307話目ありがとうお兄ちゃん。(照和日本)

急速に復旧しつつある東京府。

向こう側の繁栄している東京府とは大違いで、こちら側は関東大震災が猛威を振るい多くの建物が倒壊し大勢が強風が吹く中で大火災に焼かれて死んでいった、、、


憲兵たる者、常に威厳を持って犯罪を取り締まり日本の民を守らなければいけないとは思っていたものの、ショックを受けたゴーレムの仲間は多かった。

憲兵といえども人間だ。特に女性や子どもの痛ましい姿を見ると悲しくもなる。


仲間達も戦闘には強いが好意をいだいている日本人が苦しんでいる姿を見るのは辛いので、マスターの宇垣財閥のおかげで復興が進み始めると皆が喜んだ。



その少年達を見かけたのは偶然だった。

ここは千葉県○○地区。

服は泥だらけ。

顔は痣だらけで頭からは血が出ている様子で只事じゃなかった。

2人組だったのだが悔しそうに泣いている。体格が大きめな子どもの方のケガがかなり酷く見える。

服の汚れ方も酷い。



こちらの世界では憲兵は恐れられており、笑いかけても中々話をしてもらえない事も多い。


この点も向こうとこちらでは大違いだった。


向こうの世界では軍隊の風紀を守り、

国民を守ってくれる軍人の警察官さん。って感じで思われており、警察とは違う制服を着たお巡りさんと見られていたから、それほど怖がられてはいなかった。


例えば軍人が喧嘩している場合はお巡りさんが逮捕して説経してもおかしくない。


お巡りさんがたっぷりと説教した後で我々が更に説教する感じになっていて

警察との協力関係は良好だ。


憲兵は特高や警察とも力を合わせて犯罪組織を取り締まる。

そういう役目だった。



で、少年達は家に入って行った。

怪我の酷い少年を支えていた子は

それほどのケガでもなさそうだが

服は汚れて痣もあるから殴られているらしい。そのもう1人の少年はすぐ近くの家に入って行った。

近所の子どもらしい。


これは捜査畑で治安を維持してきた俺の感なのだが、あの少年から事情を聞きたくなってしまったのだ。


気になってしまうと、ついつい調べてしまうのが俺の悪い癖だ。



『こんばんは。申し訳ありません。』


「はい。どちら様でしょうか?」

と言って出てきたのは少年よりも少し年上のお姉ちゃんだった。

どことなくだが、星飛雄馬のお姉ちゃんに似ている。

お父さんは似て欲しくないものだ。

星一徹だっけ?


『私は陸軍で衛生兵をしている者です。

さっき、ちらっとこちらのお子さんが

ケガをして歩いているところをお見かけしまして、、、

医薬品を持って来たので、是非お子さんを見させていただけないでしょうか。』


「でも、、、」

『あんな大地震があったんです。

困った時はお互い様と言うではありませんか。

診療費の事はお気になさらないでください。

被災者の方々を無料で治療したり、

診療したりする事が今行われつつあるのです。

次には健康診断の会場でお会いするかもしれませんね。』


と言って俺は笑いかけた。

俺は美男子だからお姉ちゃんは照れているようだった。

頬が赤い。


「実は弟のケガが心配だったんです。

買い物から帰ってきてすぐなので、まだケガを見せてもらっていないんです。

よろしくお願い致します。」


この家は星家のような狭い家だった。

少年は布団に寝ていたがうなされていた。


布団をめくると少年はランニングと下着姿だった。


少年の身体はあざだらけだった。

殴られた痣だ。

顔も殴られている。

酷いものだ、、、


少年はぐったりとしていた。

鑑定魔法で重症でない事がわかっていなかったら軍の病院に入院させる事を考えただろう。


一体誰が、こんな酷い事をしたのか、、、

許せないなと俺は思った。



(ここは下町ですからね。

噂になったら、こちらの家族が困るでしょうから、彼は医師の白衣を身につけて、憲兵の身分を隠しています。)

車は錬金工場内に収納し自転車でここまで来ています。

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