108話目ミゼット大人気。
『マスターがマツダのT2000のデザインでミゼットを作ろうとした理由は
どことなくユーモラスで可愛らしいからでしょう?』とランサーに言われました。
ミゼットのデザインはマツダT2000を鳥山明先生がリファインしたような優れたデザインです。
オート三輪は最小回転半径が6mと小回りが効く反面、マイナスもありますが、そのマイナスはT型フォードのマイナス面と同じくらいです。
宇垣自動車のセールスマンはちゃんと説明していますが、マイナス面は他の大衆用の自動車も同じであり、
『ミゼットが欲しい』と言われ前金を払っても欲しいと言われるくらいです。
フォルクスワーゲン・ビートルは大ヒットして2100万台も売れましたが、
ミゼットも1000万台を超える歴史に名を残す名車になるかもしれません。
『そうか、、、史実ではT型フォードは売れ続けてはいたが、高く売れるなら売ってシボレー スペリアを買おうとする人間も多かった。スペリアも大ヒットしていてT型フォードを追い抜くくらい売れている、、、』
『史実で、安くなったT型フォードが次々と自動車オーナーを開拓する一方で、自動車好きになった人は新しい愛車を求めて買い求めるモータリゼーションの時代が始まりかけているんですよ。』
『マーク1を家に入れて一緒に暮らしたいってオーナーさんが多いんです。
125を部屋に入れているオーナーさんは
大勢いますよ。』
確かに、デザイン以外は小一郎に丸投げしていたミゼットですが、中々可愛いし運転してて楽しいから、最近は主人公も運転する事が増えています。
ミゼットに魅力があるのは確かでしょう。
楕円形の丸いライトは目に見えるし、
三輪ゆえの尖った鼻は可愛らしい犬のようにも見えます。
ああ、なるほど。
これから、車の中には可愛らしい車も増えていきますが、ミゼットは初めて世界の人々の前に現れた可愛く見える車なんだ。
しかもミゼットのライトの内側には黒目に見えるシールが貼ってあるし、
宇垣自動車のセールスマンはまつ毛みたいな塗装をして、より可愛く見えるように改造している。
塗装も可愛い塗装にしてるし、、、
たしか、垂れ耳を書き加えていたりもしていたな。
その可愛さがお客さんを魅了しているのか。
その一方で125は未来のオフロードバイクにそっくりで、未来を先取りしているような、この時代の他のバイクとは
全然違うデザインがメカ好きの人間の心を鷲掴みしているのでしょう。
宇垣昌弘も部屋に入れて同居しているし。
そしてマーク1はエンジン付きの馬車ではなく、世界に初めて誕生した超高級車です。
いつかは乗りたいと憧れる車なのがマーク1なのです。
金持ちが注文生産で頼んでいる超高級車ですがマーク1ほど洗練されたデザインの自動車はありません。
4500ドル出しても作れないと言われる車、それが宇垣マーク1なのです。
ミゼットも同様です。950ドル以上の価値がある車です。
直感がミゼットとマーク1と125は
メガヒットすると囁いています。
今回の訪米ですがキャデラック社とも
製造契約を結ぶつもりでした。
相手もミゼットの生産に乗り気です。
株式上場前のキャデラック社の株の
49%と引き換えなら工場の建設費用なぞ惜しくありません。
他にもドイツのBMW社、ベンツ社、
イギリスのローバー社、とも製造契約の話を進めています。
これらのメーカーはまだ大きな工場を持てていません。
年間の生産能力は桁が少ない状態です。
財務面からしても脆弱です。
今なら大規模な工場と引き換えに
大量に株式を得て傘下にする事が可能です。
今は後の有名メーカーも大メーカーに次々と買収されて傘下に加わっている
自動車メーカー戦国時代。
戦艦を10隻以上も建造し、大国アメリカの国家予算を超える資産を持っている宇垣財閥なら多くの自動車メーカーを傘下にする事も可能です。
史実のGMの社長のウィリアム・デュラントがやった事ですが。
このまま成長したら、宇垣自動車は世界一の自動車会社になりそうです。
いや、年間に製造できる自動車の量とか、規模でいえば、すでに世界一なのですが。(フォード、GMのブレイク前に傘下にして自社製品を製造させている為。)
自動車の育ての親と呼ばれるのかと
思うと困惑してしまいますな。
世界の、どの自動車メーカーも今がチャンスだとは思っています。
だが売れ筋商品が各メーカーにとって開発経験が無い超高級車のマーク1とか、ミゼットで各社とも困惑しています。他社の製品は全然売れません。
ですが、困惑してるのは宇垣自動車も同じです。
まさか、こんなに売れるとは思っていませんでした。
ベルトコンベアーを使用して流れ作業でマーク1やミゼットを生産する1万台規模の工場の建設をようやく出来そうな時に、更にもう1工場をすぐに立ち上げなきゃなんて、、、最新の設備を量産できる錬金工場スキルがなかったら途方に暮れていたでしょう。
またゴーレムの数を増やさなきゃいけない。
増やすゴーレムは何万人なんだろう。
なんか、真っ白に燃え尽きそうだ。
ヘンリーフォードさんに更に工場の規模を倍に増やしてくれと頼んだら、
魂が口から出ていたが、、、
その隣りではデュラントさんが口から魂を出していた。
年間に5000台製造する規模の工場の建設のような1大プロジェクトはシャレにならない忙しさだからだ。
しかも、立ち上げて大量生産して品質管理しなくてはならない。
超高級自動車のマーク1の『品質管理』だ。
