320話 徴兵も悪い事ばかりじゃない(1925照和)
さて、徴兵というと悪いイメージばかりが付き纏うのだが、悪い事ばかりじゃ無かった。
徴兵され兵役を終えれば在郷軍人会のメンバーになり、故郷での立場が強くなるからだ。
基本的に陸軍に徴兵された場合、入隊するのは地元の連隊や師団である。
在郷軍人会の結びつきは深く、上官や戦友に助けてもらえるから、両親が貧しくて故郷での立場が弱ければ子どもの立場も弱くなりがちだが、在郷軍人会に所属できれば故郷での発言力も高くなる。
その徴兵だが、ひとりっ子や跡継ぎは基本的に徴兵はされないように気配りされる事になり法律化もされた。
これは大いに驚かれて政府の支持率も上がるのだが、これも宇垣昌弘が新聞の社説で力説して法律化に尽力しているので宇垣昌弘の人気が更に高くなった。
そして、徴兵されるわけだが、今の陸軍は宇垣の支配下にあり、
それ以前とは大きく違ってきつつある。
陸軍や海軍に入隊したら、最低でも車やバイクの操縦を学ぶ機会が全員に与えられる。
実際の車両を自分で操作する機会が与えられるのだ。
確かに縦列駐車などは難しい。
できるようになるのは大変だろう。
だが、縦列駐車はできなくても車は運転できる。
隊内での運転、外地での運転なら免許ではないが『簡易操縦資格』を与えるシステムがあり、操縦できる人間が増えれば増えるほど、前線での補給なども楽になる。
物覚えが早く上手い人間はトラックやバスの免許も手に入れる事ができたし、トラクターやブルドーザーや各種建設重機の免許を取るべく操縦を学ぶ機会が全員に得られたからだ。
やがて『徴兵されれば車やバイクは操縦できて当たり前。』などと言われるようにすらなる。
更に簡単に操縦を教えられて、飛行機を操縦する機会まで得られるのだ。
さすがに飛行機の操縦免許は難しくなっているが、大勢の人間を飛行機に触れさせて才能のある人間を探そうとしたのだ。
大空のサムライの坂井三郎さんは戦艦の乗組員からの操縦者だし。
これは飛行機がゴーレムだからこそできた事だ。
もちろん後ろの操縦席に教官は乗って見守っているが、訓練兵がミスしてもゴーレムの飛行機がアシストして墜落しないようにしてくれるから安全性は高い。
これは衛生兵にも当てはまる。
手先が器用な人間に簡単に知識を教えて、動物の解体をさせてみて、上手い人間には動物の手術をさせてみせて
衛生兵を育てたのだ。
海軍のすべての艦艇に手術のできる人間を乗せる事は難しいと思われていたのだが、非常事態のみ治療行為が許される『限定簡易治療資格』をこれらの手先の器用な衛生兵は得られるようになった。
例えば、切り傷を消毒して縫うくらいの事を衛生兵ができたら医師の負担は減るからだ。
そして、これが風穴になって看護婦としての実務経験が豊富な女性も『限定』医師免許が得られるようになる。
(最初の頃は限定簡易治療資格)
ベテラン看護婦の方が下手な医師よりも実務に秀でていて優秀な医師になれるのだから医師法が改正できて多くの医療従事者に限定とはいえ『簡易治療資格』が得られて良かったといえよう。
このように未来の日本でも日本医師会が大反対するので実現不可能と言われる医療改革ができた事は諸外国も驚かせた。
日本は1930年になる前に女性の参政権も認めたし。
日本国憲法の条文にもすべての人間は平等だ。と人種平等宣言もするのだった。
こうして日本は人種差別的な法律の是正を世界各国に求めるようになる。
そしてそれは全世界の有色人種達に
広く宣伝され『日本は有色人種の希望の星』だと思われるようになっていく。と言うよりロシアに勝利した時に有色人種達は大喜びしていたので、
すでに『日本は有色人種の希望の星』だと思われているのだが。
(日本がロシアに勝ったと聞いて孫文が大喜びしたらロンドンがお通夜だったというのは有名な話だ。
インドで独立運動が盛んになったらイギリスはどうなるのかとロンドン市民は不安に思ったのだろう。
なにせインドの国民の数は英国よりもずっと多い。
そしてアメリカの黒人や先住民達も大喜びしている。)
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