152話目 1914年のアメリカ。
大統領選挙に勝ち二期目に突入し、
国家予算的にも負担だったサウスカロライナ級戦艦達の建造費用の支払いが終わり始め、後継者候補の事も考え始めたブライアン大統領。
支持率も高いブライアン大統領の支持する民主党の大統領候補が当選する可能性が高いでしょう。
『やはり、トーマス・ウッドロウ・ウィルソン候補を支持してバトンを渡すべきかな。』とブライアン大統領は思っていました。
「行政学の父」と言われるほどのウッドロウ・ウィルソンならアメリカを導いてくれると、彼を信頼していました。
(共和党の人間ですがウィリアム・タフト知事にも親近感があります。)
それにしても、前任のセオドア・ルーズベルトの負の遺産に振り回され続けた日々は大変でした。
あの敗戦さえ無かったらと思わざるを
得ません。
現在のアメリカの政治は史実とは大きく違います。
大統領選では共和党の大統領候補が圧倒的に有利で2期連続して大統領をしている民主党の大統領は第7代大統領のアンドリュー・ジャクソン(1767-1845)以来2人目です。
(私以外の民主党の大統領も共和党の大統領が荒らした政治の立て直しに1期目の任期を丸々使ってしまい、それで再選ができなかったのか?)と
思って冷や汗が流れてしまいました。
セオドア・ルーズベルトがあれほどの
大失敗をしたのにタフト候補を相手に
かなり巻き返されたし、、、
残りの任期は僅か2年、、、か、、、
このホワイトハウスの執務室からも
青空に浮かんでいる飛行船の姿が良く見えます。
全長は200mもある大型の飛行船です。
イギリス、フランス、オーストリア・ハンガリー帝国、イタリア、ロシア、そして飛行船の本場と言えるドイツも日本に負けじと飛行船の開発に力を入れていますが、ドイツがやっと300mクラスの飛行船を建造し始めたところであり、日本には遥かに大きさで負けています。
ブライアン大統領も500mの日本の大型飛行船は見た事がありますが、700mの飛行船はまだ見た事がありません。
その超大型飛行船を見た時、まさに絶句した思い出が蘇ってきます。
その超大型飛行船のおかげで宇垣マーク1が日本から空輸されるようになり、今では大勢の議員達がマーク1に乗れるようになっています。
あの新型戦艦(美濃や薩摩)にせよ、
アメリカでも大人気なマーク1にせよ、驚きと言わざるを得ません。
ルーズベルトの愚か者のせいで大量に建造されてしまったサウスカロライナ級戦艦、、、主砲は8門が搭載されていますが、1万6000トンの排水量の戦艦では力不足であり、1対1の戦いで勝てそうには見えません。
主砲を12インチ(30.5cm45口径砲)から13インチ(33.02cm45口径口径砲)
に上げられないか海軍に尋ねたのですが、無理だという返事が上がってきました。
と、いうより12インチ砲を全門斉射すると反動を船体が受け止める事ができずに砲弾の落下する場所が散らばるので、4門ずつの斉射をするしかないと
言われました、、、
更に、人員不足が深刻なので、アイオワやメイン、ミシシッピ級の2隻も売る事になりそうという悲惨な事になっています。
旧式なアイオワやメインのような戦艦はともかく、ミシシッピ級の2隻はできたばかりの新品なだけに
もったいないと思ってしまいます。
(海軍は欠陥品戦艦は早く売って失敗を隠蔽したいと思っており、売却に積極的ですが、、、)
コネチカット級の最後の生き残りのニューハンプシャーだけは売りたくないと手立てを考えるブライアン大統領
なのでした。
(海軍の中からはルーズベルトが建造したばかりの装甲巡洋艦も主砲4門の
旧式なので売却してイギリスのインヴィンシヴルや日本の薩摩のような高速戦艦を建造するべきだ!と言う声が聞こえてきています。
『完成したばかりだろうが!』
と、怒鳴りたくなる大統領なのでした。
ブライアン大統領は人員不足の解決の為に水兵達の待遇改善に乗り出します。
艦内での食事の改善も行います。
水兵達の給料を1.5倍に増やしました。そのおかげもあって、ようやく海軍の水兵の人数は増加傾向になりました。
旧式戦艦のみならず、コネチカット級のニューハンプシャーや建造したばかりの装甲巡洋艦達すら、ほとんど動かせず、水兵の訓練用の艦になってますが、、、
『1年後にはサウスカロライナ級戦艦8〜9隻分の人員が充足できそうです。』との報告を受けました。
『海軍は再建途中であり、現時点では戦闘を行う事は不可能です。』とも言われました。
現在のアメリカ海軍には戦艦6〜7隻分程度の人員しか居ません。
全部のサウスカロライナ級戦艦に人員を充足できるのはいつになる事やら、、、
士官が全然足らないので充足できるのはあと4年はかかるとの報告がきています、、、
日本の海軍の水兵達はダンジョン牛、
豚、馬、鶏のモツの煮物をたっぷりと食べ、アメリカ海軍の水兵より遥かに
良い食事を食べていると大統領が知ったら何と思うのやら。
プエルトリコやキューバでも戦死者が毎週出ています。
プエルトリコもキューバも重荷に思われつつあります。
ブライアン大統領は海軍長官の顔を見つつ、アイオワ、メイン、ミシシッピ級の2隻と他の旧式艦艇の売却書類にサインをします。
アメリカ海軍の保有する旧式艦は全部が売却されました。
(まるで倒産寸前の商店の一斉棚卸し処分のようだな)
と皮肉に思ってしまいます。
まぁ、イギリスもドイツも旧式戦艦や
装甲巡洋艦は戦闘に耐えられないと思い、スクラップとして売却してるのですが。
これらの船は、すべてが日本に買われて日本で解体される事になるでしょう。
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