『安心してくれ。キャデラック社もデスマーチに加わってくれるそうだ。』
『オールズモビル社にも声をかける。』
『どちらもそれほど生産能力は高くないですよね。』
(大不況で銀行が貸し渋りしていましたし、混乱していたアメリカでは自動車産業の夜明け前でした。史実のT型フォードの市場開拓前の時代です。そして自動車とバイク産業を開拓しているのが宇垣自動車な状態です。)
『ビュイックが参加してくれれば楽になるさ。』
(ビュイックはGMの中核になってる企業です。これから買収をしたいとデュラントさんは言っていましたが銀行側が
渋った為トラックメーカーしか買収できていません。
そのビュイックが本腰を入れてマーク1の製造を始めます。)
『それでも足りませんよね。』
『このビッグウェーブを乗り切れば
我々は更に大金持ちだ。
ハッピーな未来だけを考えようじゃないか。』
『ハッピーな未来ですか、、、』
『ヘンリー、また注文が来た。
フォードの工場の規模を5万台増やして
10万台に増やしてくれ。って声が未来から聞こえて来ましたよ。』
『私には10秒後の未来の言葉が予測できますよウィリアム。』
ランサーの物腰は柔らかです。
『それは、『ブライアン大統領に頼まれたんだ。マーク1が100台欲しい。』
です。』
皆が無言になった。
『と、大統領に頼まれたんだ。
マーク1の在庫は何台ある?』
ランサーは普段はビリーと親しみを込めて言っています。デュラントさんは40半ばですしね。
注文が更に増えるので大変になりそうだから、あえて『ウィリアム』と言っています。
作者の追記です。
(ウィリアム・クラポ・“ビリー”・デュラント(William Crapo "Billy" Durant, 1861年12月8日 - 1947年3月18日)は、アメリカ合衆国の企業家で米国自動車産業界の先駆者。馬車製造販売事業でミリオネアとなり、自動車産業創成期にゼネラルモーターズ(GM)を創業した人物。ウォール街(株式市場)では相場師としても名をはせました。
デトロイト流の自動車製造方法はヘンリー・フォードが築きましたが、
デトロイト流の自動車販売方法を築いたのはビリー・デュラントでした。
すでに考えていた有力者は幾人もいたが、実際に、顧客による選択、業界統合、自動車流通に関して先鞭をつけたのはデュラントがGMを組織したときでした。)
(彼はボストンでフランス系の子として生まれました。
6歳の頃に母子家庭となり、母方の祖父が裕福な家庭で、南北戦争時代にミシガン州知事を務めた名士一族であったため、祖父の地ミシガン州フリントに、10歳の時移りました。
学業途中から働き始めさまざまな職業を経験する中で天性の営業センスを発揮して、25歳の時に友人とともに馬車販売会社を起業します。
当初は下請けに出した馬車製造も含め、部品製造・組立・内装・塗装を自社グループ企業での垂直統合で効率をあげて大量生産をおこない、一方で全米各地に販売網を整備し、全米最大の馬車製造会社となり40歳を前にミリオネアとなっています。)
(それまではライバルの自動車を嫌っていましたが、この手腕を買われて40代半ばの1904年につぶれかかったビュイック社の事業を立て直してほしいと請われました。
技術力はあったが経営力がなく破産寸前だったビュイック社だったが、自身の馬車事業ですでに手がけていた生産の垂直統合、販売網の活用、プロモーション方法をビュイック事業に適用し、短期間で全米トップの売上に成長させ成功させ、同じ新興企業のフォード・モーターなどと全米トップを争うまでになりました。)
(次いで、ビュイック社を土台とした自動車産業界の企業トラストを目指して、1908年にゼネラルモーターズ(GM)を設立した。傘下には2年の間に30もの会社を束ね、ビュイックで行っていた垂直統合を、さらに多数の会社の企業合同による水平統合に拡大した。この時期の代表的な傘下企業に、オールズモビル、キャディラック、オークランド(ポンティアック)、ACスパークプラグなどがあります。)
ですが、これらの企業の買収を始める前にマーク1ショック、オイルショック、グレートホワイトフリートの敗北のショックがGMとビュイックを襲います。
デュラントさんは宇垣財閥のした事を
調べて絶句しました。
新型戦艦12隻の設計と製造(戦艦富士は改装ですが。)巨大ダムの建設、海底トンネルの建設、多くの傘下の企業を大企業に育て、宇垣財閥が超巨大財閥だと知ったからです。
その宇垣財閥が自動車業界を飲み込もうとしているのです。
あのスタンダードオイルより多くのタンカーを持ち、大油田を保有し、アメリカ屈指の大富豪と同じくらいのお金を動かせる人物が自動車企業の再編と
水平統合、垂直統合をして世界一の自動車企業グループを作ろうとしているのがわかったのです。
彼は一代にして大企業グループを創り上げた宇垣昌弘を側で見たいので、
宇垣財閥の傘下に入ったのです。
彼は大金持ちなので辞めてもいくらでも企業を作れますからね。
宇垣昌弘も『ウィリアム・デュラントさんの事を尊敬している』
宇垣自動車のビジネスモデルはデュラント・ビジネススタイルだ。
と言い続けました。
日本の宇垣財閥が世界のすべての有力自動車メーカーを統合して1つに纏めようとしているのだから皮肉です。
傘下にする緩やかな統合ですが。
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