78話目ドイツ人記者来日

ドイツ人記者ディートリヒ・ハラー氏が来日し日清戦争での「定遠」「鎮遠」の戦いの様子を取材したいと申し出て来たと聞き、俺は詳しい話を話す事にした。


場所は帝国ホテルのスイートルーム。

ハラー氏は中々の男前で宇垣財閥の当主がインタビューに答えるとあって緊張した様子だった。

ここでは社交辞令とかはカットして

彼との会話を載せようと思う。

(第2話でさらっと全滅させたと書いていますが詳しく説明します。)


北洋水師といえば「定遠」級以下、装甲艦2隻、巡洋艦8隻、砲艦12隻を持っており、日本側は128mm砲4門搭載の装甲巡洋艦が8隻。と後方から防護巡洋艦が3隻。圧倒的に北洋水師が有利に見えます。

彼が疑問に思うのも当然でしょう。


『北洋水師というのは清国が首都の北京や天津を守る為に李鴻章が整備した

北方守備艦隊です。

あの時は「定遠」級装甲艦2隻、巡洋艦8隻、砲艦12隻が出撃していました。

戦力的には清国海軍の主力艦隊であり、他の艦隊にはそれほど多くの艦艇は配備されていません。』


俺は渤海周辺の地図を見せながら、

彼に言った。

「定遠」の写真、巡洋艦 揚威、超勇、済遠、致遠らの写真も見せて、日本側の装甲巡洋艦の写真も見せる。


『あの時の我々は北洋水師の艦隊と遭遇できなかったら、威海衛、旅順、大連に対して最大射程で砲弾を撃ち込もうと思っていました。

だから清国艦隊を見つけた時は好機だと思いました。』


『清国艦隊は横陣の体形で巡洋艦4隻が横一列に並び、中央には「定遠」「鎮遠」が。そして巡洋艦4隻が横一列に

並んでいました。我々はその前方を縦列で移動しながら横切りました。』


(ここまでは史実とよく似ていますね。が、主人公は砲戦距離を隠しています。8000mの距離はゴーレム艦にとっては有効射程ですが訓練不足の清国側にとっては命中が期待できない遠距離です。しかもゴーレム艦達は念話でデータリンクしながら修正して砲撃しているので砲撃の調整能力が段違いに高いのです。1番艦の着弾を見て他の艦は即座に修正していきます。

しかも効率が段違いです。

1番艦は他の艦に対処を任せて敵の2番目の艦に攻撃を向けます。

ある程度のコツがわかったら命中弾が

凄く増えて行きます。

敵の端の巡洋艦は大火災を起こしています。)

(日本側は5秒に1発を発射する事が可能です。夾叉してからはガンガン射てる

のがいいですよね。)


『我々は端の巡洋艦に砲撃を集中しました。8隻の装甲巡洋艦が砲撃を集中したせいか命中弾を浴びせる事ができたのですが防護巡洋艦だからなのか、敵艦は砲撃もしなくなり燃え始めました。2隻目、3隻目の巡洋艦も燃えて速度を落とすと中央の「定遠」「鎮遠」のどちらかが旋回し始めて後方を向きました。』


『我々は4隻目の巡洋艦に砲撃を集中し、「定遠」「鎮遠」に砲撃を集中しました。

「定遠」「鎮遠」の中央部から後部にかけて砲撃が命中して火災が広がるのが見えました。

日本側の4隻は残りの逃げた巡洋艦に砲撃を集中させつつ追いかけ、5番艦から8番艦は「定遠」「鎮遠」を追撃しながら砲撃を浴びせました。

巡洋艦を沈めると、後は小型艦を追撃するだけです。

その頃には「定遠」「鎮遠」も大火災によって弾薬庫が爆発したのか沈んでいました。』


『「定遠」「鎮遠」は前方に主砲が並んでいる装甲艦(戦艦)です。

逃げ続ける敵艦を後方から攻撃すると

反撃もされず、我々は無傷で撃沈に成功しました。』


『火災のせいで主砲が撃てなくなったのかもしれませんね。』


「なるほど、、、そうだったのですか。」


『北洋水師では艦隊保全命令が出ていたとも聞いています。

横陣体形は進路の変更がやり難いんですよ。日本側の後方にまわりこむのは

難しかったのかもしれませんね。』


俺は握手をして説明を終えた。


清国側の敗因の1つに上層部の無理解があるだろう。


まぁ、前近代国家の清国の場合、将軍の部下は将軍の私兵だったりする。

李鴻章の私兵を何故これ以上に増やさなければいけないのだ!

とか、上は思ったのかもしれない。

まぁ、軍艦の建造は多額の金が動くものである。

当然、李鴻章達は裏金を受け取って

部下に配るし、当然のように上にも配る。

これ以上、船を建造させて奴を太らせてはいけないとお金を搾られたのかも

しれません。

あの国は同じような事を繰り返しています。


(この戦いではゴーレム艦の強味が

存分に発揮されています。

日本側は清国側に後方にまわりこまれないように速度をヒレで調整して、

陣形を乱さずに最適な速度にしています。)


(北洋水師はお金が無い為、防護巡洋艦の建造にすら困っています。

だから、これ以上の巡洋艦の損失は避けるべきとか思ったのかもしれません。し、「定遠」「鎮遠」だけは助けなければと思ったのかもしれません。)



(史実の戦闘でも清国艦隊側の不可解な行動があります。日本側の弱い艦を狙って攻撃をしてきたり、不利だと思うと逃げ出したり。日本の大型艦をもっと攻撃しないのは何故なのか不可解です。)


(あと、清国艦隊は可燃物を下ろさずに戦闘しています。大火災になった船は

全部が沈んでいますよ。)


史実の清国軍

陸軍

勇軍・練軍350,000人

募集兵630,000人

計980,000人

海軍

北洋艦隊

軍艦22隻

水雷艇12隻

広東艦隊

軍艦3隻

海軍合計

軍艦25隻

水雷艇12隻


史実の日本軍

陸軍

兵力240,000人

海軍

軍艦28隻

水雷艇24隻


(陸戦を避けたのは清国側の兵士が多いからですね。台湾は攻めてますが。)


その後、ハラー記者は清国の事を調べ、腐敗の酷さを知り絶句する。


『「定遠」「鎮遠」が力を発揮できなかったのは清国人のせいだ!』

とハラー記者は清国人を糾弾する。

『日本は清潔で繁栄していて料理も水も美味しかった。清国や朝鮮の不潔さ

には驚いた。』

とハラー記者はドイツで語りました。


そしてハラー記者は日本、清国、朝鮮を旅行した旅行記を出版する。


そういえば、イザベラ・バードさんは1894年にカナダ経由で清国、日本、朝鮮を旅し、1897年までに、4度にわたり末期の李氏朝鮮を訪れ、1898年に旅行記"Korea and Her Neighbours"(『朝鮮紀行』)を、翌1899年に『中国奥地紀行』を出版していますが、全ヨーロッパで旅行記が出版されます。

ハラー記者の旅行記も欧州でベストセラーになるのでした。

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