98話目アメリカの大国ならではの悩み。

さて、史実なら大油田がドカドカと見つかってオイルラッシュに沸いていたはずのテキサスだが、火が消えたかのような有り様だ。

井戸をちょっと掘っただけで原油が滲み出てくるテキサス州なだけに、大油田があるのでは?と期待されていた。

隣のオクラホマ州には油田があるし。


だが、本格的に試掘を開始するとまったく採算ベースに合わない量が滲み出てくるだけなのだ。

1日あたりの噴出量がドラム缶で何本とかでは話にならない。

しかも、その量が出てくるのは最初の内だけで減り続けるのでは大赤字である。

日本でも原油が滲み出てくるだけの場所はドラム缶に移して運ぶ価値すらないのでそのままで放置されている。


アメリカで最初にオイルラッシュが起きたものの採掘量が少ない為にオイルラッシュが終わったペンシルベニア州

のようになるのか?と思われてしまう。

そして隣のオクラホマ州も滲み出てくるだけかと思われてしまう。


これが水か温泉なら湧き出る量が少なくとも、マシな扱いを受けるだろうが。


大勢のテキサス人実業家が石油の試掘で失敗し続けて破産していった。

それはカリフォルニアでも同様だった。


(史実の東テキサス油田は、アラスカ州を除くアメリカ合衆国本土で最大で最も豊富な埋蔵量を持っていた。

最盛期にブラック・ジャイアントの異名を誇った巨大油田である。

テキサス州のグレッグ郡中部、

ラスク郡西部、アップシャー郡南部、スミス郡南東部、チェロキー郡北東部の一帯に位置しており、

1930年10月5日に発見されて以来、30,340本の油井が掘削され、14万エーカーの面積から52億バレルの原油を産出した。

つまり、テキサスのオイルラッシュが

1908年に始まって20年以上大フィーバー状態だったテキサスに更なる大油田が見つかって周辺の州の経済の牽引役になったのである。(日本の江戸が大都市になって周辺を牽引したように、、、)


当時としては桁外れの産出量を持つこの巨大油田の影響で世界の原油価格は暴落し、中小の原油業者が次々と倒産するほどだった。

(つまり、テキサス以外のアメリカの石油は世界の原油取引価格に影響を及ぼすほどの算出量ではなかった。)

(テキサス内部でも算出量が少ない地域は衰退している。)


史実では採れ過ぎたテキサスの原油のせいで中小の業者が潰れたが、ここではテキサスやカリフォルニアの油田が枯渇し、採算があう油田が発見できずに採掘費用が嵩んで中小の原油採掘業者が潰れていった。


不況が続いていたアメリカ経済がジャンプするには1908年に始まったテキサスのオイルラッシュのゴールドラッシュのような爆発的好景気が必要不可欠なのだ。それと第1次世界大戦の爆発的特需が必要なのである。

