149話目 李書文助ける。

ここ清国の天津(そろそろロシア帝国が自国領土と言い出すかも。)

にも凄腕の武術家がロシア軍に対してゲリラ戦を戦っているという噂が広がってきました。


忍者の職業持ちであり隠密系スキルを持ち、情報収集をしていた服部半蔵と

伊賀衆は、その噂に興味を持ち、

武術家を探し始めました。


どうやらロシア軍は多くの兵士を

殺されており絶対に武術家を殺そうと包囲網を広げ、追い込んでいる様子です。

100名以上で包囲しており、2個小隊以上の兵力で囲んでいます。


そこは天津郊外の小さな村です。

村人ごと武術家も殺害しようとしている様子に見えます。


実は伊賀衆もロシア兵を殺していますから、そのせいもあって規模が大きいのかもしれません。


小さな村に多くの銃弾が撃ち込まれて家がボロボロになっています。

朝になったら掃討作戦が始まるでしょう。

助けるのなら、夜明け前の今が最後のチャンスです。


伊賀衆は気配を消しながら重機関銃を装備した20名ほどの南側包囲軍を後方から包囲します。

伊賀衆は全員が人間そっくりの人型ゴーレム。

念話にてターゲットを割り振り、一斉射撃するとほとんど全員に命中させる事ができました。

サイレンサーを組み込んだ消音ライフルの一斉攻撃です。

これが可能だからゴーレム兵は強いんですよね。


伊賀衆達は次々に包囲しているロシア軍を撃破し、全滅させました。


『我々は味方だ!撃つな。』

と北京語で言いながら村の中に入ると

大勢の村人が亡くなっており、壮年の

小柄な男性が倒れていました。

息があるのはこの男性だけです。

脚の銃創に浄化魔法をかけて綺麗にし、治癒魔法をかけると荒かった息が

落ち着き始めました。

鑑定魔法で男性のステータスを見ると、そこには驚きの名前が!


『李書文』!!

『あの八極拳の達人の李書文老師か!』



作者の補足です。↓

李書文(り しょぶん、Li Shuwen、1864年 - 1934年)は中国・河北省滄州市塩山県出身の中国武術家。字は同臣。李氏八極拳の生みの親。


武術の郷と名高い滄州の貧しい農民の家に生れた。

生活苦のため劇団に入ったが、

足に重傷を負い家に帰されることになった。

故郷に戻った李書文少年は、武術を学ぶことを決心し、黄四海、張景星、金殿陞より八極拳を、黄林彪より劈掛掌を学んだ。昼夜を問わず練習に没頭し、急速に実力をつけた李書文は、師や兄弟子からも一目置かれるようになっていった。

練習の際、誰に対しても容赦がなく、常に対戦相手に怪我をさせ、殺傷してしまうこともあったため、李狠子とあだ名された。


李老師の弟子の劉雲樵によると、

李書文が黄四海の弟子だというのは、韓化臣の誤った情報であり、

李書文は金殿陞の弟子である。


劇団をクビになる程の脚の怪我を負った李書文が、(下肢の強大な功夫を必要とする)武術を修める事が出来たのは、金殿陞が医術に堪能であり、金殿陞に脚を治してもらった為であり、それこそが金殿陞に弟子入りして八極拳を習う事になったきっかけであった。




『『李書文老師』の為ならやむを得ないか。

老師、申し訳ありません。』

服部半蔵は李書文に睡眠魔法をかけ、

熟睡させるとまわりを索敵魔法で探りました。

人間の生き残りは李書文老師だけのようです。

ロシア軍の装備を回収していた伊賀衆を集めると半蔵は転移魔法で日本の皇居に転移しました。


実は主人公の宇垣昌弘は『拳児』の漫画のファンでした。

八極拳は学んでいないものの、八極拳のDVDを見て独学で学び、勇者になって優れた身体能力を手に入れてからは

格闘をする時は八極拳のような戦い方をしていましたし、ゴーレム兵達の徒手格闘術も八極拳ベースの戦い方を行わせていました。

(空手と柔道も道場と学校で学んでおり、棒術を行う時の動きは空手の癖が

出てたりしてますが、、、)


