126話目1911年正月。ユダヤ人自治区

1911年になった。

この2年は激動の2年だった。

いや、アメリカとの戦争を忘れそうになるくらい忙しい2年がやってくるとは

思ってもいなかった。


まさかモータリゼーション時代の到来というのが、ここまで車や3輪車やバイクが売れる時代だとは思っていなかった。

まさか超高級車の『宇垣マーク1』、

三輪自動車の『宇垣ミゼット』、

オフロードバイクの『宇垣125』が

こんなに売れるとは思ってもいなかった。


考えてみれば、史実でT型フォードが

売れ始めた頃のフォードの工場規模は小さかった。

そこから始まって20年間で1500万台もT型フォードは売れているし、その後に発売されたシボレー スペリアも同じくらい売れているのだ。世界中に売れているのだから、3000万台の車を欲しいと思うだけの潜在需要があったということなのだろう。

日本でも大地主はマーク1とミゼット

を持っていたりしている。

自動車保有台数は1万台を突破している。

別にマーク1もミゼットも安売りしていない。

対米戦勝の時は日本は高度経済成長して10年以上が経過しており、民間もかなりの富の蓄積がされていた。


富農ならミゼットを買って維持できる

くらいの経済力を身につけつつあると

いう事だ。


農村改革も進み、宇垣財閥系列の農村では小規模農家も貯めたお金で自分の土地にして自作農になりつつある。


道路の舗装も進みつつある。

コンクリート舗装だが。

アスファルト舗装の道路も増えつつある。

そのように豊かになりつつある日本だが、欧州、特にポーランドからロシアにかけてのユダヤ人達が組織的な迫害を逃れて日本に居住し始めた。


これって史実でもあったのだろうか?

確か、継続的に何回もユダヤ人迫害(虐殺)はあり、日本を経由してアメリカに移住した事は何回もあったがアメリカが不況で行き場を失ったらしい。

(グレートホワイトフリートの件があったし、アメリカ側は石油不足だしで

史実より太平洋客船の運行が少なくなっています。

日本人のアメリカ移民も少ないですしね。)


ふむ。

よし、受け入れよう。

ユダヤ人自治国にちょうどいい場所が

あるじゃないか。


俺にそっくりな影武者と護衛達はウラジオストクに上陸しシベリア鉄道にて

モスクワに向かった。


モスクワの日本大使館の個室に入ったら影武者と俺がチェンジする予定だ。


ロシア皇帝一家がいるのは首都のサンクトペテルブルグだ。


ゴーレム達はロシア皇帝の側にも、

日本大使館の武官にもいる。


ロシア帝国と大日本帝国との間で戦争が起きないように朝鮮半島にユダヤ人自治国を作ってロシアと日本が認めて

数年以内に独立させようというのが、

今回のロシア訪問の目的である。

おおよそ38度線より南と済州島は現在は無人であり、朝鮮半島は空き地になっているためちょうどいい。


ニコライ2世は、反ユダヤ主義の宣伝とテロ活動を盛んに行なっていた極右団体「ロシア人同盟」を支援しているので、全ロシアからユダヤ人を追放して

朝鮮南部に押し込めるのには賛成だろう。ポーランド方面やリトアニア方面からもユダヤ人を追放できる。

また、オーストリアハンガリー帝国や

ドイツ帝国からもユダヤ人を追い出せるのなら全欧州が陰では大賛成するかもしれない。

なんせ東洋は東の果てだ。


ユダヤ人達にとっても自分達の国、

安心して住める国を持てるのは良いだろう。

差別に敏感なユダヤ人達だが日本は世界有数のキリスト教徒が少ない国。

日本は欧州とは全然違い、居心地がいいと彼等も言っている。

隣国なら日本も助けられる。

安心できる隣国を持つ事ができて、

日本にとってもメリットは大きい。


ニコライ2世陛下は上機嫌だった。

ニコライ2世は宇垣昌弘が日本の大陸進出反対派だと知っている。


清国とロシアが戦争になればイギリスが暗躍しそうだし、日本は清国を支援するのでは?とニコライ2世は疑っていたが、まったく日本は動こうとしないどころか、清国に対して貿易はするが武器の支援はしない。

更には緩衝地帯としてユダヤ人国家を

朝鮮半島に作り清国の北部から中部の

ロシア支配を黙認するのだから上機嫌なのも当然か。

他国との摩擦になりそうな場所に国を置くのはよくありがちな政策である。

(史実のソ連もやってた、名ばかりのユダヤ人自治区っての。)


清国の北部と中部をロシアが支配し

ロシアの国土が広がるのだから、

それに対応しての提言だとニコライ2世は思い込んでいる。


そして昌弘はロシアにとって不必要な

社会主義者達をシベリアの果てか、

朝鮮北部の方に追放しては?

とニコライ2世に提案した。


外交交渉は上手くいき、朝鮮南部は

ユダヤ人自治区となりユダヤ人がロシア全土から追放されて朝鮮南部へ移住することが決定した。


昌弘はゴーレムから報告を受けたが、

欧州における社会主義の広がりは危険との事だ。

ロシアは清国に勝利を重ねて領土を広げているので安定しているが、安心はできないという。


どうやら、共産主義者のグループを

密かに殺害し力を低下させているが、

予想以上に民衆の不満が高まっているらしい。

警戒しなければな、、、


しかし、イギリス国王の『ジョージ5世とニコライ2世』1913年の写真を見た事があるが、ほんとそっくりである。

入れ替わっても誰も気がつかないって、∀ガンダムのキエル・ハイムとディアナ・ソレルのようである。

こっちはオッサンだが。


ニコライ2世の母マリアの姉がエドワード7世妃のアレクサンドラ・オブ・デンマークであり、ジョージ5世の母にあたるのだから当然か。


イギリス国王ジョージ5世はニコライ2世の従兄だもんな。


入れ替わっても親族でさえ気付かない

って面白いよな。


まぁ、ニコライ2世の方には日本に滞在時に入れた龍の刺青があるから、そこは違うのだが。


ニコライ一家が乗っている愛車も宇垣マーク1である。

外出着の革のコートも日本製の(ステラーカイギュウ製)革のコートである。

靴下、肌着、下着も日本製の超高級シルク製をご愛用されているらしい。

(実は衣類全部が超高級シルク製である。)


さて、歴史が変わろうとしているな。

全欧州のユダヤ人って何人くらいなのかな?

迫害されるよりは安心できる国に住んだ方が良いと思うのだが、、、


ニコライ2世は朝鮮半島は古くから、

罪人が流された辺境の地だったと側近から聞いています。

それにイザベラ・バード「朝鮮紀行」

なども聞いているようです。


東の果てにユダヤ人を追放できるので

ニコライ2世は上機嫌です。


こうして東の果ての辺境とイメージ付けさせる事で、これ以上アジアに目を向けないようにしてるんですけどね。

どれほどの効果があってくれるか。


アフガニスタン経由でイギリスに富をもたらしている国、インドに目を向けてほしいのだがなぁ。

それかオスマン帝国か。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る