321話アメリカは危険な国(1925照和)

スペインとの戦争でキューバ・プエルトリコやグアム、フィリピンを支配したアメリカ。


アメリカのニューヨークジャーナル紙にはフィリピン人を銃殺しようとするアメリカ兵士の絵が描かれて、『10歳以上の者は皆殺し』と書かれた風刺画が掲載されたほどだった。


アメリカ軍が殺害したフィリピン独立派の人数は最低でも20万人。

最大で150万人と言われている。

かなりの大虐殺だ。


フィリピン独立派を根絶やしにしたアメリカ陸軍の次のフロンティアは中華民国になった。


ベトナム周辺はフランス。

マレー半島はイギリス。

東インドはオランダ領だから中華民国しか無かったのだ。


だが、香港はイギリスが租借しているし、上海や他の都市に租界を得るぐらいしかできなかった。


そこでアメリカが目を付けたのが中華民国北部方面の港町の青島や旅順港であり、満州地方だった。


アメリカの鉄道系の財閥はすでに日露戦争(明治37年)の前に満州の鉄道の利権に目を付けていた。


大統領が知らないのに行われたハワイ王国への武力進行がある事でもわかるように、アメリカ帝国主義を推し進めようとしている勢力はアメリカに根強く存在していた。


その勢力はイギリスと日本の同盟関係を引き裂き、時間をかけてアメリカに有利な立場を作り上げていく。


そして大規模な軍拡をしようと暗躍していたのだ。


第1次世界大戦中には極東における日本の勢力増大を懸念していた。


46億ドルの債権があるからイギリスは

アメリカには逆らえないだろう。


と、なると金剛級戦艦を4隻、伊勢級

、扶桑級、長門級を2隻ずつ保有している日本が目障りに見えてくる。


かと言って、日本の戦艦が少なかったら、片手間に勝てる相手だと思われて

ハワイ王国のように滅ぼされた可能性が高い。


軍事力が弱い相手にはやりたい放題するのがアメリカ流だ。


あの日米通商条約だって条約締結後にアメリカが一方的に通告してきて、より日本に不利な条約にされている、、、


軍事力が弱ければやりたい放題にされてしまうので侮られない軍事力の保持は絶対に必要だ。


ここでアメリカ海軍の大規模な海軍拡大計画のダニエルズ・プラン(Daniels plan、Daniels' plan、Daniels's plan)

を見てみよう。


当時の海軍長官ジョセファス・ダニエルズの名前からこう呼ばれている計画だ。

海外においては計画が立案された年度に因んだ1916年度海軍法 (Naval Act of 1916)、或いは大海軍法 (Big Navy Act)とも呼ばれている。



1903年、海軍軍備に関する諮問機関として将官会議が発足し、それ以後アメリカ軍の整備方針は海主・陸従を基本としていくようになる。


折からの、激化する一方の英独建艦競争に対応し、当会議は「1919年までに戦艦8隻基幹の6個艦隊を整備し、ドイツ帝国海軍を凌いで世界第二位の海軍力を獲得する」基本方針を策定した。


以後この方針に従い艦艇整備計画は進捗していくが、大戦参戦までに議会の協賛を得たのは目標48隻(既成艦含む)に対して37隻に留まっていた。


1893年完成、BB-4 アイオワ

1896年完成、BB-5 キアサージ、BB-6 ケンタッキー


1897年完成、BB-7 イリノイ、BB-8 アラバマ、BB-9 ウィスコンシン


1899年完成、BB-10 メイン、BB-11 ミズーリ、BB-12 オハイオ


1900年完成、BB-13 ヴァージニア、BB-14 ネブラスカ、BB-15 ジョージア


1901年完成、BB-16 ニュー・ジャージー、BB-17 ロード・アイランド


1903年完成、BB-18 コネチカット、BB-19 ルイジアナ


1904年完成、BB-20 ヴァーモント、BB-21 カンザス、BB-22 ミネソタ


1905年完成、BB-25 ニュー・ハンプシャー


1906年完成、BB-26 サウス・カロライナ、BB-27 ミシガン(主砲8門搭載戦艦)


1907年完成、BB-28 デラウェア


1908年完成、BB-29 ノース・ダコタ


1909年完成、BB-30 フロリダ、BB-31 ユタ


1910年完成、BB-32 ワイオミング、BB-33 アーカンソーの2隻は50口径30.5cm砲12門搭載の弩級戦艦。


1911年完成、BB-34 ニューヨーク、BB-35 テキサスは35.6cm砲45口径を

10門搭載した超弩級戦艦。

これ以降は全部超弩級戦艦である。

日本とも戦ったお馴染みの戦艦達だ。


1912年完成、BB-36 ネヴァダ、BB-37 オクラホマ


1913年完成、BB-38 ペンシルヴェニア


1914年完成、BB-39 アリゾナ


1915年完成、BB-40 ニュー・メキシコ、BB-41 ミシシッピ、B-42 アイダホ

FY1916:BB-43 テネシー、BB-44 カリフォルニア

※ BB-23 ミシシッピ、BB-24 アイダホの両艦はギリシャに売却(主砲4門で

無理に小型化した欠陥戦艦な為の売却)

