65話目その頃のアメリカでは。

その頃、アメリカでは大統領選挙が開始されていた。


卑怯な騙し討ちを日本にした挙句、

敗北して領土を失い賠償金を支払った

敗北者のセオドア・ルーズベルトは

すでに死に体であり、支持率は史上最低で批判され続けている。

前の大統領が暗殺され、副大統領から、史上最年少でアメリカ合衆国の大統領に昇格した時の輝きは失われていた。


今では、史上最低な大統領ランキングで最下位争いをするほど不人気な大統領である。

戦争に負けたのだから当然だが。


そしてウィリアム・マッキンリー大統領が暗殺された事を惜しむ人が更に増えるのだった。(いや、高関税のマッキンリー法を作って欧米諸国との関係を悪化させた張本人なんだが、、、)


さて、1900年に共和党のウィリアム・マッキンリー大統領にフィリピン民政長官に任命され、(史実では1904年にセオドア・ルーズベルト大統領に陸軍長官に任命され、後継者にも指名されたほどの)

ウィリアム・タフト氏だが、ここでは共和党から支持されて、大統領候補になっている。


彼はルーズベルト大統領と親しかった事は認めつつ、フィリピンでの反乱鎮圧の苦難を語り、ずっと長く苦労し続けた事、疲れ果ててアメリカ大西洋艦隊が日本に来訪すると聞いて、フィリピンの知事を辞職して日本を訪れて、あの時のアメリカ大西洋艦隊の行動の一部始終を目撃した事を客観的に話し続けてアメリカ国民を惹きつけていった。

彼は、『その時、何が起きたのかわからなかったが、攻撃したのはアメリカ艦隊であり日本艦隊は撃たれ続けていた。』『かなり時間が経ってから日本艦隊は反撃を開始した。

日本が反撃を始めるとアメリカ艦隊が

浸水して港に着底していくのが見えた。』

『それを見て、私はセオドア・ルーズベルト大統領との決別を決断した。』

『私は偉大なアメリカを取り戻す為に

全力を尽くします。』

『アメリカ大西洋艦隊を必ず再建して、何倍も強くします。』

『アメリカ国民の皆さん、私に機会を与えてください。』と訴え続けた。


ウィリアム・タフトは最初は大勢の共和党の大統領候補者の1人に過ぎなかったが、徐々に支持率を上げていき、

共和党の大統領候補に選ばれた。

(不人気なルーズベルト大統領の支持を受けたら落選するので反ルーズベルトを言い続けざるを得なかった。)


だが、彼は27代目のアメリカ合衆国大統領にはなれなかった。


民主党の大統領候補はウィリアム・ジェニングス・ブライアン。

史上最年少で大統領候補になり、36

歳で選挙人も獲得している。

彼は史実では3度も民主党から大統領候補になって一度も当選できなかった

大統領候補になってしまうのだが、

見事に第27代アメリカ合衆国大統領に

当選した。

1896年には27の州を巡って500万人もの人々に改革を訴えかけた行動が実ったとも言えますね。

ずっと東部の資本家を批判してきた人ですから。


ウィリアム・タフトが強敵だったので押されての逃げ切りゴールになってしまいましたがね。


だが、ブライアン大統領にも苦難が

重くのしかかってくる。


それは失われた1億ドルの予算であり、

忌々しいルーズベルトの遺産のサウスカロライナ級戦艦達の建造費用です。


大国アメリカといえども19隻の戦艦と10隻の装甲巡洋艦を全部失った痛手はとてつもなく大きかった。

どうやって回復すればいいのかわからないほどだった。

更に、無防備な今の状態が怖いから

早く大西洋艦隊を再建してほしいと

全米中から懇願されるのだが、大西洋艦隊の再建費用はあまりにも巨額になってしまっていた、、、サウスカロライナ級戦艦は1隻600万ドルなので、

装甲巡洋艦や防護巡洋艦20隻も含めると1億7000万ドルを軽く超える。建造途中の旧式戦艦とかの建造費用もあるからだけど。


東海岸の諸州からは大西洋艦隊の再建を、西海岸の州やハワイからもアメリカ太平洋艦隊の設立を望まれる始末だった。

しかも、日本に負けたグレートホワイトフリート以上の規模を望まれてしまう、、、お金が無いのに、あのグレートホワイトフリート以上の規模の艦隊を作れと言われる状態に、ブライアン大統領は苦悩した。

