363話 装甲艦『四万十』の底力(1926照和)
ここは呉鎮守府のはずれの海域。
そこに装甲艦『四万十』の姿があった。
あれから海軍の中では四万十の話題で埋め尽くされた。
特に、海に出る事が多く舵輪をよく握るので手にタコができているような実戦派の軍人達の注目が多く集まった。
艦橋に入るハッチなども宇垣の改装した軍艦は頑丈であり、宇垣の作る軍艦は一味違うぞと評判が高かったのだが、この『四万十』の舷側も艦橋もかなり頑丈であり、叩いた時の手応えをみれば戦艦の装甲の様だと解る。
多少不自由にはなるが、艦内に人間が入るハッチは戦闘の時には弱点にもなる為、敵の砲弾が命中し難い場所に工夫して作ってある。
それに、分厚い舷側に窓を作るのは弱点にもなる為、あえて舷側には窓を開けていない。
その念の入れようにも海軍の軍人達は驚いていた。
現在、左舷の3000m先には『四万十』
の2番艦の『玉川』(玉川温泉の玉川ね。)が停泊している。
『高松宮様をお連れしたのは何故か!』と怒っている軍人達が多い。
今日は装甲艦『玉川』の撃つ128mm砲弾を『四万十』の舷側装甲で受け止める防御試験の日だったからだ。
だが、高松宮様も海軍の軍人である。
日本が戦争するという事はどこかで負傷される危険性があるという事。
ここにいる軍人の皆様には、自分達の判断が間違って戦争になれば皇族も生命の危険に晒されるぞと肝に命じてほしかったのだ。
史実ではドーリットル空襲だってあったし、各大都市の大空襲や原爆の投下だってあったのだ。
こちらだって戦争ともなればアメリカの大都市を空襲するつもりなのだ。
次の戦争、その次の戦争ともなると、
軍人達ですら想像できないほど危険なのである。
ここにいる海軍幹部の親類縁者だって全滅するかもしれないと肝に命じてほしいのである。
あっ、宇垣さんの親類縁者が全滅すると俺によく似た人間も生まれて来ないかもしれないな、、、
まぁ遠縁だけど。
しかし、どうなんだろ。
グレートホワイトフリートと戦った時の30.5cm砲弾の衝撃はかなりのものだったが、防御魔法で守っていたからなぁ。
薄かった装甲巡洋艦の装甲も耐えて生き抜いてみせたが、治癒魔法も使ったし、防御魔法を使った、あの経験は参考にはし難いだろう。
今いる艦橋の1階〜2階の装甲は分厚く作っていて、20cm砲弾に軽く耐える作りなはずだが。
それに、ここだけは防御魔法を使う予定だから大丈夫なはずだが、、、
あの時のアメリカ大西洋艦隊との戦争では薩摩に乗っておられた皇太子殿下(後の大正天皇陛下)が一番ヤバい経験してるよなぁ。
あの時、艦橋にいたらしいし。
『これから防御試験を開始します。
『玉川』には艦の中央部より後方の艦橋から離れた所を撃てと伝えてあります。ご安心ください。』
と艦長の声は全然震えていない。
作った宇垣昌弘本人が計算ミスはしてないか不安なのに。
まぁ、最初の1発が命中して戦闘が始まる前はこんなものだ。
日露戦争で実戦経験のある人達だって
緊張はしているんだし。
いや、実戦経験者だから緊張するのかもしれない。
『それでは開始します。玉川発砲!』
『カーン』
『『『『あれ?』』』』』
128mm訓練砲弾は内部に炸薬が入っていないから爆発はしないが、重たい分装甲貫通能力は高い徹甲弾なのだが?
2発目、3発目の砲弾も命中しているのに『四万十』はびくともしていない。
衝撃や音は伝わってはくるのだが?
『訓練弾ではなく炸裂する砲弾を使ってほしい。と命令してほしい。
『玉川』には戦艦なみの舷側装甲なんだから安心しろ。
と伝えてくれ。』
それからも砲撃は続いたが戦艦なみの舷側装甲の頑丈さを確認するだけの訓練になってしまった。
『こりゃあ、20cm砲弾でも跳ね返されるだけかもしれないなぁ。
理論上は前弩級戦艦の30.5cm砲弾に耐える計算だし。』
「「「ちょっとまて!理論上は30.5cm砲弾に耐えるだと?」」」
『ニッケルを上手く合成して作った宇垣の扶桑鋼(と誤魔化している。)はアメリカやイギリスの最新鋭装甲に劣ってはいませんよ。
海軍工廠の装甲板に勝っているのは御承知のはずでは?
『四万十』の舷側は全体が300mmあります。充分に30.5cm砲を防御できますよ。赤城や加賀にも負けない舷側装甲です。』
『そして、次に作る戦艦の装甲を扶桑鋼の500mm装甲にすれば、理論上では
41cm砲弾を軽く防御できます。』
『つまり富士型戦艦の重装甲艦の設計路線を復活させるべきなのです。
妥協しない重防御こそ必要なのです。
扶桑鋼の500mm装甲ならアメリカの戦艦なぞ恐ろしくありません。』
荒天時の揺れの少なさや旋回性能の高さも四万十は優れています。
(この四万十ですが、考えていたデザインが、この作品の初めの頃のやや大型にした頃の装甲巡洋艦に似てます、、、艦橋は4階建てですし。
つい最近気がつきましたよ、、、)
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