(これらもダニエルズ計画の中に含まれる。前弩級戦艦は2線級とされて含まれる。)


1914年、世界大戦が勃発するとアメリカ合衆国は当初中立を保ったが、ドイツが展開した通商破壊戦により自国の海外貿易が重大な脅威に晒される現実を目の当たりにし、海軍力整備の機運はより一層高まった。


1915年、将官会議は従来の整備方針を発展させ、1924年までに世界第一位のイギリス海軍に匹敵する大海軍を整備するため、下記の建艦計画を時の大統領ウッドロウ・ウィルソンに提出した


戦艦 52隻(一線級27、内巡洋戦艦6隻、二線級25)

装甲巡洋艦 10隻

偵察巡洋艦 13隻

一等巡洋艦 5隻

二等巡洋艦 3隻

三等巡洋艦 10隻

駆逐艦 108隻

大型潜水艦 18隻

中型潜水艦 157隻

モニター 6隻

砲艦 20隻

など。


この提出された計画は1916年度議会にて審議にかけられた。

この中でアメリカ合衆国下院海軍委員会は5カ年計画を承認せず、単年度計画FY1917として巡洋戦艦5隻等39隻、2億4,000万ドルにて査定する。

下院本会議においてはさらに潜水艦30隻、3,000万ドルを追加して可決された。


しかし政府は上院に働きかけて計画を復活・拡大し、5カ年計画を3カ年に短縮した上で要求のほぼ全艦を可決せしめた。


157隻81万余トン、建造費5億8,800万ドルの大建艦計画がここに成立したのである。


本計画成立の翌1917年、アメリカは世界大戦に参戦した。このため、各種小型艦艇の急造が必要となり、臨時軍事費によって駆逐艦229隻、潜水艦26隻他の戦時計画を成立させた。一方で大型艦の建造にはブレーキがかかり、起工済の艦を除いて建造は繰り延べとなった。


さらに1918年、将官会議はダニエルズ・プランに続く建艦計画として下記の内容を6カ年計画で提出した。


戦艦 12隻

巡洋戦艦 16隻

軽巡洋艦 30隻

駆逐艦 108隻

潜水艦 167隻

航空母艦 6隻


当計画はさすがに膨大に過ぎ、政府内査定で戦艦10隻、巡洋戦艦6隻、巡洋艦10隻、駆逐艦・潜水艦以下130隻の3カ年計画に修正されたが、これとても先のダニエルズ・プランとほぼ同規模の大計画であることには変わりなかった。


1919年度議会に提出された計画は難航し、下院において戦艦・巡洋艦各10隻のみに削られた(上述の通り、駆逐艦以下については戦時計画で大量建造が決定していた)。しかし上院では審議が満了せず不成立となる。


他方、同年1月にはダニエルズ長官が第二次三年計画を発表した。この計画は国際連盟加盟条約を批准しなかった場合という前提条件つきではあるが、三カ年で戦艦6隻、巡洋戦艦6隻以下を6億5,000万ドルにて整備するという大計画であった。本計画は国際連盟成立に伴う世界情勢が想像以上に融和的となったことを受けて撤回されることになる。


そして1920年に最後の建艦計画が策定される。

本計画は3カ年にて戦艦3隻、巡洋戦艦1隻、巡洋艦30隻、大型駆逐艦18隻、大型潜水艦6隻、機雷潜水艦12隻、その他合計88隻というもので、大戦終結により建造再開した戦艦・巡洋戦艦の工事量が膨大であったためと、上記第二次三年計画が世界情勢を受けて縮小された結果、大型艦は少なく中・小型艦の整備に重点を置かれたものだった。本計画は政府内にて審議中にワシントン会議開催を迎え、議会提出に至らずそのまま立ち消えとなった。


こうして第1次世界大戦に参戦する為の

自由債権をアメリカ国内で募集したところ、集まった40億ドル超えの膨大な金額に目が眩んだアメリカ政府と海軍の暴走はとんでもない規模の軍拡になって浪費された。


駆逐艦などは性能に問題もあり、海軍で使用されずに230隻ほどが野晒しになっている。


で、アメリカが暴走したからってワシントン軍縮条約を押し付けて来るのだ。

ほんと迷惑な国である。


だが、こういう大海軍を持ちたがるのがアメリカの本質と理解していただきたくてダニエルズ計画を掲載した。


僅か4年間でこの軍拡である。


アメリカはこの時点で危険な国である。

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