91話目疲弊するアメリカ。(1909〜1910)

就任早々のブライアン大統領も議員達も疲れ果てていました。アメリカ合衆国の財政が危機的状況にあるからです。


そりゃあ、予算を承認してしまった

議会も悪いですが、

建造開始時に200万ドル、

1年後に200万ドル、

完成の時に200万ドルの3分割払いで、ルーズベルト大統領が支払いを次の大統領に押し付けて逃げたのが響いています。

3隻の予算は支払い済みなので、残りの

サウスカロライナ級戦艦の11隻分の今年の支払い金の2200万ドルが押し寄せて来ています。

更に来年にも2200万ドルの支払いが、、、


関税収入の落ち込みも激しいです。


最近のブライアン大統領は金策ばかりが仕事になっています。


それに、大敗北はアメリカにとって大きな衝撃になりました。


その悪影響が大統領や政府の上層部の目に見える形で色々と現れてきたのです。

(海軍は独立戦争当時や南北戦争時代に大きな損害を出していたりしますが、たった数時間で2万人超えの死者を出す大敗北を経験したのは、これが初めてですからね。

やはり、19隻の戦艦と、戦艦と同等の大きさの装甲巡洋艦10隻の人員が亡くなったのはアメリカにとって大きな衝撃でした。

それも、新聞とかで戦争が起きるとわかって、精神的に覚悟してからの戦死ではありませんからねえ。

ルーズベルトの騙し討ち戦争での名誉の無い戦死ですからね。

しかも、相手は格下の有色人種国家の日本ですから。

行き場のない怒りがルーズベルト大統領に向かっています。)

ルーズベルト大統領は鉄道を支配していたモルガンを反トラストで規制し、独禁法の制定や企業規制を増やしてるんですけどね。


貧しいが高等教育を受けたい青年にとってアナポリスでの士官候補生教育は

良い選択肢だと思われていました。

あのメイン号の沈没でさえアメリカに

取っては大きな衝撃だったのです。

それが、今度は大西洋艦隊の全滅ですからね、、、

平和な時代だと軍人は職業選択の1つですからね。

家族や親戚や友人は戦死するかもしれない覚悟なんてしていませんよ。


アナポリスはリスクばかりが叫ばれるようになり、入学者が激減しています。


(日本でも主に佐幕系の藩だった県では薩長がいいようにしている陸海軍で

薩摩&長州の連中の下について兵士をやるのは嫌だという徴兵されるのが嫌だという意識がありました。日清でも日露でも、、、あの東条英機総理の父親でさえも東北の生まれでなければ大将になれたのにと思っていたくらいですからね、、、)


もちろん今のアメリカでも、南部で殺戮と略奪をした北部の連中の為に税金を盗まれるのも、徴兵されるのも嫌だという意識が表に出て来ています。


故郷を荒らされた怒りは隠れていても

何かがあれば出て来たりするものです。


愛する我が家が燃やされた怒りは消えはしません。


水兵の入隊者も志願者が少ないです。

失業率が高い今のアメリカでこれほど人が集まらないのは異常事態と言っていいでしょう。


特に南部の新聞には、『東部の造船屋どもの犠牲になるのは御免だ』なんて声が溢れています。


多くの新聞が書いているせいか、『ルーズベルトは東部の造船屋共の操り人形』というイメージが定着しつつあります。


『我々の税金は東部の連中に浪費されて、子どもが死にそうでも助けてはもらえない。』との声も大きくなる一方です。


『金を儲けている東部の連中が血を流せ』とも書かれるようになりつつあります。

東部の資本家の連中を批判したブライアン大統領の選挙戦でのスピーチも新聞には繰り返し掲載されています。


アメリカは南北戦争していた時代がありますが、この東部とは、ほぼアメリカの25%ほどの面積の五大湖周辺地域やニューヨークやワシントンD.C.やフィラデルフィアの大都会の北東部の事ですね。