そして1930年の更なる大油田群の発見による更なるオイルラッシュが必要なのだ。



現在のアメリカはスタンダードオイル系の大企業すら業績の悪化が止まらないほどだ。

何社かは危険ではと囁かれている。

それも当然だ。

石油が枯渇するなんて誰も考えていなかった。

今までの資本投下が無駄になってしまう。

この極端なまでの原油の枯渇なのだから無理もない。なんせ精製施設の稼働率は数%だ。


そして、この世界では原油は高い値段のままだ。アメリカの貴重な予算が使われて原油を輸入する羽目になっている。


そして、アラスカからカナダ、

アメリカはかなり油田が多く石油資源に恵まれている土地だが、油田や資源が見つかるという経済にとっての好感材料は何もない。


それにしても、カナダとアメリカとメキシコは羨ましいほどに油田が豊富だ。丸々1話が油田の説明で埋まってしまうから書くのを躊躇するほど油田が多い。

大量に燃料を使っているアメリカを

ずっと支えて続けるだけの燃料があるのだから気が遠くなるほど埋蔵量が多い。

この時点で発見されているのは全体の10%くらいだろうか。


やはりテキサスのオイルラッシュが大きい。テキサスはこの当時の技術レベルでも採掘が可能で採算のあう油田が

3万3000リグ以上も見つかっている。


そして、史実では、その豊富なオイルマネーを他州の資源開発にも投資し始めるのに、それが一切無くなっている。


その上で、輸送力の低い1909年代に東海岸と五大湖に近い抜群に良い立地にあるオハイオ州の油田が枯渇した事はアメリカにとって痛恨の一撃になった。


石炭鉱山でも何故か崩落事故が相次いでいて石油と石炭の価格が暴騰した。

アメリカは大不況に突入する事になり、電力などのエネルギーも足りなくなる有り様だった。

夜間の照明の為にも灯油は必要不可欠な存在だからだ。



一方の日本は好景気であり、石炭も石油も電気もガスも有り余っているほどだった。

完全に自給自足できている。


史実だと日本での最初のドラム缶の製造は、1927年に小倉石油東京製油所と秋田県永井製油所で、アスファルト向けのドラム缶の製造が始まっている。


海外からの輸入油の容器としてのドラム缶が他の用途にも再使用されてはいたらしい。

日本では俺の製造したドラム缶やダンジョンドロップアイテムのドラム缶が

宇垣系列企業で普通に使われていたが、製缶機械による大量生産も始まっていた。

容量は200ℓ。


ダンジョンだが、ドラム缶に入った

ガソリン、灯油、軽油、重油がドロップアイテムリストに載った。


まさかと思ってダンジョンコアに

魔力か魔石でガソリンを生成する魔道具をリクエストすると魔道具も登場した。

これで魔石、もしくは魔力があれば

日本は燃料に困らない。

すぐに俺は戦艦と装甲巡洋艦に魔力型重油製造機を取り付けた。

軍艦ゴーレムの魔力回復力は高いので

回復する魔力で重油を製造すれば、

18ノットの巡航速度での航続距離が無限に伸ばせると言えるだろう。

これで海軍予算の燃料費用も更に節約できるな。

蒸気ボイラーと蒸気タービンだが、

魔力強化型の高温高圧型機関とタービンの改造が進んだ。

魔力強化時の最高出力は80,000hpになり、現在の1.5倍の最高出力だ。

インヴィンシヴルは41000馬力だからほぼ倍である。

他の国の戦艦なら搭載している石炭と重油の搭載量4000トン分を

上甲板の装甲強化に全部を使えるのは大きい。1門あたり100発以上の砲弾と装薬もアイテムボックス保管なので、他国は節約できない、その分の重量を全部装甲にまわせるのも大きい。

更に省力化も進んでいる。

ゴーレム戦艦なら人数は250人以下で

運用できる。他国と比べると3分の1の人数だ。維持費も安くなる。


あと、大規模な改善を日本は行っている。戦艦の大砲の砲身内部から小銃の銃身の内部まで、分厚くクロームメッキした方がいいものは全部をクロームメッキしている。


宇垣自転車や宇垣自動車はすぐに判別が付くと言われるようになる。

車体フレームなどがクロームメッキされている為、車体寿命が圧倒的に長いからだ。

ドラム缶すら、宇垣のドラム缶は長持ちするほどだ。


更に、他の鉄鋼メーカーの為に、硫黄分などの不要な成分を取り除いた優良鉄鉱石の販売も宇垣グループは行うようにした。

粗悪な鉄を売られては困るからだ。

まぁ、ゴーレム達は鑑定魔法で判別ができる為、粗悪な鉄を使う事は一切ないのだが。


今の宇垣グループの鋼鉄の品質レベルは1970年代の日本の鉄鋼メーカーくらいはあるだろう。史実の日本の戦艦はリベットと溶接での組み立てだが、リベットに見せかけているだけの融合組み立て方式である。

船体強度はリベットや溶接に比べて、全体的にかなり高くなっている。

すべては錬金工場のおかげだ。




余談だが、日清戦争は、1894年〜1895年なのだが、 その115年前のアメリカでの事。

1779年にジョージ・ワシントン将軍はジョン・サリバンに約5,000名の兵士を付けて、ニューヨーク植民地北部のイロコイ族集落を襲わせている。

この際、ワシントンは「インディアンの村をただ制圧するだけでなく、皆殺しにするように。」と指令している。


1779年の秋、サリバンはニュータウンの戦いでイロコイ族を打ち破り、焦土作戦を行って40以上の集落とその作物を破壊した。サリバンの遠征隊とは別に、ダニエル・ブロードヘッド大佐の指揮する部隊がペンシルベニア西部のイロコイ族集落を襲い、10個以上の集落を破壊した。

イロコイ族の大部分はカナダに逃げ込んだが、その後の冬は寒さと飢えに苦しむことになった。

この後イロコイ族の力は合衆国の中では制限され、北西部領土に対する領有主張は消えた。


イロコイ族はワシントンの軍隊によって徹底的に虐殺されている。

女性、子供、老人を徹底的に殺害し、

部族を再建できないようにする

大虐殺計画だ。

ワシントンの軍隊はイロコイ族の人間の尻の皮を剥いでブーツトップやレギンスを作った。

イロコイ連邦のセネカ族の集落はワシントンによる焦土作戦によって、30あった集落のうち28を徹底破壊された。アメリカ先住民たちはワシントンを「街の破壊者」とよんで恐怖した。


このようなアメリカ先住民ジェノサイドが行われていた。

このジョージ・ワシントン将軍こそ

後の初代大統領のジョージ・ワシントンである。

アメリカ合衆国の歴史を学ぶのなら、

前提条件として先住民ジェノサイド時代の歴史から南北戦争までの歴史も知るべきだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る