336話目空母のちょっとした改革(1925照和)
次の正規空母は加賀のような横幅の広く、速度の速さよりも安定感を重視する空母に設計思想を変更する改革は世界の何処の国も考えついていない。
革新的な設計思想の転換だった。
世界のどこの国も航空母艦に必要なのは速力と高速で巡航可能な事だと思い込んでいる。
当然だが、全長は長く横幅は狭く、細長い船体にするのが当たり前であり、
設計者は33ノット以上、できれば34ノットを出そうと設計する。
だから史実のハワイ作戦の時、加賀は3度しか傾いていないのに他の空母は左右に大揺れに揺れて、発艦は不可能ではないか?と言われたのだ。
満を辞して建造された大型で新鋭空母の翔鶴型空母もこの時大揺れに揺れている。
そして大鳳型空母なども船体の設計は欠陥のある翔鶴型を参考にしている。
翔鶴型空母は出来が良くないと言われる事もあるのは大型空母の割りに荒天時の安定の悪さが問題視されているのだ。
荒天のハワイ作戦時の横揺れについて加賀は最大で3度なのに比べて、蒼龍や飛龍は11度であり、翔鶴型は大型なのに20度も傾いている。
これは、加賀は荒天でも揺れが少ないのに、蒼龍や飛龍は3倍以上、8度も多く傾き、翔鶴、瑞鶴に至っては加賀の3度よりも17度も多く傾いている。
欠陥があると結論できてもいいだろう。
だが、史実の日本海軍はこの事実を重視しなかった。
もちろん、何とかできないか?と設計者に言っただろうが、それは速度はなるべくこのままでの改良を求めているだけである。
それでは根本的な解決など不可能だ。
設計時に『最高速度は28〜29ノットでも構わない。』とか、『縦横の比率は加賀のままで設計してくれ。』とか、『加賀をコピーしてくれ。』とは海軍の人間なら絶対に言わないだろう。
彼等は正規空母に必要なのは速力だと思い込んでいる。
だが、ゴーレム達に意見を聞いて見ると、みんな加賀の船体の素性の良さをベタ褒めしてくるのだ。
史実の大改装後の加賀は左舷側に下に向けた煙突があり、艦橋と重量のバランスを取っていた。
だが、宇垣製の加賀は艦橋の後ろ側に煙突が高く突き出しており、斜め外側に突き出している。
そういう意味では史実の加賀とは違って右舷側の重量が増加しているのだが、ゴーレムに聞くと特に気にならないほど安定していると言っているのだ。
左舷側を膨らませて重量配分を微調整すれば大丈夫だと言う。
だから、斜め下に向けた煙突をやめて
艦橋の後ろに煙突を付けたのだ。
中型空母の蒼龍よりも更に揺れる翔鶴型が建造される可能性は少なくなった。
蒼龍と飛龍もどうなるかはわからない。
龍驤も建造されないだろう。
これが決定事項だ。
ちなみに加賀は公試排水量
33,693英トン
全長 238.51 m
最大幅 31.67 m。
赤城は基準排水量 36,500英トン
公試排水量 41,300トン
全長 260.67m
水線幅(最大幅) 31.32m
数メートルは広げたいですね。
4メートル広げたとしたら格納庫面積も増大できるのに。
これからの日本の正規空母は全長を伸ばすなら全幅もこの比率に合わせて拡大する設計になるのだった。
近代化改装後の加賀は3万8000トンになる。
ちなみに、翔鶴の基準排水量は25,675トン
公試排水量 29,800トン
満載排水量 32,105.1トン
全長257.50m
水線幅26.00mである。
全長は長く伸びているのに全幅は狭い。
全幅が36mだったら格納庫面積も大幅に大きくなっただろうに、、、
なお、全速航行しながら左右どちらかに舵をふり切った場合、傾きが大きい翔鶴型だと転覆の恐れすらあるので、
舵を切る時に加減が必要になる。
安定感の高い加賀なら全速で航行しつつ舵を一杯にふり切る事も可能だろう。
低重心の鳳翔、元は巡洋戦艦の赤城、
元は戦艦の加賀まではなんとかなっているが、いや、宇垣が何とかしたが、
これからが正念場だ。
速力の為に全幅を削る設計は問題が多いからやめさせなければいけない。
船体の上に格納庫を2段置くだけに、
空母はトップヘビーになり易い。
ここで日本海軍が安定性重視に設計思想を変更したのは日本にとって大きな幸福をもたらす。
どの空母の格納庫面積も多くなるから
搭載機数も大幅に増えるのだった。
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