328話 思い出す天ぷらの味(1925照和)

今日は江戸前天ぷらの名店と言われる店に来ていた。


天ぷらというと家の近くにあった美味しい天ぷらの店を思い出してしまう。


宇垣昌弘の両親は日曜日は新宿の伊勢丹でデートをし、良い店に食べに行っていた両親だった。


父親は貯蓄をして老後に備えて暮らすなんて事を一切考えずに、当時の若者が憧れるケンメリのスカイラインを買ったり、買うのが難しくても勢いで車を買うような、老後の事を考えない人間だった。


その父親がここは美味しいと言っていた天ぷらの店の味の方がここの天ぷら名人の店より美味しく感じるってのは

昭和後半や平成の油の絞り方の技術が凄いからだろうか?


サクッと仕上がった、その店ならおつまみに天ぷらをつまみながら、天丼を食べちゃおうかな〜と思うのだが、

ここではそんな気になれない。

胡麻油が重い、、、


ダンジョン産の米などの油の天ぷら屋を出したら大人気になるんじゃね?と

思ってしまった。



と、両親を思い出したのにはわけがある。

昌弘の両親は都会の暮らしを楽しんだ両親だったからだ。


と、いうのも、向こうの世界の日本で自作農民を増やすべく努力したのだが、、、

息子が宇垣系列の会社に入ると、社員は200平米の高級マンションに安い家賃で暮らせるのだが、両親が住み心地を確かめて、田んぼや畑と家の権利を売り払ってマンションに暮らして都会の暮らしを楽しむようになる例が増えてきたと報告が上がってきたからだ。


そして両親はパートなどをやり始めると貯金を減らさずに農村に居た頃ではできなかった暮らしができるというわけだ。


つまり、朝は喫茶店でモーニングセットを食べ、昼は定食屋や中華料理屋で町中華を食べ、夜もちょっぴり贅沢な食事を食べても普通に生きて行けるというわけだ。

ちょっとエンゲル係数高めだろ!と言いたいが。


考えてみたら、この天ぷら名人の名店の天丼でも、それほど高くはないんだもんな。

そりゃあ都会で暮らしたくなるか、、、


向こうなら税金は安いからマイカーとしてミゼットだって気安く買えるだろうし、、、


『先祖代々の田んぼや家をどうするんだ』なんて言うのは富農な人間かもな。

元は小作農民で今は自作農民ってのは

農村を捨てて都会に住みたいと思う人間も多いのだろう。


それにしても、豊かに暮らせている宇垣系列の自作農民ですら、こんな人達が出てきているのだ。


そりゃあ農民をやめて都会に出たくもなるだろう。


新幹線が止まる駅に歩いて行ける距離に実家があっても田舎の家に住むのは嫌だから都会に出たのが昌弘の父親だ、、、


良い暮らしができるように配慮はしたが、農村は農村、、、

野菜に恵まれてはいるが肉を食べるのは大変だもんな、、、


農村へのテコ入れが必要だろうか。


まぁ、家が空いてもすぐに入居したいという農家の次男、三男がいるから別に困りはしないのだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る