かなり憎まれています。

こんな風に世界から孤立しなければ

農民だって苦労する事はないのにと

思われるようになってきつつあるのです。


まず、この時代のアメリカについて

ですが、アメリカのGDPは決して高くありませんでした。

あまり知られてはいませんが不況だった時代も長く、国家予算は決して潤沢ではありません。


人口の伸び率が11%以上だからこそ

経済成長しているかのように見えていただけの時代も長かったのです。


特に大不況 (1873年〜1896年)特に1893年恐慌後は特に酷いと言えます。

多くの銀行が倒産したりもしてるし。

失業率も低くはありません。


アメリカ海軍ですが、米西戦争時代の海軍の規模を見ると戦力はそれほど多くありません。イギリスに比べたら、

戦艦の排水量とかも劣っていました。


高い関税で得たお金を全部海軍の戦艦の建造予算に注ぎ込んだと言えなくもないほど、ルーズベルト体制の時代に大量に戦艦が建造されています。


今では、わずか数年間に11隻ものコネチカット級、バージニア級らの戦艦が建造された事も怪しいと思われています。

あれはルーズベルトの戦争準備だったと思われています。

それらを建造する為の8000万ドル以上のお金があれば倒産した銀行を救えたり、苦しんでいる農民の暮らしが救えたのでは?と思われています。

新聞では、8年前にブライアン大統領を

選んでいたらと嘆かれる事も。

いや、4年前でも、ルーズベルトの浪費をかなり防げたでしょう。



(日本は社会を安定させる為に銀行が破綻したとしても1000円までの預金は保証される仕組みを導入しています。

これで銀行が破綻しても庶民は大丈夫です。)


1890年のマッキンリー法により関税を大幅に上げたアメリカはこれにより多額の税収は得たものの失ったものも多かった。

(保護貿易主義は多少は他の国もしていた。が、アメリカは圧倒的に多い。)

だが、マッキンリーが大統領になって、再選もして、欧州には失望が広がり、更にアメリカから物が買われなくなってしまいます。

そこに止めのようにあの対日戦争と敗北でした。


アメリカが欧州から締め出された、原因の1つが欧州に輸出されるアメリカの穀物などによる金のアメリカへの流出を防ぐためでした。

アメリカを締め出して欧州の貿易を盛んにする事で欧州は不況に対応しようとしたんですね。

ある意味、保護貿易。


豊富に取れすぎる為価値が暴落した銀

のせいで銀行が倒産したりするのも不況の原因でした。


だが宇垣商事は銀を買い漁りました。

錬金術とは本来、金を生み出す技術

ですが、主人公は銀を収納して金に変えて生み出す事ができます。

同じ重さの金の延べ棒にできるのなら、価値はかなり高くなります。

銀の算出量が大幅に増加しての銀の価値の下落は欧州にとって深刻な問題でしたが、宇垣商事にとっては大儲けのチャンスでした。

この日本の銀買い金売りの動きで

ドイツやイギリスはかなり救われています。


さて、元々豊富に石炭は取れていたが

石油までそこそこ取れるようになった

日本国。国内需要くらいは充分に賄う事ができています。

(と、表向きに言っていますが、石油の推定埋蔵量は樺太のオハ油田+

満州の大慶油田+カリフォルニア油田+

テキサス油田(オクラホマ油田)+オハイオ油田なので日本国内向けなら数百年どころか1000年先まで大丈夫でしょう。)

それに、中東周辺の原油も70%〜80%は日本が手に入れようと思っています。

中東はそれぞれの国が中規模油田を持つくらいの産油国になればいい。

日本がごっそりと奪っても、それくらいは滲み出てくるでしょう。


その上、日本は食料も余るくらいなのだから、史実とは大違いです。


その好景気な日本と比べ、アメリカは

まさに悲惨です。

3隻分のサウスカロライナ級の予算こそ

あったものの、残りの11隻の予算がどうにもならない状態なのです。

カリフォルニア、テキサス周辺、オハイオ。

多くの油田での石油の算出量が激減してしまった為石油生成施設の稼働率は数%になってしまいました。

多くの油田の跡から滲み出てくる原油頼みの有り様です。

どこを掘っても滲み出てくるぐらいで

まったく原油が出てきません。

豊富に石油が取れる産油国から石油の輸入国になってしまったショックは大きいです。


石油生成施設は石炭の液体化生成施設に再利用できないかと言われる始末です。

その石炭の取れる量も減りつつあります。(特にデトロイト周辺)

