109話目デスマーチから始まる自動車狂想曲①
日本では年間に1万台の自動車を製造する大規模工場の最終チェックが進んでいました。
ベルトコンベアーを導入した流れ作業で車を製造する工場です。
『羽柴さん電報です。』
電報を見た小一郎は絶句しました。
『1万台じゃあ全然足りない。1万台規模の工場をもう1つ頼む』
(この工場では1つの生産ラインで
最初は1日に2台のミゼットを生産し、
3台、4台と増やしていく予定でした。
4時間で1台生産するのが目標です。
20レーンの生産ラインがあるから、
かなり生産ができるでしょう。
『本多さん電報です。』
平八郎が電報を見ると、
『ニイタカヤマノボレ。』
「とうとう始めるつもりなのかマスター」
、、、
平八郎の受け取った電報は極秘計画の
開始の合図なのです。
それは宇垣財閥が稼いだ金をばら撒いて、更に日本の経済成長を加速させるというものでした。
つまり、鋼鉄の生産量を更に倍増させる。建造ドックが少ないのなら宇垣財閥が金を出すから作らせる。
というものです。
億単位の金をばら撒く計画ですが、
鋼鉄が足りないのです。
自動車運搬能力も足りないのです。
『金は出すから3万トンくらいの船を作れるようになれ!』ってわけですね。
各造船メーカーは大忙しになりがちだます。
3万2000トン級の自動車運搬船10隻、
3万2000トン級の原油運搬船8隻が定期的に
やって来るようになったカリフォルニアでは、それらの船は宇垣艦隊と呼ばれる様になります。
産油国って凄いですね。
マジで儲かって仕方がありません。
シアトル、サンフランシスコ、サンディエゴにどんどん原油が運ばれます。
原油価格が高い時に売れるだけ売る作戦なのです。
売っているのが大陸の大慶油田の原油なだけに更に飯うまです。
1万台生産するのに必要なパーツの事を考えれば膨大な部品が必要になります。
ゴーレム達はフル稼働で部品の製造を始めます。
ニッケル高張力バナジウム鋼板がプレス機でどんどん立体成形されていきます。
塩害が酷い海の近くの街ではミゼットの堅牢さが驚かれます。
フレームもボディもクランクシャフトもメッキされていますし、防汚&保存&劣化防止魔法は防塩効果も高いです。
他のリヤカーメーカーのリヤカーは海の近くだとあっという間にサビ始めますが宇垣のリヤカーは3倍以上長持ちします。
車やバイクはもっと品質が高いです。
主人公は他のメーカーとの品質の差を
見せつけるには防汚&保存&劣化防止魔法がてきめんだろうと確信しています。
マーク1やミゼットや125を整備したり
点検するたびに浄化魔法で新品同様に綺麗にして防汚魔法、保存魔法、劣化防止魔法を重ねがけしているのです。
さて、宇垣自動車のサービス体制に慣れたユーザーは別のメーカーの車に満足するでしょうか。
全然汚れず、綺麗な状態が長く続き、
点検のたびにピカピカの新品同様の美しさになって帰ってくる愛車。
他のメーカーの車では雨が降れば汚れ、すぐにみすぼらしくなってしまいます。
素晴らしいワックスができたら、
そのワックスを使用しつつ魔法を使うだけですからね。
圧倒的に宇垣自動車は有利なのですよ。 ふふふ、、、
さて、ミゼットですが、4シーター
のピックアップトラックモデルや
6シーターモデルも売りに出しました。
その分荷台は小さくなったり、無くなってしまいますが、家族5人が乗れるミゼットは可愛い自家用車として世界的に大ヒットします。
ミゼットは完全にT型フォードの座を奪ってしまいました。
T型フォードはフォードが初めて作った量産型の車というだけの車になってしまいました。
フォードさんが製造した車ですが初期の車やバギーなどは写真を発見するのも大変です。
T型フォードもそれに近くなってしまいました。
フォードさんはミゼットやマーク1も愛車にしているからこそ、道路を走っている時の注目のされ方が全然違うのがわかります。
確かに生産し易さはT型フォードの方が上でしょう。
フォードさんは上手く言葉を当てはめる事が出来ずにいますが、なんとなく気がついてしまいました。
アメリカのお客さんはT型フォードに
魅力を感じていないと。
量産を進めて値段を下げる事ができていれば、あるいは売れたかもしれませんが、現時点のT型フォードの値段は900ドル。
お客さんはミゼットやマーク1ばかりを見て、T型フォードを見てもくれません。
ヘンリーフォードはT型を作るのをやめてミゼットの生産ラインを増やそうかと思い始まるのでした。
T型フォードは売れないと見切りをつけてしまいました。
史実ではGM社が1908年に買収した
エルモア・マニュファクチャリング・カンパニー(Elmore Manufacturing Company )社は1893年に創業した米国オハイオ州クライドの自動車メーカーです。
ジェームズ・ベッカー、バートン・ベッカーが創業者で、社名は2人の育った創業の地からとりました。
2ストロークエンジンを使い、直列2気筒、単気筒。のち直列3気筒も使いました。
最も小型な1904年型の「エルモア・コンバーチブル・ラナバウト」(Elmore Convertible Runabout )は4人が乗車でき650米ドルで販売されていました。当時のアメリカ市場で最も安価な自動車なのに歴史に名前が埋もれてしまっています。
ミゼットより安いのに悲劇ですよねえ。
良さそうな車だと思うんですけど。
そして、このエルモア社を60万ドルで
買収したのが史実のデュランドさんの
解任に繋がります。
このアメリカでは大不況のせいでエルモア社の買収は無くなっています。
そのミゼットですがクラクションも
『ミッ』っという音が鳴る可愛らしいクラクションが付いています。
マーク1は量産され大ヒットした超高級自動車として有名になり、ミゼットは量産され続け愛され続けた大ヒット自動車として有名になります。
モータリゼーション時代を到来させたのは宇垣自動車のマーク1とミゼット
と125になってしまいました。
ゼネラルモータースも同じ決断をしました。自動車のラインナップを整理してマーク1とミゼットの製造に集中することを決意しました。
史実のT型フォードは値段が290ドルになった事もあってか、どんどん新規のお客様を開拓し売れ続けたのですが、
900ドルの値段ではそうはいかないようです。
(なんせもっと安い値段のエルモア社の車すら売れていませんからねえ。)
ミゼットもマーク1も今までフォードやGMが生産してきた車とは勝手が違って、フォードもGMも生産スピードを上げるのに苦労してきました。
5000台規模の工場を立ち上げるというのは中々の難事業で今年1年は宇垣自動車グループの傘下の各メーカーにとってデスマーチな1年でした。
そして来年は更にデスマーチな1年に
なります。
4&6シーターミゼットがマイ・ファースト・ファミリーカーと言われるようになります。
ミゼットをこよなく愛するミゼットマニアすら誕生し始めます。
ラリーのレースで8位になるとは凄いな!と褒められるのはミゼットくらいでしょう。
でも、、、まさか、西暦2009年の100年後になっても生産ラインが存在し続けて、ミゼットが売られ続けるほど
愛される車になるとは主人公もゴーレム達もフォードさん達も思っていませんでした。(史実と同様に小型の3輪
トラックは需要があるのです。)
史実のアメリカでは軽トラが愛されて、色々な改造車のベースになったりもしていますが、ミゼットも色々な改装車のベース車両として使われるようにもなるのでした。
ミゼットトレーラーもオプションパーツとして発売されました。(1910年)
このトレーラーは50ドルの値段以上の
価値があると言われるようになります。
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