335話 発着艦事故を防げ!!照和日本

ここは海軍省。

大勢の海軍幹部が集まっています。


ワシントン軍縮条約によって戦艦や空母の数や基準排水量に制限が課せられてしまった日本ですが、軍縮条約外の戦力によって少しでも英米との差を埋めようと海軍では会議が行われていました。

ですが、宇垣昌弘はそれが英米の罠だと力説しています。


『英米の悪辣さを甘く見てはいけません。現在の日本が条約型巡洋艦を増やせば連中の思う壺です。』

『1万トン以内の条約内巡洋艦を多く建造すれば維持するのに費用もかかります。

そうなると日本は逆に不利になる。

20.3cm砲を6門搭載している巡洋艦なんて、イギリスやアメリカの新型巡洋艦の餌食にされてしまいますよ。』

(↑古鷹型ですが、魔改装しており、

戦争前になったら高角砲を10基に増やして高い防空能力を持たせる予定です。

機銃も多く搭載できます。

防空能力は高く中々なのですが、あえてこう言ってます。)


『条約内の支援艦艇を建造して空母に改造するなんて、予算を無駄に使うだけです。

それで、ろくに飛行機を搭載できない、使い勝手の悪い小型空母を建造したら日本にとってマイナスなだけです。』


『狭く、凸凹な舗装されていない飛行場では離着陸時の事故による航空機の損傷の被害が戦闘よりも多くの機体を損傷させかねません。

空母にも同じ事が言えます。

小型空母を何隻も建造するのには大反対です。

海軍で最優秀なパイロットでも、小型空母への着艦となると事故の危険性が高くなります。

小型空母鳳翔と大型空母加賀とでは着艦事故の発生率が大違いです。』


『先頃完成した加賀と鳳翔では加賀の方が圧倒的に着艦はやり易いです。

揺れの少なさや安定感も、さすが元戦艦と言っていい。

私も加賀が完成する前は赤城のような巡洋戦艦の方が空母に向いていると思っていました。

ですが、ほんの少しの横幅や重心によって加賀の方が赤城よりも圧倒的に揺れが少ない艦艇になりました。

今後の正規空母は加賀と同じ空母を量産する事を考えるべきです。』


『私は自分で操縦して加賀に着艦しました。やり易さは鳳翔とは大違いです。

これを見てください。今まで鳳翔で起きた事故の件数です。

ベテランばかりの現在ですら、これだけの事故が起きています。

もしも、鳳翔の大きさが加賀と同じなら事故は90%は少なくなっています。』


『これら、ベテランパイロットの着艦事故のほとんどが、鳳翔の方が急に艦尾を跳ね上げたりする挙動をした為の事故なのです。

つまりベテランのパイロットが満点の着艦をしているのに起きている、避けられない事故なのです。

小型の空母は着艦する時に何十%かの確率で事故が起きる艦艇だということです。

加賀のような大型空母2隻と小型空母6隻の場合、平時の事故の発生率は10倍以上の違いになるかもしれません。

これは無視はできません。』


と宇垣昌弘は力説しました。

船にはピッチングとローリングの揺れやすさがあります。


加賀は史実でも評判が良いのですが、

赤城も加賀も密かにゴーレム化しており、安定度の高さは海軍内でも大評判になっています。


この着艦のやり易さ問題は何としても海軍の上層部に周知させて常識にさせておく必要があります。


着艦事故により失われる命を軽く見る訳にはいきません。


小型の改装空母によって空母の数を増やして、戦力を増強しようとしていた海軍ですが、何とか阻止する事ができました。


宇垣昌弘は殉職したパイロットの飛行時間も発表しました。

今の日本は産油国ですが、貴重な航空機を稼働させて何百、何千時間も飛行して熟練パイロットになった人間が、

着艦事故で失われた場合、そのパイロットへの投資がすべて失われます。

それにプラスして艦載機も失われます。その損害金額は海軍の幹部達に衝撃を与えています。


アメリカでも小型空母への着艦事故で失われた機体の数は戦闘よりも多かったという事実がありますからね。


改装空母の製造を阻止できて良かったですよ。


鳳翔は表向きは航空機運搬船になったのですが、実質は退役する事になりました。


そのまま運用を続けていたら、大勢のベテランパイロットの命や機体が失われてしまいますから。


もちろん、余っている排水量分で空母をもう1隻という願いはよくわかります。

標的艦にされた摂津を模擬空母にして

着艦訓練艦にするのもいいですね。


何かを考えたいものです。

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