アメリカは広大だが、であるが故に

資源の輸入国になるとなるとロスが多いです。ガソリンなどの価格も極めて高い価格になってしまっています。


大統領に届けられるレポートの数字はどれも悲惨な数字ばかりになっています。

税収は大幅に減少しつつあった。

そう、アメリカはオイルの枯渇ショックになっていました。


アメリカの繁栄は豊富に取れた石油や石炭、各種資源があってこそ。


水力発電所を建設しようと慌てて計画しているのだが、その予算にすら事欠く有り様です。

鉄だって豊富に作るにはエネルギーが必要です。


史実の日本が八八艦隊を建造したら、

国家破産して悲惨な事になるとも言われてましたが、まさに今のアメリカの国家予算が破産寸前です。


ブライアン大統領はなりふり構わずに

旧式艦艇を売りに出して少しでもお金を手に入れようとし始めました。

以前に防護巡洋艦のシンシナティが売られたと書きましたが、旧式防護巡洋艦は全部がスクラップ価格で売りに出されて売られていきました。


旧式装甲艦もすべてが解体される事に。


排水量が1万トン未満の巡洋艦はことごとく売りに出されてしまうのだった。

(だが、小型艦艇の世界需要が満たされてしまい、アメリカの造船会社には

更なる逆風になってしまう。)

更にサウスカロライナ達が完成したら

旧式戦艦の3隻も売ろうと売却先が探され始めました。アイオワとメイン級の2隻ですね。何処の国からも買って貰えずにスクラップ価格で日本に売る羽目になってしまいます。

しかも輸送費はアメリカ持ちで横須賀での引き渡しという、、、

3隻を売ってもスクラップ価格ではサウスカロライナ1隻の建造費にもなりませんが、それほどアメリカの予算不足は深刻なのです。


そして、アメリカのとうもろこしなどの穀物も激安価格になっており、宇垣商事が捨て値のとうもろこしや小麦を大量に買い漁りました。


日本は凶作にはなりませんが、

アイテムボックス内ならいつまでも備蓄しておけます。日本国民の為にも備蓄は潤沢な方がいいですよね。


それに、欧州は寒冷地であり、歴史的にも定期的に凶作になって食料の値段が上がります。


宇垣商事は凶作の欧州で逸早く食料を売って差額で大儲けするのでした。


そして、アメリカは欧州が食糧不足の時でも穀物の買い注文がやって来なくなり益々穀物価格が安くなってしまいます。

これではアメリカの農家は日本の小作人ですね。(笑)

しかも、『買ってくれて、ありがとう』と感謝されるおまけ付きです。


大勢のアメリカ農民が日本に感謝してくれるようになるのです。


これらはアメリカ農民と宇垣商事との間の闇取引であり、関税は無視して運びだしています。


安い値段で買えたアメリカの農作物は

日本の大きな武器になります。

飢餓になりそうなインドにも宇垣グループは進出してインドの各州の好感度を上げていくのでした。

そして、インドではインド国民意識が

育っていきます。


アメリカの悲惨な現状の要因は、欧州各国の投資マネーが一斉にアメリカから逃げ出したからでもあります。


国家予算が破産寸前で石油が枯渇した

のではアメリカから逃げて当然ですよ。


パナマ運河建設とアメリカ大西洋艦隊の再建はいくらアメリカでも大変というわけですね。

パナマ運河建設国債からも欧州マネーが逃げました。

この時代だとブルドーザーなどの建設重機の力もろくに借りられませんからね。

なんせ、1917年に米国Russell(ラッセル)社(除雪用車両の一種であるラッセル車の開発元(開発者であり創業者でもあるJ.H. Russellの名に由来)のカタログに、2頭引き馬車の前面にブレード(排土板)を装着したものが「Bull Dozer」という名称で掲載されていた

くらいですもん。


そして、1923年にアメリカ合衆国のカミングスとマクロードによって、ホイール(車輪)型トラクターにブレード(排土板)を装着したものが世に登場し、同年にはLaPlant-Choate社からクローラー(履帯)型トラクターにブレード(排土板)を装着したものが登場してます。

ここら辺がブルドーザーの誕生と言っていいでしょう。

パナマ運河の工事が人力で行われているなんて信じられませんよ。


ブルドーザーの国際特許をとっちゃおうかな?と思ってしまいます。

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