第49話『セオドア・ルーズベルト』
セオドア・ルーズベルト大統領は
支持率の低下に苦しめられていた。
豊かな家に生まれて、喘息だった事を除けば、ハーバード大学卒業まであっという間だった。
ハーバード大学卒業から1年後の1881年、彼は最年少議員としてニューヨーク州下院に選任される。
1882年(大学卒業して2年後)には歴史書を出版している。
歴史家としての名声を持てた。
1884年に、美人で有名な母と出産直後の妻を同じ日に失う悲劇に見舞われ、家を出奔する。
数年後、ニューヨークに戻って市警察の腐敗と戦うことで名声を得る。
ルーズベルトが海軍次官として事実上海軍省を運営していた間に米西戦争が勃発する。
彼は直ちに職を辞し、陸軍士官としてキューバで小さな連隊を率いて奮戦する。
戦後に彼はニューヨークに戻り
知事選に出馬、僅差で当選する。
それから2年の内に、彼は副大統領に選出された。(彼にとってはニューヨーク州知事職も通過点にしか過ぎないようですね。)
1901年、ウィリアム・マッキンリー大統領が暗殺され、42歳(米国史上最年少)で大統領に就任した。
ルーズベルトは当時、鉄道を支配していたモルガンを反トラストで規制し、独禁法の制定や企業規制を増やした。
彼は国内の課題を説明するため「スクエア・ディール Square Deal」という句を作り出した。そして、一般市民がその政策の下で正当な分け前を得ることができると強調した。
支持率は高く再選もできた。
だが大統領選挙の後半は苦戦の連続で
ギリギリの勝利という苦い結果になってしまった。
フィリピンでの米軍の戦死者は増えるばかり。
フィリピン独立派に大打撃を与え
戦力は削いだはずなのに戦死者は一向に減らない。
他国の新聞に『アメリカはフィリピンで30万人以上を虐殺した』
と書かれているのも不味い、、、
スペインとの米西戦争の発端になった
メイン号の事故も開戦する為の謀略で
キューバやフィリピンを得る為にした
と言われる始末だ。
『ルーズベルトは何故、海軍次官を辞任してキューバに行ったのか?』
と質問される事も多くなった。
そして、『アメリカはヨーロッパの国々の植民地を奪おうと次の獲物を狙っている。』と多くの国の新聞に書かれて、ベルギーやオランダの植民地を
狙っていると書き立てられている。
まさか自分の支持率とアメリカの外交的な立場が、ここまで悪くなるとは
悪夢そのものである。
どこかの国の謀略ではと疑いたくなる
ほどだ。
欧州では『アメリカ』に対抗する為に
フランス、ベルギー、オランダが英国との関係を深めようとしている。
ドイツに対しても、『植民地がアメリカに奪われてもいいのか!』と呼びかけて『アメリカの侵略から欧州を守ろう。』などと言っているという。
欧州では『欧州企業は欧州内の企業と
優先してビジネスをしよう。』という
アメリカ企業外しがなされるようになった。
これはアメリカにとって極めて大きな
ダメージをもたらした。
『アメリカ以外の国で買えるのならアメリカ製品を買うのをやめよう。』
と言われ綿花などが売れなくなるのも痛い。輸出に大打撃になっている。
しかも、その動きは加速するばかりだ。
ここまでアメリカが叩かれているのも当然な理由がある。
ウィリアム・マッキンリー大統領だが、高関税好きで1890年当時に歳入委員会の委員長としてマッキンリー法を制定して関税を史上最も高い税率に上げているし、大統領になってからは、
更に彼は保護貿易主義を取り、外国製品に対して実に57%という史上最高の関税率をかける「ディングレー関税法」を制定させている。
凸凹はあるにせよ、他国は平均して11%ほどの関税しかかけていない。
日本に至っては5%の関税を強いられている。
欧州が怒るにはそれなりの素地が
あるのだ。
(米西戦争は極めて怪しい戦争だった。当時の大統領は戦争を
望んでいない様子だったし。
アメリカ側に戦争を望む人間が居たのは確かだろう。相手のスペインは弱いので負ける心配は無いから余計に戦争を望む人間は多くなる。)
(そしてゴーレム達が精神操作もした
とはいえ、欧州の新聞の記者達も本気でアメリカは危険だと思っているし、
弱い国の新聞記者達は次は自国が植民地を奪われるかもしれないと本気で心配している。
アメリカの力を弱める為にもアメリカバッシングとアメリカ企業バッシングは継続してキャンペーンをしようと思っている。
新聞の部数も伸びるし一石二鳥と
思っている。)
全ヨーロッパでアメリカの悪いイメージが定着するようにゴーレム達は奮戦していた。
すでに世界中の多くの国の新聞記者がアメリカは危険な国だと思い込んでおり、反アメリカの姿勢を普通に行うようになりつつあった。
まるで冷戦時代のソ連よりも悪い国で
あるかのように、、、
セオドア・ルーズベルト大統領はどうすれば良いのか頭を抱えるのであった。
この事態はイギリスにとって素晴らしい追い風になっていた。
建艦競争を行っていたドイツとの
関係改善の動きすらある。
ドイツも植民地は世界中にあるのだ。
無理もない。
中にはアメリカ領と危険なくらい近くにある場所もある。
グアムのすぐ近くのサイパンやテニアンなどである。
ドイツとしてはあんな遠くの島に戦力を派遣したりしたくはなかったし、
大金をかけて要塞を作ろうなんて思ってもいなかった。
だが『サイパンを守れ!』とドイツの新聞がキャンペーンを行うとドイツ世論はサイパンに注目する事となった。
アメリカ領のグアムはすぐ近くであり、そう思うとホットスポット
(アメリカが襲って来そうな土地)にも見えてくる、、、
ドイツはサイパンとパラオに一個連隊、テニアンにもそれに近い戦力を派遣するのだった。
これらの連隊は工兵が多く小規模要塞を建設するための連隊だった。
護衛として巡洋艦や補給船も派遣して
いる。
ドイツの軍人の間ではアメリカの方が
危険なのでは?と囁かれる事が増えるのだった。
もし、カナダが侵略されたら、、、
と本気で心配し始めるイギリス国民が
増えるのだった。
ルーズベルト大統領の頭の中に
アメリカ大西洋艦隊を世界一周させるアイデアが天啓の様に閃いた!!
これは行ける!!
大統領は海軍に指示を出した。
名家に生まれると、こうも出世が早いんですね。
大学を卒業後1年で議員、、、
若くして海軍次官ですかぁ、、、
州知事も通過点、、、
大統領の経歴を見ると色々と見えてくるものがありますねえ。
特急出世型と鈍行出世型に分かれていますよね。
そして、民主党側の大統領候補としてマッキンリーやルーズベルトと戦ったのが苦労して這い上がってきたブライアン候補というのがなんとも皮肉な、、、
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