昌弘はずっと練習してはいたものの、職業に八極拳や武術家が出る事はありませんでした。

こっちに来てからはデスマーチな忙しさでしたし。

勇者時代は剣術と魔法ばかり練習して

ましたしねえ。


で、ゴーレム達にも八極拳と李書文老師のエピソードの話はよくしていた

わけなのですよ。


なので服部半蔵のような古参のゴーレムは李書文老師の名前を常識として知っていたのです。


その後、造血薬を投与され、血液型が検査され、輸血された李書文老師はダンジョン内の療養所に入院する事になりました。


目を覚ました李老師はここが日本だと聞き驚いていました。

半蔵は『出血が多く、貴方は危険なところでした。』と話し、近くの病院は

ロシア軍が居て運ぶのは無理だった事、ひとけの無い場所から船に乗せて

ここまで運んで療養していると説明しました。

名前を聞き、『李書文』と聞くと、

まさか高名な武術の達人の李書文様ですか?と驚いて見せました。


李書文老師は健啖家で見る見るうちに、元気を取り戻していきました。


玉川温泉の露天風呂で湯治しながら、

宇垣昌弘、服部半蔵と伊賀衆は李書文老師とどんどん仲良くなっていきました。命の恩人だからかもしれません。


そして勇者である宇垣昌弘が李書文老師と手合わせできるほどの人間だから

だったかもしれません。


李書文老師は身内には非常に優しい

人でした。

若い時、相手に怪我をさせてしまった

事も軽く当たっただけなのに大怪我に

なってしまい本人も当惑する事があったとか、、、

晩年も、そんなつもりは無かったのに

相手を傷つけてしまった事があり、

苦悩に満ちた表情をされる事がありました。

宇垣昌弘もレベル99の勇者です。

だから李書文老師と手合わせできましたが、普通の武術家ではとても無理でしょう。

李老師は手加減されているのですが、

昌弘ですら、冷やっとするほど攻撃が

鋭いです。

身体防御魔法が無ければ手加減されて

いても大怪我してたでしょう。

レベルの高い昌弘だからこそわかりますが、李書文老師は強くなり過ぎてしまったのです。


ゴーレム達は李書文老師に八極拳を教わる事になりました。


こうして八極拳を教わる事ができるのは命の恩人だからでしょう。

そして、李書文老師の祖国を侵略しているロシアと戦い、李書文老師を助けたからでしょう。

そして、ゴーレム達が寝食を共にして

熱心に八極拳を学んでいるからでしょう。

昼も夜も無く若き日の李書文が武術を学んだ時のようにゴーレム達も熱心に

練習し続けています。


宇垣昌弘も時間をできるだけ作り

八極拳を学びました。


服部半蔵と伊賀衆は李書文老師の

李氏八極拳を受け継ぐ事が任務になりました。

彼らは李老師の付き人となり、正式な

内弟子になり八極拳を学び続けます。

内弟子ではありませんが1000人以上の

ゴーレム達が八極拳を学びます。


宇垣昌弘は日本の古武術も学んで後に

伝えなくては!

と気がつき、大東流合気柔術や他の武術の達人に学ばせにゴーレムを派遣します。彼らは内弟子になり、金銭面では

師匠を助けます。


宇垣昌弘は八極拳士のジョブを手に入れる事ができました。


熱心に李氏八極拳を学ぶ弟子達が居て

暮らしに何の心配も無くなると李老師の性格が優しくなる事に皆は気がつきました。


李老師の居たのは面子の国の清国であり、武術の世界ともなると些細な事で

立ち会えとか言われるんでしょう。


しかも相手も大物で弟子もいるから、

勝てば勝つほど厄介な事になりかねない。実の息子を甥だと言ったのも

恨まれた相手に何かされないかと警戒していたのかもしれません。


そういえば、李老師のエピソードには

戦いを挑んできた相手に力の差を教えて追い返すエピソードも多いですね。



達人と言っていい宇垣昌弘ですら李書文老師を尊敬し師匠と慕い、熱心に学ぶ弟子達が居る環境は居心地が良かったのか、李老師は腰を落ち着けて李氏八極拳を伝え始めました。

世話をする女性との間に子どもも生まれました。

猪や牛や馬や熊の魔物が相手ならいくらでも武術の腕が試せますしね。


『李老師なら1人で魔王が倒せそうだな。』と昌弘は思うのでした。

魔物の猪をあっさり一撃で倒すとは、、、

李老師、強すぎです。

レベルアップして更に強くなってる。

魔物の猪は素手で倒せるんだ、、、

と感心してしまいますよ。

魔猪はタフなんですがねえ。


強くなり過ぎていた李老師は余裕があったので、人が相手だと基本的に待ってからの一撃という戦い方でしたが、

遠い間合いから瞬時に月の輪熊の魔物の懐に入り、熊がぶっ飛んで即死しています。

魔物熊が相手でも一撃ですか、、、


思う存分戦える相手がいるので

李老師は上機嫌です。


穏やかに暮らせる日々。

李老師は大満足されているようです。


(ヤバい。

拳児の原作者の松田先生の師匠の劉雲樵老師はこれから弟子入りする人だから、李老師と出会えない。)


甲賀衆や古参のゴーレム達が李老師を慕って1000人以上が昼も夜も修行に

明け暮れてる、、、

しかも、『修行が何よりも大切です。』

なんて李老師に言ってる、、、

李氏八極拳は日本有数の大規模武術に

なっちゃうやん。

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