された兵士は少なく、おおよそ3割ほど。
本当なら1個師団にもならない兵士を分割して3個師団を編成しようというんだから泥縄である。
「警備任務なんだから実戦にぶち込んで鍛えろ!」と上の連中は思ったらしい。
そして訓練教官だったマイクも少尉に任命されて小隊を率いる事になりそうだ。
フィリピン人兵士達はフィリピン人をあまり差別しない教官のマイクが
小隊長で、俺たちは運が良いと喜んでいたが、当のマイクは上海の方で国際租界やフランス租界が中国人に攻撃されて武力衝突してるのを知っており、
戦地にいるつもりでいた。
鈍足の輸送船でもあっという間に旅順に到着できて、フィリピンのマニラから旅順って意外と近いな?と思っていたマイク小隊の面々だが、これから満州鉄道に乗り大連より遥かに北のモンゴルの近くに行かされるとは思っていなかった。
そして、満州の風景を眺めつつの列車旅か〜と思っていたフィリピン兵達だが、
列車に銃弾の命中した痕跡が幾つもあり、遠距離からの小銃弾が貫通しないように客車に装甲が溶接され、装甲客車になっているのを見て絶句する。
列車にはいくつも重機関銃が配置されていて、銃を撃ってきた方向にガンガン撃ち返している。
装甲と兵員で重い客車を引っ張る為に
機関車は2台も繋がれている。
大連までの長い旅が始まった。
マイク達の客車だが大連までの間に
無数の銃弾が命中する。
味方もガンガン撃ち返しているから全然眠れない。
窓は装甲でカバーされているが、外が見えないし中は暗い。
『装甲列車に乗れたお前達は運が良い!』と装甲列車の兵士達には言われたが、普通のフィリピン人兵士達は心の中で『何が運が良いだよ!』と叫ぶのだった。
隣の小隊の兵士に死者が出ているし。
全然、満州の風景も見れません。
作者注、ナショナリズムが燃え盛りつつある中華民国。
嫌がらせ攻撃をしているのは国民党軍と中国共産党軍と馬賊や民兵です。
ソ連軍も武器を供与しています。
満州からモンゴルにかけては、あまり資源の調査が近代になってからされていないので資源が取れる可能性が大きいとアメリカは思っています。
それに大国ソ連が敵国だと認定されて
連隊と師団が増やされる事が決定しました。
ええ、平和な時はアメリカ陸軍は全然師団が無いので幹部のポストがありません。
軍縮条約のせいで海軍のポストは微増なのに陸軍のポストはこんなに増えるぜ海軍ザマァ見ろ!と陸軍の軍人達は思っています。
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