海軍が大好きなセオドア・ルーズベルトなら大喜びしただろうが。


ブライアン大統領は東部の裕福な人間を攻撃した左翼的な人間である。

しかも、米西戦争の後、ブライアンはアメリカ帝国主義の猛烈な反対者となり、1900年の時の大統領選挙での彼の選挙運動の多くはこの問題を中心に行われたくらいである。

彼としてはもっと民衆の為になる政策、例えば医療費用の補助制度とか。をしたいのに、予算的には前の大西洋艦隊の建造費用より高額になるかもしれない艦隊再建計画を求められてしまうのである。


ブライアン大統領としてはマッキンリー法などのマッキンリー大統領の高関税を少しは下げて欧州諸国との関係改善したいと願っていた。

だが、皮肉な事にルーズベルト大統領時代にサインされた『大西洋艦隊再建計画』を行うには予算が必要で、高関税は予算の大黒柱になっていた。

無理をして高率な関税を取って、やっと作った戦艦達が失われたのだ。

関税を下げると国庫が破産するかもしれない。

アメリカの予算の余裕があまりにも少ないのにブライアン大統領は驚愕した。


もう一度言うが、『『ブライアン大統領はアメリカ帝国主義の猛烈な反対者』』なのだ。彼の人脈もアメリカ帝国主義の猛烈な反対者が多い、、、

まったく歴史は皮肉である。

そして現在建造途中の新型戦艦達や旧式戦艦達はルーズベルトの遺産なのだ、、、すでにサインされ建造され始めている、、、装甲巡洋艦なども排水量は上がり、武装とかの割に建造費用は高くなるばかりの金食い虫だし。


財務に詳しいアメリカの両院の議員たちの顔は真っ青になっている。

国民はそう言っているが、このままではアメリカの国家財政は危機になるかもしれないのだ。

大西洋艦隊は戦艦6隻と10隻の装甲巡洋艦。

太平洋艦隊は戦艦4隻に4隻の装甲巡洋艦くらいで守りを堅めようと発言する議員が増えつつあります。



史実のセオドア・ルーズベルト大統領

のお母さんのマーサさんは美貌で『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラのモデルと言われたとか、、、

史実のセオドアは初めてノーベル平和賞を受賞したアメリカ人になりましたし、

史上最年少のアメリカ大統領ですし、

喘息である事を除けば物語の主人公の

ような人物ですよねえ。


光が強ければ隠れるかもしれない失敗も成功の光が弱まったせいで大きな失敗と見られる事になりました。

(日本の美濃とイギリスのドレッドノートのせいで旧式になってしまった戦艦を大量に建造してしまった失敗や

敗戦の事やアメリカの外交的孤立の事)でも、予算が無いにも関わらず、

『大西洋艦隊は再建させなければいけない』と繰り返し言い続け、任期の最後までに多くのサウスカロライナ級戦艦の建造契約にサインして、多くの造船会社に恩を売って子孫が政治家を目指した時の為の布石を打っていたのは

見事と言っていいでしょう。

造船会社を味方にしたら子孫は州知事くらいは目指せるでしょうから。

だが、さすがに大統領を目指すのは

難しいでしょうが。


大勢のアメリカ大統領や大統領候補の

経歴を見ていくと大学を卒業して、すぐに州知事や議員を目指して当選するエリートコースと、地方議員を何期もやって、やっと州知事になれて、地方で存在感を出して、やっと大統領候補になる事ができた一般議員コースの人間が居る事に気がつかされます。

この大統領はエリートコースの大統領なのか、一般議員コースの大統領なのか注目して見るのもいいでしょうね。


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